「真のグローバル人材に育てる富裕層の選択」としてボーディングスクールが注目を集めています。ボーディングスクールとは、主に海外にある全寮制の寄宿学校のことです。海外の名門スクールに通うほか、国内で新設されるボーディングスクールを選択する方法もあります。今回はボーディングスクールをテーマに、利用するメリットや費用などについて解説します。
ハリー・ポッターの影響でボーディングスクールの印象が変わった
ボーディングスクールにはスポーツや芸術に力を入れている学校もあれば大学進学を目的とした進学校のような学校もあります。世界にある名門ボーディングスクールの例としては、以下のような学校が上げられます。
・過去に多数の首相を輩出している「イートン校」(イギリス)
・日本の新島襄やブッシュ米国大統領が卒業した「フィリップス・アカデミー」(アメリカ)
・英国王室キャサリン妃の母校である「マルボロカレッジマレーシア」(マレーシア)
世界的に“名門”と呼ばれるスクールの入学対象年齢は概ね13~18歳ですが、なかには8歳、10歳といった年齢から入学できるスクールもあります。
2014年7月に行われた日経DUAL誌の取材記事によればイギリスが起源とされるボーディングスクールについては、『ハリー・ポッター』の映画や小説の影響で子どもたちのスクールに対する考えが変わったという声もあります。それまで全寮制の学校に入ることを悩んでいた子どもたちが、ハリー・ポッターの世界に憧れて自ら「ここに行きたい」と希望することも現在では少なくないようです。
ボーディングスクールにわが子を入学させる5大メリット
ボーディングスクールに入学することで得られるメリットには様々なものが考えられますが、一般的に以下の5項目に集約されます。
メリット1:リーダーになるための素養が身につく
ボーディングスクールには世界各国から優秀な生徒が集まります。多種多様な国の人と生活することで異文化への理解を自然に深めることが可能です。また集団生活の中で各生徒たちが自分の役割を考えて行動することで、グループをまとめる力、問題を解決する力、コミュニケーション能力などを向上させやすいと言われます。
メリット2:英語とプレゼンテーション力が身につく
ボーディングスクールでの基本的な会話は英語です。日本にはない環境のもとで実践的な英語力を身につけることができます。英語に慣れ、直に英語で意思疎通を行うことで海外でのプレゼンテーション方法が身につきます。これにより日本人が苦手な「相手に自分の意思を伝える」プレゼンテーションの能力を向上させられるのが大きなメリットです。
メリット3:将来の人脈が得られる
ボーディングスクールには富裕層の中でも上位にランクする層、あるいは皇室や政治家の子どもが一堂に集まります。全寮制の学校で生活を共にしながら学ぶことで、将来の人脈というかけがえのない財産を手に入れることも期待できるでしょう。
メリット4:効率的な時間感覚が身につく
寮生活を通じて規則正しい生活をおくることで、リーダーにとって必要なタイムマネジメントを習得できるのもメリットです。24時間の共同生活で様々な国籍や文化、考え方や慣習をもつ他者との関わりを学ぶうちに、パブリックとプライベートの使い分けや配分を身につけ、上手に時間を使う能力を高めていきやすい環境といえます。
メリット5:家族への情愛が育まれやすい
精神的な面では、全寮制の学校に入ったことで家族を大切にする心が育まれやすいといわれます。異国の地で暮らすことで家族のありがたさがわかるという一面もあるでしょう。
なお治安に関しては、ボーディングスクールは高級住宅街などに立地している学校が多いのでセキュリティレベルはかなり高いといわれています。
ボーディングスクールの費用は500万~1,000万円が相場 その詳細は
ボーディングスクールのネックは、高額な費用がかかることでしょう。国にもよりますが、おおむね年間500万~1,000万円が相場です。一例としては、ボーディングスクール発祥の国イギリスに特化したエージェント「イギリス留学センター」によれば、2018年現在の学費は以下のようになります。(2018年8月末時点の終値1ポンド143.89円で換算)
・小学部(12歳まで)
年間2万5,500ポンド~(約367万円~)
・中学部(15~16歳まで)
年間3万6,000ポンド~(約518万円~)
・高等部/Sixth Form
年間4万2,000ポンド~(約604万円~)
※金額は目安であり、実際の学費などは学校によって異なります。
このほかに制服代や各種レッスン代、小旅行費用、寮での雑費がかかります。さらに全員ではありませんが航空券代(長期休暇で日本に帰国する人)、ガーディアン(後見人)に払う費用も必要です。その他費用を含めると全体では1年間留学させるのに4万5,000ポンド(約647万円)の負担になると同センターでは解説しています。日本における中間所得世帯の年収約700万円に近い金額を毎年用意しなければならないことを考えると、欧米でのボーディングスクール入学は富裕層でないと難しいのが現実です。
一方でシンガポールのボーディングスクールは割安という意見もあります。シンガポール事情に詳しいFPの花輪陽子氏によるとシンガポールにあるアングロチャイニーズスクールインターナショナルは、中学1年生からの受け入れで学費が年300万円(寮費込)程度と欧米に比べれば割安といえる水準といわれています。
いずれにせよ、どのボーディングスクールを選択するにしても、入学時には英語力が求められますのでお金を用意すれば誰でも入学できるわけではありません。また次世代のリーダーになる人材を育てるのが目的ですので、ある程度の素養が備わっていないと入学するのは難しいのが実情です。そのためボーディングスクール入学を目指すのであれば幼少期から英語を話す・読む・書く習慣を身につけておく必要があります。
日本版ボーディングスクール開校の動き イギリスの名門校も進出
ボーディングスクールが注目される中、日本国内の事情も変わりつつあります。ボーディングスクールに近い存在としては、軽井沢のユナイテッド・ワールド・カレッジがありましたが新たに開校する動きが見られます。
すでにカリキュラムの一部として開校している石川県金沢市の国際高等専門学校は9年間の一貫教育校です。1年次と2年次に同県白山市にある白山麓キャンパスで、ほとんどの科目を英語で学ぶ欧米型のボーディングスクールを行っています。学生、教員、スタッフと地元の住民が交流する「英語によるラーニングコミュニティ」があるのが特長です。
一方、これからの開校予定を見ると2020年には神石インタナショナルスクールがオープンする予定です。こちらは小学生を対象にしたスクールで、1クラスあたりの生徒が8~16人と一般的な都会の小学校よりも少ないことから個性を大事にした教育が期待できます。
今後話題を呼びそうなのが、イギリスの名門ハロウ校が日本に進出してくることです。2022年に開校を予定している「Harrow International School APPI」がその施設の一つになります。優れた基本教育に加えて冬はスキーやスノーボード、夏は自転車・ゴルフ・テニスなどのスポーツを交え生徒の個性をより成長させるカリキュラムを用意すると発表しています。いわば外資系ともいえるスクールが開校すれば、わざわざ海外まで留学しなくても同等の教育を受けられる時代がやってくるかもしれません。
国際的なスーパーエリート育成に貢献するボーディングスクール
日本もグローバル化が進み、かつての「一流大学を目指せばよい」という時代ではなくなりました。ビジネス界では国境のボーダレス化で海外との取引なしには成長戦略が成り立たない企業が増えています。あわせて、今後は外国人観光旅行客や外国人労働者など海外からの流入も加速する見込みです。ボーディングスクールのような国際的で開かれた場所で習得する、生きた英語力・グローバル思考が必須な時代ともいえるのです。
日本経済が成長するためにも、国際舞台で活躍するスーパーエリートの輩出が今こそ求められているといえます。子どもをスーパーエリートに育てる選択肢の一つがボーディングスクールなのです。(提供:Wealth Lounge)
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