失業して収入がなくなってしまうと、年金保険料の支払いも経済的に難しくなるかもしれません。そんなときは「免除」の手続きをして負担を軽くしましょう。保険料が免除になる条件や手続き方法について解説します。

会社を退職(失業)したら年金は自分で払わなければならない

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(画像=PIXTA)

会社で働いている間は、毎月の給与から自動的に厚生年金保険料が天引きされているのが一般的です。退職しても、すでに次の就職先が決まっていて無職の期間がない場合は、年金の手続きは新しい会社の方でしてくれます。

ただ、無職の期間があると、自分で市区町村役場に行って年金の手続きを行い、保険料を支払わなければなりません。年金保険料の支払いは義務なので、支払っていない期間があると後からまとめて請求されたり、老後に限らず障害年金や遺族年金といった保障も受けられなくなる可能性もあります。忘れずに必ず手続きをするようにしましょう。

失業により年金が払えないときは免除申請を

義務とはいえ、失業して収入がないときに年金保険料を支払うのは家計にとって負担になるでしょう。生活が苦しく支払いが難しいときは、市区町村役場か最寄りの年金事務所で申請手続きをすれば、保険料の納付が猶予されたり免除されたりする制度があります(「国民年金の失業等による特例免除」)。

この手続きをしておくと、たとえ保険料を支払えなくても「未納」とはなりません。障害年金や遺族年金の保障も受けられますし、老後の年金額を計算する際にも考慮されます。同じ状態に見えても申請の有無でまったく内容が違いますので、面倒でも手続きしておきましょう。

条件によって変わる年金免除の額4パターン

申請すれば全員が保険料を支払わなくてもよい、ということではありません。失業したことで免除申請をする場合は、本人ではなく世帯主と配偶者の前年の所得に応じて、どのくらい免除を受けられるのかが決められています。収入が少ない世帯ほど大きな免除を受けられます。具体的には以下のとおりです。

・全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

・4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

・半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

・4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

所得、扶養親族等控除額、社会保険料控除額等は、勤めていた会社でもらった源泉徴収票もしくは確定申告書に記載があるはずです。見方がよくわからない場合は、市区町村役場か年金事務所で尋ねれば、どの免除に該当するか教えてくれるでしょう。

免除期間はいつからいつまで?

免除の要件にあてはまり、手続きを済ませれば、失業した日(=退職日の翌日)の前月の分から免除が受けられます。さかのぼって申請することもできますが、その年金保険料の納付期限から2年を経過しない分だけに限られています。

1回の申請で免除されるのは、7月から翌年6月までの1年度分です。引き続き免除を受けたい場合は、もう一度申請書の提出が必要です。その際、あらためて免除の要件を満たしているか確認されるため、もし収入が増えるなどして該当しなくなっていれば、当然ですが免除を受けることはできなくなります。

もらえる年金はどのくらい減るの?

年金保険料の納付猶予や免除を受けている期間がある場合、全額支払ってきた人よりも将来もらえる年金額が少なくなります。その割合はどの免除を受けているかによって変わります。

・全額免除
全額免除の期間は保険料をいっさい支払っていませんが、全額納付した場合の2分の1は支給されます。

・4分の3免除
保険料の支払額は4分の1ですが、全額納付した場合の年金額の8分の5が支給されます。

・半額免除
保険料の支払額は2分の1ですが、全額納付した場合の年金額の8分の6が支給されます。

・4分の1免除
保険料の支払額は4分の3ですが、全額納付した場合の年金額の8分の7が支給されます。

年金の免除申請の手続き方法

自身の住民票がある市区町村役場の国民年金担当窓口もしくは年金事務所に、所定の書類を提出することで手続きできます。窓口まで行けない場合は郵送でも受け付けてくれます。

まず、年金手帳かマイナンバーがわかるものを用意しましょう。確実に必要になる書類「国民年金保険料 免除・納付猶予申請書」を記入するときに使います。この書類は、役所の窓口に取りに行くこともできますし、日本年金機構のホームページでダウンロードすることもできるほか、「ねんきんネット」でオンライン作成することも可能です。

申請書の記入ができたら添付書類を揃えます。基礎年金番号か個人番号のどちらかを確認できるように、年金手帳(氏名が記載されているページ)のコピーもしくはマイナンバーカードのコピー(表・裏の両方)と、失業した事実を確認できる雇用保険受給資格者証か離職票どちらかのコピーを用意しましょう。

再就職後に余裕ができたら追納がおすすめ

免除や納付猶予を受けていると、そのぶん将来年金をもらえることになったとき、全額納付してきた人よりも受給できる金額が少なくなってしまいます。この差額を埋めるのが「追納(ついのう)」です。

追納とは、免除等を受けてから10年以内であれば、お金の余裕ができたときに、支払えていなかった期間の保険料を後払いできる制度のことです。これをしておくと、将来もらえる老齢基礎年金の金額が増えますし、支払った保険料分の控除を受けられるため税金が安くなります。

失業中は年金を未納のままにしないこと

失業中、年金保険料を支払えるなら支払っておくのが一番ですが、もし支払えないなら申請し、「ほったらかしで未納」という状態だけにはならないように気を付けましょう。そうしておくことで煩わしい支払請求通知を何度も受け取らずに済みますし、もしものときに自分を守ることにもなります。

文・馬場愛梨(「貧困女子」脱出アドバイザー/ばばえりFP事務所 代表)/fuelle

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