不動産投資のリスクを、実際に現場で起きている問題から学ぶ!

不動産
(画像=PIXTA)

不動産投資のトラブルは、ミクロで見るとさまざまな事情や状況で多岐にわたりますが、法的な結論はシンプルで、いくつかのポイントを抑えておけば、トラブル回避は充分に可能です。そこで、私たち弁護士が実際に相談を受けた案件から、よくあるトラブルをご紹介。なぜ問題が生じたのか、そしてどのように解決したのかをわかりやすく解説します。

3年間だけ自宅を賃貸に出したいけど、ちゃんと明け渡してくれるか心配…

ヴェリタスインベストメント
(画像=ヴェリタスインベストメント)

大阪府在住、山崎さん(35歳、男性)からのご相談

2年前に新築一戸建てを買い、そこに妻と長男と暮らしています。先週、仕事で海外に赴任することが決まりました。赴任期間は3年で、3年後はまた現在の職場に戻ってくることが決まっています。私と妻はもともと海外が好きなので、妻とも相談して海外には家族で行くことになりました。

そうすると、現在の住居は海外赴任中、空き家になります。ただ、空き家にしておくのはもったいないので、賃貸に出したいと思っています。他方で、3年後にはまた自分たちで住みたいとも思っています。賃貸に出したいけど、ちゃんと約束通り明け渡してもらえるか不安もあります。

そこで、知人から、一時使用目的という制度を教えてもらったのですが、契約書に一時使用目的と書いておけばそれで安心ということでしょうか?

よくあるトラブル ㉔「一時使用目的って?」

これで解決!

建物の賃貸借契約では、契約の期間が満了したからといって、当然に契約が終了になるわけではありません。借地借家法では、借主が契約終了後も更新を希望する場合、貸主は期間が満了したことだけを理由として借主を追い出すことができず、借主を追い出す「正当事由」が必要だと定めています。そして借地借家法は、借主の居住権や営業権を保護しているので、この更新拒絶に必要な正当事由はなかなか認められないのが現実です。つまり、ご相談者さんの場合、通常の賃貸借契約を結ぶと、3年後に日本に帰ってきたときに借主が期間満了後も住み続けたいと言い出すと、簡単に追い出せない事態になる可能性があります。

そこで、ご相談者さんが指摘する「一時使用目的」(借地借家法40条)という契約を結ぶことも選択肢にはなります。一時使用目的のときには、借地借家法の定めが適用されないので、上述した「正当事由」がなくても、更新を拒絶し期間満了で契約を終了させることができます。ただ、この一時使用目的に該当するかについては、単に契約書に一時使用目的と書けばよいのではなく、賃貸借の目的、動機、経緯、賃貸期間、建物の種類、その他諸般の事情から、賃貸借契約を短期間に限り存続させる趣旨のものであることが客観的に判断されるかどうかで判断されます。つまり、後日、借主が出て行かないと言い出したときに、借主を出て行かせられない場合があるということです。だから、一時使用目的の契約ではリスクがあり、お勧めできません。

この場合最も適している方法は、定期借家契約です。この制度は平成12年3月からスタートした制度で、一定の条件で「正当事由」がなくても契約が期間満了するという制度です。その条件とは、契約時に①更新がなく期間満了で終了することを契約書とは別の書面で説明すること、②契約書を書面で作成すること、③契約書に契約期間が明記されていることで,④期間満了の1年前から半年前までの間に、期間満了により契約が終了することを借主に通知することです。ご相談者さんの場合は、この定期借家契約を使って賃貸借契約をすれば、日本に戻ってきたときに、安心してマイホームで生活をすることができると思います。