「公平」という言葉は美しいが……

公平という言葉の響きは美しいが、その公平さのもとで短期的な業績ばかりが追求されてしまっては元も子もない。やはり、「日本人枠」が必要なのだと思う。「女性の管理職は何%、北米日産の部門別日本人出向者の数は何人」といった一定の枠組みの中での平等を図るべきだ。

トヨタやホンダは現地人化を進めているが、主要なポジションには必ず日本人出向者が配置されている。ドイツのBMWの米国法人、ダイムラーの英国法人も、同様にドイツ本社から非技術系スタッフが数多く出向している。長期的な視点を持つ人材が入ることが、人材育成の面でも重要だからだ。

ゴーン氏がいなくなった今、日本人の海外出向者を増やすことは急務だ。人材育成には時間がかかるし、このままでは日産は、学生に選ばれない企業となってしまう恐れもある。

(『「名経営者」はどこで間違ったのか』より抜粋・再編集)

法木秀雄(ほうぎ・ひでお)
早稲田大学大学院商学研究科元教授/(公財)日本英語検定協会理事/八木書店ホールディングス取締役
1945年生まれ。一橋大学卒。スタンフォード大学経営大学院卒。日産自動車にて北米副社長まで務めた後、1992年退社、BMWジャパン常務、クライスラージャパンの代表取締役社長を歴任。その後、早稲田大学ビジネススクール教授に就任。シンガポールの名門大学であるNTUと早稲田大学との合弁にて、ダブルディグリーMBAプログラムを創設。サンデンホールディングスなど複数の企業の取締役を務める。

「名経営者」はどこで間違ったのか-ゴーンと日産、20年の光と影)
法木秀雄(早稲田大学ビジネススクール元教授) 発売日: 2019年10月23日
約20年に及んだ「カルロス・ゴーンの日産」は、ゴーン氏の突然の逮捕によって幕を閉じた。あれから1年、いまだ日産が混乱を続けている理由は「ゴーン氏の負の遺産」にあると著者は指摘する。
元日産自動車北米副社長。BMWジャパン、クライスラージャパンのトップ。そして早稲田大学ビジネススクール教授。そんな経歴を持つ著者だからこそ書ける「ゴーン改革の真実」とは? 成功と失敗のすべてが詰め込まれた最強のケーススタディ。(『THE21オンライン』2019年10月24日 公開)

【関連記事THE21オンラインより】
衝撃の逮捕から1年。ゴーン氏の「失敗の本質」はどこにあったのか?
ゴーン氏転落の一因となった「ルノーでの失敗」とは?
電気自動車「リーフ」は、ゴーン氏最大の失敗だった?