「情報銀行」という言葉を聞いたことはないでしょうか。銀行は集めた預金を貸し出したり投資したりして利益を出し、預金者に利息という形で還元します。これに対し、情報銀行は個人から情報を預かって第三者に提供するなどし、そこで得た利益を個人に還元します。2019年に日本でも本格的に導入される情報銀行には、どのような特徴があるのでしょうか。
情報銀行とは?
「情報銀行」とは「情報利用信用銀行」とも呼ばれ、データ活用に関する契約などに基づいて個人のデータを管理するとともに、個人の指示またあらかじめ指定した条件に基づき、個人に代わって妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業や仕組みを指します。
具体的には、各消費者が「PDS」(Personal Data Store)と呼ばれるデータ蓄積・管理システムに本人の氏名や年齢、購買履歴、健康データなどの情報を蓄積し、情報銀行側が各個人からの指示や契約に基づいて、それらの情報を第三者に提供するものです。
現在、この分野に参入を表明する民間企業が増えており、既に実証実験を開始している企業もあります。総務省や経済産業省が2018年6月に取りまとめた指針の下、民間団体による情報銀行の認定制度も2019年に本格的にスタートし、今後の大きな市場の形成が見込まれています。
海外においては、アメリカやイギリスなどでも既に似たようなサービス事例があります。個人の購買履歴や医療データのほか、位置情報やSNSデータなどをサービス事業者が第三者に販売し、消費者がその見返りとして報酬を受け取るという仕組みです。
消費者のメリット――自分に合ったサービスや商品を提案してもらえること
消費者が情報銀行に情報を提供するメリットは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、情報を提供する見返りとして何らかの対価を得ることができることです。既に日本でも個人情報の登録を募集している企業があり、その対価として電子マネーやギフト券の抽選権などが付与されます。
2つ目は、情報を提供することで、自分に合った商品やサービスを提案してもらいやすくなることです。日本国内では旅行者が情報銀行へデータを提供し、観光関連などのサービス事業者がその旅行者に合った情報が届けるという実証実験も進んでいます。
企業のメリット――消費者ニーズに即した商品開発ができる
情報銀行を通じて消費者の個人情報を購入することができれば、企業はより消費者のニーズに即した商品やサービスを開発しやすくなり、マーケティングにも活用することで売上や収益を伸ばすことができます。これが、企業が情報銀行を活用するメリットです。
個人情報の活用に関しては、これまで「GAFA」(Google、Apple、Facebook、Amazon)と呼ばれるIT大手がユーザー情報やログなどのビッグデータをマーケティング活動などに活用し、利益を生み出してきました。
インターネットが普及した現在では、情報銀行以外でも既に消費者の情報が活用されているのです。
消費者にも求められるリテラシー
情報銀行が日本でも必要とされ、広く普及していくためには、情報銀行の主体となる民間企業や情報の提供先となる第三者の信頼性が向上する必要があり、そのためには高いレベルでのデータ保守やルール遵守などが求められます。
消費者側も、情報銀行に対する理解を深める必要があります。情報銀行には、個人のコントローラビリティを確保する機能を持つよう求められていますが、提供する個人の側も情報銀行に任せきりにせず、個人情報がどのように活用されるのか、どこに提供されるのか、提供された先を確認できるか――などをしっかり見極める必要があります。
そもそも個人情報を適切に管理するためには、普段から各個人が情報漏えいの予防や対策を万全にしておくことも重要です。金融機関のサイトを装ったフィッシングサイトに十分注意し、SNSで友人ではない人を友達登録しないことなども心掛けましょう。
IoTの普及で増加する個人情報の活用機会
今後IoTがより普及する中で、個人情報の活用機会は一層増えていきます。その中で情報銀行が効果的に活用されれば、より個人個人に合ったサービスが提供されやすくなります。
情報銀行のサービス提供が本格化するのは、これからです。新時代の情報革新の行方に注目していきたいところです。 (提供=auじぶん銀行)
執筆者:株式会社ZUU
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