(本記事は、井上裕之の著書『会話が苦手な人のためのすごい伝え方』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)
回答力は、人生の不可能を可能にする
以前、こんな相談をされたことがあります。
「子育てをしながら仕事を続けるにはリスクがありますよね。子育てとキャリア、どちらを選べばいいのでしょうか?」
たしかに、これだけ働き方改革が叫ばれていても、子育てと仕事の両立に難しさを感じている女性はたくさんいます。
しかし、この女性の話を聞いているうちに、私は非常に違和感を抱きました。
なぜなら、どちらかひとつを選ぶことに焦点を当てており、2つを同時に手に入れるという思考を一切もっていないからです。
いまのあなたは3年前、5年前、10年前の自分がつくり上げたものです。
いままで培ってきた経験や知識、思考、習慣、人間関係が栄養となり、そっくりそのまま「いまのあなた」をつくっています。
おそらくこの女性は、2つのものを同時に手に入れるという経験をしたことがないのでしょう。だからこそ、「どちらかひとつを選択しなくてはいけない」という思考に捉われています。
しかし、考えてみてください。
大谷翔平さんが投手と打者、どちらかを選択していたら、間違いなくいまの彼はいないでしょう。
「世界の北野」と名高いビートたけしさんだって、芸人という土台のうえで、映画監督として世界で活躍しています。
私自身も、歯科医師と作家という2つの顔をもっていますが、どちらかひとつを選んでいたら、間違いなくいまの私はいません。
なぜそれが可能なのか?
それは、2つないし2つ以上のアイデンティティをもつことを、潜在意識のなかで「当然のこと」として認識しているからです。
潜在意識は主語を認識しません。よって、いい話も悪い話も、耳に入るものすべてが自分の未来をつくる情報として貯蔵されていきます。
であれば、この女性は「どちらか一方を選ぶためのアドバイス」よりも「子育てと仕事を両立している成功例」を聞くべきです。
そうすれば、子育てと仕事を両立するための具体的な知識を得ることができ、それが潜在意識に新しい情報として貯蔵されます。すると、身体が勝手に「2つを同時に手に入れる」方向へと動き出します。
つまり、自分を変えたいと思うなら、あなたの耳から入る言葉を「理想の自分」で埋め尽くすことが重要です。そして、そのためには、まず自分が発する言葉を意識して変えていくことが先決です。
言葉は武器です。
言葉ひとつで、相手を守ることも、相手を殺すこともできてしまいます。そう思えば、もう少し言葉をていねいに扱わなければいけないことに気づくはずです。
そして、自分の言葉が変われば、あなたがいままで「不可能」だと思っていたことが、無意識に「可能」へと勝手に動き出します。
つまり、伝え方の改革こそが、あなたの未来を救うカギなのです。
すごい伝え方のコツ
言葉は「理想の自分」のために使う
「すごい伝え方」で唯一無二の自分になる
あなたが「また会いたい」と思うのは、どんな人でしょうか?
容姿が美しいことに越したことはありませんが、「また話がしたい」とか「また一緒に仕事がしたい」と思うのは、少なからず相手を「信頼できる」と認識した人だと思います。
しかし、信頼できるだけでは印象は薄く、相手に忘れ去られてしまう可能性もあります。とくに相手が多忙な人ほど、数週間もすれば「その他大勢」の一人として、記憶から消えてしまう可能性が高いです。
もし、あなたがビジネスシーンにおいて「チャンスをつかみたい」と思うなら、「信頼できる人」よりも、「相手にインパクトを与える人」になることを意識するべきです。相手にインパクトを与えるといっても、奇抜なファッションや派手なメイクをするというわけではありません。
相手にとって「いままでこんな人と会ったことがない」と思わせるような言葉を選び、会話をするのです。
たとえば、日本人は雑談のとっかかりとして、天気の話をしますよね。
「今日はとても気持ちのよい天気ですね」
「今日は蒸し暑いですね」
「雨が強いですが、濡れませんでしたか?」
など、誰もが言うようなありきたりなセリフでは、その会話をしたことすら覚えていません。しかし、もしあなたが「今日はいい天気ですね」と言ったとき、相手が、
「私、天気のいい日って大嫌いなんですよ」
と答えたら、どう思いますか?
当然「え、なぜですか?」と、理由を聞きたくなりますし、それが自然と次の会話につながります。
こんなちょっとした会話のキャッチボールでも、相手にとって「あの人は天気が嫌いな人」という印象を与えることができれば、間違いなく相手の記憶に残ります。
つまり、選ぶ言葉ひとつで「その他大勢の人」になることも、はたまた「記憶に残る人」にもなれるのです。
すごい伝え方のコツ
インパクトに残る言葉を、相手の記憶に刻み込む
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