(本記事は、井上裕之の著書『会話が苦手な人のためのすごい伝え方』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

会話下手な人が陥りがちな3つの思考パターン

解説
(画像=Getty Images)

会話で悩んでしまう人は、次に挙げる3つの思考に陥っている可能性があります。

(1)会話の主導権は「質問者」にあると思っている

会話の主導権を握るのは質問者にある、という考えが蔓延していますが、はたしてそれは正解なのでしょうか。

たとえば国会中継などで、野党議員の鋭い質問にたじたじとなる与党議員の滑稽さがワイドショーで恰好の的になったり、不貞をスクープされた芸能人がインタビュアーの重箱の隅をつつくようないじわるな質問に額に汗を滲ませながら答える......。

こんなシーンを誰でも一度は見たことがあると思います。

新入社員の面接などでも「圧迫面接」という言葉も生まれたように、質問する側がつねに権力を握っているというイメージが、潜在意識に植え付けられているのかもしれません。

実際に「質問力」を磨く本は数多く出版されているのに、回答に対してレクチャーしてくれる本は意外なほど少ない。これはつまり、会話の主導権が「質問者」であるということの思い込みが、影響しているように思えてなりません。

会話は質問と回答を繰り返すことで成り立つものです。

つまり、あなたは質問者でもあり回答者でもあるということ。だからこそ、質問されることに恐怖心を抱かなくてもいいのです。

(2)「簡潔」と「短絡的」をはき違えている

ビジネスシーンにおいては、明確なレスポンスが求められます。クライアントへの対応、上司への報告、部下の質問に対する答えは、気の置けない仲間や家族にするものとはまったく異なるものです。

一般的に、ビジネスシーンでの理想的な伝え方は、「的確でシンプルである」こととされており、多くの人が「言葉は短く、要点を絞って簡潔に」を意識している人も多いと思いますが、はたして正解なのでしょうか?

たとえば、取引先との打ち合わせから帰社したあなたに、上司が次のような質問をしてきたらあなたはどう答えますか?

上司「△△社との打ち合わせ、どうだった?」

一般的に浸透している答え方で返すとしたら、

あなた「〇〇の件はうまく話が運びました。心配していた××の件も進められそうです」

確かにシンプルで結果がわかりやすく、上司の知りたかったことに的確に答えているといえます。

では、次のように答えるのはどうでしょう。

あなた「〇〇の件は担当のAさんの配慮により、話がうまく運びました。心配していた××の件も進められそうです。帰りの電車でAさんと遭遇したとき、はじめはコストがかかりすぎることでNGになる予定だったようです。これもおそらく、Aさんが影で我が社のために尽力してくれたおかげでしょう」

前者のような、簡潔に要件だけをまとめた答え方では、結果の情報しか受け取れません。

しかし、後者のような答え方は、結果だけでなく、それに付随する確かな情報も受け取ることができ、また、自分とクライアントの良好な関係性さえもアピールすることができます。

つまり、「的確にシンプルに答える」ということは、情報の枝葉をすべてそぎ落とした短絡的な回答をすればいいという意味ではないのです。

また、「相手が必要としている情報の精査を自分のものさしで計ってしまうこと」という問題もあります。

相手がどういう立場でその質問をしているか、相手の背景を察し、相手により有用な情報提供ができる枝葉を残して伝えること。

そして、相手の質問の裏にある背景を察するために必要なのは、普段から知識の貯蔵庫にあらゆる情報を蓄えておくことです。

相手にとって、期待以上の回答をすることができたら、あなたとの会話を間違いなく有意義なものと感じてくれるでしょう。そして、他の人にはないあなただけの魅力、価値に気付くはずです。

これこそ、伝え方で自分というブランドを確立するための近道です。

(3)相手は「答え」を求めていると考える

女性とショッピングを楽しんでいるとき「これとこれなら、どちらの服がいい?」

と聞かれたら、男性はどう答えるべきでしょうか?

この質問は、男女間コミュニケーションの難しさを論じる際、よく引き合いに出さる例です。

「こっちのほうが似合うよ」と言えば、「えー、こっちもいいと思うけど」と言い、「そっちも悪くないよ」と返せば、「でもこっちのほうがいいんでしょ?」と、機嫌が悪くなる。

かといって、「自分の気に入ったほうにすれば?」と言うと「一緒に選んでほしいのに」というように、結局、女性がなんと言ってほしいのかわからず、次第に険悪なムードが漂ってしまう。

男性の立場であれ、女性の立場であれ、これと似たようなシチュエーションを経験したことがある人は少なくないはずです。

男性は「答えを求められている」と思い誠実に答えたが、女性は「共感してほしい」「共同作業を楽しみたい」という気持ちが優先しているため、「そんなに簡単に決められるわけないでしょ!」と感じて、気分を害す。

まさに男女の思考の違いが起こしたコミュニケーションのすれ違いですが、このように相手が質問する意図を汲み取れずに回答をすると、軋轢を生じることになりかねません。

これは男女間に限らず、すべての会話コミュニケーションにおける不具合の典型的な例といえます。

すごい伝え方のコツ
会話で陥りがちな3つの思考パターンを外す

「会話が続かない......」を打破する方法

最高の組織3

会話に苦手意識がある人は、一対一で「会話が続かない」ことに不安を抱いている方も多いはずです。会話が続かない原因は、相手の質問に対して、ひと言で答えを終えてしまうこと。つまり、一問一答になってしまうということです。

たとえば、次のような一問一答の会話では、エネルギーの交換がおこなわれないことがわかるはずです。

Aさん「どこにお住まいですか?」
Bさん「北海道です」
Aさん「北海道って、いまはもう涼しいんでしょう?」
Bさん「まあ、そうですね」
Aさん「東京にはどのくらいのペースで来られるんですか?」
Bさん「だいたい月に2、3回のペースです」
Aさん「診療もあるなかで、お休みも少ないんじゃないですか?」
Bさん「いえ、休みは普通に取っていますよ」

これではまるで尋問のように感じてしまいますが、なかには「この会話のどこがいけないの?」と思う人もいるかもしれません。しかし、あきらかに寂しい気がしますし、言葉にエネルギーを感じることができません。

一問一答になってしまうのもまた、真面目な人が多いようです。質問に対して、ウソ偽りなく忠実に答えようとするため、答え終わったところで会話が終わってしまう。

こうなると、相手は次から次へと質問を投げかけ、会話が続くネタの手探りを始めることになります。

しかし、手探りを続けたまま一問一答を続けるのは、質問者も回答者もお互いが疲れてしまいます。では、次の会話はどうでしょうか?

Aさん「どこにお住まいですか?」
Bさん「北海道です。いまはもう涼しいですよ。あなたはどちら?」
Aさん「東京です。北海道はもう涼しいんですね」
Bさん「ご出身が東京で?」
Aさん「いえ、出身は九州です。北海道へは家族旅行で行ったことがあります」
Bさん「へぇ、北海道のどちらへ?」
Aさん「札幌の雪まつりに行きました。九州では経験したことがない雪の量に驚きました!北海道はどちらにお住まいですか?」
Bさん「帯広です。札幌とはまた違って自然が豊かですよ。九州へは仕事で月に一度は福岡県に行っています。ショッピングが好きなので、時間ができたら〇〇百貨店に行くのが密かな楽しみなんですよ」

2つの会話を比べてみると違いが明確ですよね。

2つ目の会話にはテンポがあり、躍動感があります。お互いが自分の体験談を交えながら相手に投げかけ、会話が膨らむための共同作業をしている。

つまり、これがエネルギーの交換がおこなわれる会話です。

誰でも初対面の人から聞かれる同じような質問があると思います。

たとえば、珍しい苗字の方であれば「どんな漢字を使うのですか?」とかならず聞かれ、いままでも何度も答えているはず。そのように、誰もが想定できる質問には、あらかじめ答えを用意しておくのも良策です。

たとえば、

「わたしの名前は○○と言います。珍しい苗字で、全国で3世帯しかいないんです」
「わたしは〇〇と言います。平凡な名前ですがスティーブ・ジョブズと同じ誕生日なんですよ」

など。

挨拶程度の定型的な質問や、マニュアルどおりの質問がきそうな場面では、あえて先回りして答えてしまってこちらから一歩踏み込んだ回答をすれば、相手との距離がぐっと近くなることもあります。

すごい伝え方のコツ
よく聞かれる質問には、あらかじめ答えを用意しておく

会話が苦手な人のためのすごい伝え方
井上裕之(いのうえ・ひろゆき)
歯学博士、経営学博士、医療法人社団いのうえ歯科 医院理事長、東京医科歯科大学非常勤講師を含め国 内外5大学非常勤(客員)講師、世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト公認グランドマスター。1963年北海道生まれ。東京歯科大学大学院修了後、「医師として世界レベルの医 療を提供したい」という思いのもと、ニューヨーク大学をはじめペンシルベニア大学、イエテボリ大学などで研鑽を積み、故郷の帯広で開業。その技術は国内外から高く評価されている。報道番組「未来世紀ジパング」にて、最新医療・スピード治療に全国から患者殺到ということで取 り上げられる。また本業の傍ら、世界中の自己啓発や、経営プログラム、能力開発を徹底的に学び、ジョセフ・マーフィー博士の「潜在意識」と、経営学の権威ピーター・ドラッカー博士の「ミッション」を統合させた成功哲学を提唱。「価値ある生き方」を伝える講演家として全国を 飛び回っている。著書は累計発行部数130万部を突破。実話から生まれたデビュー作『自分で奇跡を起こす方法』(フォレスト出版)は、テレビ番組「奇跡体験! アンビリバボー」で紹介され、大きな反響を呼ぶ。『なぜかすべてうまくいく1%の人だけが実行している45の習慣』(PHP研究所)、『「学び」を「お金」に変える技術』(かんき出版)、『がんばり屋さんのための、心の整理術』(サンクチュアリ出版)、『なぜ、あの人の仕事はいつも早く終わるのか?』『「変われない自分」を一瞬で変える本』(きずな出版)など、ベストセラー多数。

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