いよいよ2020年が到来した。昨年(2019年)もまた様々なことが生じてきたが、今年の注目テーマも様々にある。株式マーケットでいえば、2020年の注目テーマとして以下が“喧伝”されている:

●東京オリンピック
●5G
●電線地中化
●国土強靭化
●マイナンバー
●量子コンピューター

5G,導入
(画像=Fit Ztudio/Shutterstock.com)

この中でも5G、電線地中化、そして国土強靭化とインフラ関連が多いことが注目に値する。特に5Gはグローバルでも導入が進んでいるのは周知のとおりであるが、他方で米国が英国やドイツにファーウェイ製の5G機器を利用することに対する警告を発している。またそれ以前に過去5Gの健康リスクについて触れてきたように、依然として一筋縄ではいかない状況にある。

そもそもインターネットそのものに脆弱性があるわけだが、ここまでインターネットが一般化している以上、それに対する認識を我々も深めなければならない。なぜならば、インターネットに関するリスクとしてサイバーセキュリティといった事態が盛んに“喧伝”されているが、それ以上にハード面でのリスクが増大しているのだ。

(図表1 台風15号による停電からの復旧作業光景)

5G,導入
(出典:産経新聞

たとえば台風15号を受けてNTT東日本のサービスでは電話関連で8万回線近く、またインターネット回線では7.7万回線に障害が生じたと報告している。。またインターネットとは少し離れるが、台風18号の影響を受け、総務省は携帯電話基地局の電源について長時間化を義務付ける方向性で検討しているのだという。これは災害を受けて基地局がダウンすることで携帯電話の通信障害が生じるという二次災害のダメージを軽減化することを目的としたものである。

これはグローバルでも同様である。通信衛星を使ったインターネット網の構築も計画としては進んでいるものの、コスト面が圧倒的に安いため、国家間を通常光ファイバー網(海底ケーブル)をつなぎインターネット回線としている。これが実は度々断線しているのだ。無論自然要因も少なくない。たとえば海底ケーブル断線の有力な理由がサメによるものなのである。古くは1987年にNew York Timesがサメによるケーブル攻撃が報告されている。

その一方で、人為要因による断線の可能性も“喧伝”されている。たとえば2018年にアフリカにあるモーリタニアにおいて海底ケーブルが断線したために2日間、国家規模でインターネットがダウンするという事態が生じた。それについて米英両国がロシアによる意図的な断線であるとして批判したのである(無論ロシアはそれを否定している)。その真偽は不明だが、いずれにせよこうした形も含めてハード面でのインターネット・リスクに留意すべきなのだ。

5G導入において隠れたリスクがあるのであるが、それは国土強靭化という意味でも我が国の株式マーケットにおいて機会をもたらし得るのである。

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所(IISIA)
元キャリア外交官である原田武夫が2007年に設立登記(本社:東京・丸の内)。グローバル・マクロ(国際的な資金循環)と地政学リスクの分析をベースとした予測分析シナリオを定量分析と定性分析による独自の手法で作成・公表している。それに基づく調査分析レポートはトムソン・ロイターで配信され、国内外の有力機関投資家等から定評を得ている。「パックス・ジャポニカ」の実現を掲げた独立系シンクタンクとしての活動の他、国内外有力企業に対する経営コンサルティングや社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。

大和田克 (おおわだ・すぐる)
株式会社原田武夫国際戦略情報研究所グローバル・インテリジェンス・ユニット リサーチャー。2014年早稲田大学基幹理工学研究科数学応用数理専攻修士課程修了。同年4月に2017年3月まで株式会社みずほフィナンシャルグループにて勤務。同期間中、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーに出向。2017年より現職。