「究極のプライベートバンク」と評されるファミリーオフィス。この記事では、海外の超富裕層や富豪がプライベートバンクではなくファミリーオフィスを選ぶ理由と、日本と対象的にファミリーオフィスが普及するアジアの状況を紹介します。
ファミリーオフィスの目的は「一族の永続的な発展」
富裕層を対象にするプライベートバンクはスイスを中心とする欧州で発達した、資産の管理・運用から財産の相続に関する業務まで行う総合的な金融サービスです。近年、欧米のプライベートバンクが日本に進出しているほか、日本の金融機関でもプライベートバンク部門を立ち上げる動きが広がっています。
一方、ファミリーオフィスはプライベートバンクをさらに進化させたもので、事業で資産を築いた富裕層ファミリーが所有する事業や資産を保全・運用し、一族の永続的な発展を目的として運営するものです。ロックフェラーやカーネギーなどが、初期からの顧客として知られています。
プライベートバンクが一般的な富裕層を対象とするのに対し、ファミリーオフィスは「一族で財を成したような超富裕層や富豪に相応しいサービス」と考えればわかりやすいかもしれません。
超富裕層や富豪クラスにはファミリーオフィスのほうが合理的
海外の超富裕層や富豪がファミリーオフィスを利用する理由について、国内金融機関の元プライベートバンカーの識者は「プライベートバンクの魅力は顧客のあらゆるニーズに応えられるカスタムメイドだが、ファミリーオフィスはそのカスタムメイドの究極形」と表現しています。
「カスタムメイドの究極形」すなわちファミリーオフィスでは、優秀な税理士・弁護士・コンサルタントなどがチームを作り、その一族のために最も適した資産管理を行います。このことから、超富裕層や富豪クラスになると、プライベートバンクよりもファミリーオフィスのほうが合理的と言えます。
アジアで急速に広がるファミリーオフィス市場
海外では資産数十億円レベルでファミリーオフィスを持つのが一般的ですが、日本ではまだ普及しているとは言い難い状況です。とはいえ、今後は日本でも本格的にファミリーオフィスが普及していくと見られています。
一方、アジアの富豪の間ではすでにファミリーオフィスの利用は浸透しはじめています。中国やアジアの富裕層の間では資産管理への意識がこれまでより一層強まっており、特に香港やシンガポールではファミリーオフィスを立ち上げる動きが急増しているとの報道がありました。
またアジアで台頭するファミリーオフィスについて、日本経済新聞(2019年10月16日付)は「世界に7,300社あるファミリーオフィスのうちアジア太平洋が1,300社(英カムデンリサーチ調べ)で、2017年以降は44%と欧米を上回る伸び率を示している」と報じました。
ファミリーオフィスには、「欧州の金融機関のアジア進出」のほか「現地金融機関のファミリーオフィス部門の強化」という動きもあるようです。
今後のアジアでのファミリーオフィスの注目ポイント
アジアでのファミリーオフィスは、やはり金融センターであるシンガポールと香港で設立されるケースが多くなっています。これまでは香港が優勢でしたが、反政府デモが長期化するにつれシンガポールへ移転する動きもあるようです。
調査会社ユーリカヘッジが発表したデータによると、香港のヘッジファンドでは2019年7~9月期(第3四半期)において、約10億米ドル(発表時のレートで約1085億円)の資金が流出していますので、ファミリーオフィスにおいてもある程度の資金移転があったと考えられます。
今後のアジアのファミリーオフィスの注目ポイントは、「シンガポールへの一極集中になるのか」「日本での普及はどこまで進むのか」の2つになりそうです。(提供:Wealth Lounge)
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