資産運用の中で、会社員に人気があるのは不動産投資だ。不動産投資を支持する会社員の割合や、会社員に選ばれる理由などについて詳しく見ていこう。

会社員はどのくらい不動産投資を行っているのか?

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(画像=GaudiLab/shutterstock.com)

はじめに、不動産投資が会社員にどれくらい支持されているかをチェックしよう。

不動産投資は「会社員の副収入ランキング」で5位

スマホ送金サービスのpring社が、1年以内に副収入を得た会社員を対象に行ったアンケートによると、収入源のトップ5(男性)は以下のとおりだ。

会社員の副収入ランキング

順位 資産運用方法 割合
1位 株式投資・FX投資 55.5%
2位 クラウドソーシング 21.5%
3位 フリマアプリ・ネットオークション 21.0%
3位 バイト(接客業・軽作業・運搬など) 21.0%
5位 不動産投資 14.5%

※出典:「会社員の副収入アンケート」2019年6月実施 

不動産投資は5位にランクインし、副業として不動産投資を行っている会社員が相当数いることがわかる。副収入のある会社員の約7人に1人が、不動産投資で収入を得ている計算だ。女性の会社員になると、同ランキング7位(6.5%)と男性の約半分の割合になるが、それでも一定数いることがわかる。

不動産投資ポータルサイトの「利用者属性」ランキングで会社員は1位

では、不動産投資をする人(興味のある人も含む)のうち、会社員の割合はどのくらいだろうか。不動産投資のポータルサイト「健美家」の会員を対象にした調査では、回答者の54.2%が会社員だった。

不動産投資ポータルサイトの利用者属性ランキング

アンケート回答者の属性 割合
会社員 54.2%
自営業 12.1%
不動産経営 10.3%
会社役員 8.0%
公務員 5.7%
会計士 2.5%

※出所:「第11回不動産投資に関する意識調査」2019年4〜5月実施 

不動産投資に興味がある人、あるいは実際に不動産投資をしている人の半数以上が会社員なのだ。

数ある副業の中で不動産投資が会社員から支持される理由は、以下の6つが考えられる。

不動産投資が注目される理由1:会社員が低金利で融資を受けやすい

昨今の異次元緩和(低金利)の流れによって、不動産投資が身近な存在になっていることは確かだ。特に2016年に始まったマイナス金利政策によって金融機関の融資審査のハードルが下がり、会社員が賃貸経営をしやすくなっている。この環境を活かして、高額な副収入を得るサラリーマン不動産投資家が増えている。

日経ビジネスの連載企画「灼熱の不動産投資ラプソディ」では、低金利の流れにのって規模を拡大し続け、月に2,000万円の賃料収入(利益500~600万円)を得ている現役会社員を紹介している(2019年9月2日付)。

不動産投資が注目される理由2:会社員の属性を最大限に活かせる

金融緩和によって盛り上がっていた不動産投資だったが、2018年以降はスルガ銀行の不正融資(かぼちゃの馬車の破綻)や、TATERUの融資資料改ざんなどが発覚。メガバンクや地銀などの融資審査が厳しくなり、専業大家からは「融資を受けにくくなった」という声が聞かれるようになった。

一方でそれ以外のノンバンク系の金融機関は、安定収入や年齢などの申込者属性を重視して審査を行うため、逆風は弱いと言われている。特に区分マンションに投資することの多い会社員にとっては有利なようだ。

ただし、会社員でも一定の年収がないと融資を受けにくい。オリックス銀行の不動産投資ローンでは前年度年収700万円、クレディセゾンの不動産投資ローンでは前年度年収500万円といった融資基準が設けられている。※2019年12月現在の年収基準

不動産投資が注目される理由3:本業を続けながら資産運用ができる

株式投資やFXなどの投資を行う会社員の弱点は、平日昼間の時間が自由にならないことだ。チャートをこまめにチェックできないので、ベストなタイミングで売買ができない。最近は、会社のトイレで売買をする「トイレーダー」もいるようだが、あまりおすすめできない。

これに対して不動産投資は、業務の大半をアウトソースできる。そのため、本業に集中しながら資産運用をしっかり行うことができる。トラブル対応などの入居者管理や、共用部の清掃・メンテナンスなどの物件管理業務が発生するが、これらはすべて管理会社に委託できるのだ。

不動産投資が注目される理由4:赤字になっても所得税の節税ができる

不動産投資には、さまざまな経費がかかる。この経費を家賃収入から差し引いて赤字になった場合、その分を給与所得から差し引くことができる。この「損益通算」という仕組みがあるのも、不動産投資の大きな魅力だ。ちなみに、株式・FX・金などの投資で損失が発生しても損益通算は使えない。

特に高収入の会社員にとって、所得税の負担は大きいはずだ。不動産投資の仕組みを上手く使えば、この負担を軽減できる。ただし、損益通算があるからといって赤字を垂れ流し続ければ、手持ち資金が目減りしてしまう。減価償却などの状況を見ながら、適切に収支をコントロールすることが大切だ。

不動産投資が注目される理由5:将来の私的年金になる

ローンを利用して不動産投資をする場合、完済までの収支は「家賃収入-ローン返済-経費」になるため、最終的に手元に残るリターンは限られる。特に新築区分マンションの場合はプラスマイナスゼロ、あるいはマイナスになるケースも少なくない。

しかしローン完済すれば、毎月の手残りは多くなる。この仕組みを利用して、退職後の私的年金を作る目的で不動産投資始める会社員も多い。特に「老後2,000万円不足問題」が話題になってからは年金不安が広がり、不動産投資が再注目されている。

朝日新聞は『「年金だけでは暮らせない」不安な若者世代、投資に熱(2019年11月14日付)』という見出しで、不動産投資セミナーや金融セミナーに参加する会社員が急増する模様を伝えている。

不動産投資が注目される理由6:空室リスクを回避できる仕組みがある

不動産投資で副業をする会社員が気にするのは、空室リスクだろう。空室リスクを回避する「サブリース」という仕組みがある。

サブリースとは、サブリース会社などが収益物件を借り上げ、入居者に転貸する仕組みだ。毎月の家賃は管理会社がオーナーに支払うため、入居者がいてもいなくても家賃を得られる。

サブリースのデメリットは、入居者と直接契約する場合よりも得られる家賃が少なくなり、利回りが低下することだ。ただし理由5にもあるように、会社員は将来の私的年金目的で不動産投資をすることが多いため、目先のリターンよりもサブリースで収益の安定性を優先するケースが多い。

不動産投資と相性のいい人は?コツコツ派、情報収集派etc.

不動産投資が会社員に支持される理由を見てきたが、不動産投資がすべての会社員に適しているわけではない。相性がいいのは、以下の3タイプだろう。

不動産投資と相性のいい人1:コツコツ資産運用したい人

不動産投資は、毎月の家賃収入でローンを返済しながら少しずつ資産を形成していく方法だ。収益物件の価格が上昇すれば売却益も期待できるが、将来の資産価値を予測するのは難しい。

このような不動産投資の性格を考えると、短期間でリターンを狙うようなベンチャー株投資や先物取引などとは根本的に考え方が異なる。あくまでも「家賃収入でコツコツ資産形成」が基本だ。この基本を無視して売却益重視で不動産投資をすると、「失敗した」「だまされた」といった結果になりかねない。

不動産投資と相性のいい人2:経済情勢にアンテナを張っている人

不動産市場は、国内外の経済動向の影響を受ける。インフレ・デフレや金利動向も不動産価格に大きな影響を与える。

このように、不動産投資は経済と密接に関係している。特に不動産投資で規模拡大を狙っていくなら、経済情勢にアンテナを張っている人のほうが有利だろう。

不動産投資と相性のいい人3:粘り強く実行力のある人

収益不動産の運用自体は手間がかからないが、物件探し・運用・売却などフェーズで細やかな配慮が求められる。

投資するに値する収益物件を探すには根気が必要であり、有利な条件で融資を受けようとすれば複数の金融機関と交渉することも必要だろう。これらを踏まえると、粘り強く実行力がある人のほうが合っていると言える。

不動産投資をする会社員は増えるのか?

厚生労働省の調査によれば、副業をする会社員は2012年と2017年で比較して26.2%も増えている。年金不安・老後不安が強まっていることや、副業を認める企業が増えていることを考えると、副業をする会社員はさらに増えていく可能性が高い。

今後は、不動産投資により多くの会社員の参入してくる可能性が高い。自身の不動産投資業を本格的なビジネスに育てていきたい人は、ライバルが増える今後に備えてノウハウの習得を着実に進めていきたい。

文・本間貴志(不動産ライター)/MONEY TIMES

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