(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

オフィス
(画像=PIXTA)

本部が加盟店に対して縛るものを明確にする

たとえばコンビニチェーンは、どの店も同じ営業時間、同じ看板、同じ商品、同じユニホーム、同じ接客マニュアルで営業されています。これは本部からそのように縛られているためです。オーナーの裁量で変えることはできません。

フランチャイズの店舗に対してはこのように、本部から縛るものを明確にしておかないといけません。それがユーザーから見て「あそこの店にはいつもこの商品が置いてある」「あそこの店の接客態度はいつも好感が持てる」といった価値にもなります。

店舗ごとに値段が違ったり、置いているものが違ったりすると、多店舗展開するメリットが薄くなります。仕入れルートも店ごとに用意しないといけなくなるなど、個人商店の経営と変わらなくなってしまいます。

もちろんすべてを縛る必要はありません。賞味期限の近い商品を値下げしてもいい、地酒だけは各店舗が自分で調達して販売してもいい、共通のエプロンを付けていればその下は私服でもいい、といったように、縛らないものをつくってもいい場合もあります。

本部オフィスは質素にしよう

フランチャイズ本部をつくったら、「オーナーに対しても格好のつくようなオフィスにしたほうがいいかな」と思うかもしれません。受付があって、セキュリティも万全で、窓からの眺望も良好なオフィス。応接室には革張りのソファーや美術品なども置いたりして……。

何といっても「本部」なのですから、「それらしくしておきたい」「本部の人間も、気持ちいい場所で働いたほうがパフォーマンスが上がるはずだ」という考えもあるでしょう。

しかし、フランチャイズ本部を豪華にする必要は全くありません。築何十年も経過しているような古いビルでも清潔にしておけばいいと思います。

もっといえば、オフィスはなくたっていいのです。フランチャイズ本部は仕組みであり、実体ではないのですから、わざわざ新しいオフィスを構える必要はありません。創業時の登記の場所が自宅なら、自宅のままでも運営には問題ありません。

豪華な本部を構えてしまうと、やや面倒な問題が発生するリスクが高まります。それは、オーナーの嫉妬を買ってしまうというリスクです。嫉妬は、周りの人がコントロールできない人間の感情の中でいちばん厄介なものです。

自分たちの利益の一部をロイヤリティとして本部に納めているオーナーは、こう思うかもしれません。

「こっちが稼いだお金で、本部を豪華にしているのか」

一人でもそう思うオーナーが出ると、横のつながりでそのような不満が共有されてしまいます。

「たしかに、言われてみると、豪華すぎるな」
「そんなことにお金を使うくらいなら、加盟店が稼げるようにお金を使ってくれ」

最初は小さな声が、いつしか大合唱になって本部に押し寄せることもあります。

もちろん、どんなオフィスにしようが本部の自由です。ロイヤリティについても、もともと契約で決まっています。

それでも本部を訪問したオーナーがどう思うかを、一度考えてみたほうがいいでしょう。オーナーの士気を下げるようなオフィスは避けるべきです。

「でも、うちがちゃんと儲かっている会社であることを見せておいたほうが、オーナーも安心するのでは?」

という意見もあるかもしれませんが、それだけのお金があるのなら、加盟店オーナーの店舗の改善にお金をかけるべきです。本部よりも店舗に力を入れたほうが、オーナーがやる気になり、お客さまの受けも良くなります。それが最終的には、本部収益の向上にもつながるのです。

立地のいい場所にオフィスを構えよう

本部オフィスの建物や内装は質素で十分ですが、もし新たに構えるのであれば、立地にはこだわるべきです。当然賃料は高くなりますが、駅前などのいい場所で借りたほうが、後々メリットが得られます。

先ほど「本部にお金をかけないほうがいい」と言ったばかりなのに、「賃料は高くてもいい」と言うと、矛盾するように聞こえるかもしれませんが、安いだけがコストパフォーマンスにつながるわけではありません。お金をかけることで、全体のコストを下げられることもあるのです。その一つがオフィスの場所です。

いい場所にオフィスを構えたほうがいい理由は、「相手に来てもらえるから」です。

オフィスが駅から遠かったり、駅近でもビジネスの中心地から離れていたりすると、相手を呼びにくくなります。そうなると当然、自分が相手のほうに出向くことになります。

電車や徒歩での移動が多いと、時間のロスが大きくなってしまいます。車での移動は渋滞などで時間を読めないリスクも伴います。賃料が安くても、不便な場所ではこうした時間のロスが発生してしまいます。

フランチャイズ本部を運営すると、加盟店オーナー、オーナーになりたいと希望する人と面談をする機会が多くなりますが、そのたびに外出していては、1日3〜4人としか面談できません。立地のいい場所にオフィスがあれば相手に来てもらえるので、1日みっちりとスケジュールを埋めれば、10人以上と面談することも可能です。実際に私も、1日で12人と面談することがありました。

いい場所に本部があることは、加盟店オーナーにとっても「行きやすい」というメリットがあるので、問題にはなりません。

ビジネスのスピードを加速させたいのであれば、コストパフォーマンス(費用に対しての効果)をしっかりと考えて、なるべくいい場所にオフィスを構えるようにしましょう。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

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