(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
一人のオーナーに特例をつくらない
フランチャイズ本部運営の経営者が、オーナーの皆さんとの付き合い方で最も気をつけないといけないのは、「一人のオーナーに特例をつくらない」ということです。一人のオーナーに話したことは、他のオーナーにも広まります。「この人だけに」と思って話したことなのに、ほとんどのオーナーがそのことを知っていた。そんなことになれば、大きなトラブルに発展しかねません。
情報が筒抜けなのは、オーナー同士のネットワークが存在するからです。
もともと知らない同士のオーナーの皆さんも、同じ仕事の悩みを抱える仲間です。最良の相談相手は、自分と同じ加盟店オーナーということで、遅かれ早かれ必ずつながりを持つようになります。それは実際に顔を合わせるオーナー会議のようなものかもしれないし、SNSやネット掲示板を使ってのやり取りかもしれません。最近はLINEなどで簡単につながることもできます。
オーナー同士が互いに仕事の相談をするなどして、ポジティブな方向に向かってくれればいいのですが、それは本部側の願望でしかありません。実際には互いの不満を漏らしながら、ネガティブな力で結束を強めていくことがほとんどです。オーナーは本部に対して多かれ少なかれ不満を持っているものです。オーナーたちからすれば、本部のネタは共通の話題で、盛り上がりやすいのです。
オーナーのAさんとBさんとで、態度や話す内容を変えることもやめてください。
「私にはこんな厳しく指導してきたのに、Bさんには甘いじゃないか」
ということにもなりかねません。オーナー同士がつながっているということを、いつでも考えておくべきなのです。
「それならオーナー同士のネットワークをつくることを禁止にすればいいのでは?」
そんな意見もあるでしょう。しかし本部がそういったことを禁止することはできません。本部だからといってそんな権限はありませんし、仮に「オーナー同士は連絡を取らないようにしてください」とお願いしても、オーナー同士のつながりは必ず生まれるものだと思ってください。
不満は口頭ではなく文書で提出してもらう
オーナーから直接不満を言われた時に最初にお願いすることは、「文書にして提出してもらう」ということです。パソコンのテキスト文書でも構いません。口頭ではなく、文章でまとめてもらうことに意味があります。
人間は考えていることを文章にしているうちに、だんだんと頭の中が整理されます。感情的な怒りや不満のほとんどは、この作業でなくなると思います。感情的なものでない場合も、いったん文章にすることで、「そんなに大きな問題ではなかった」と気づくことが多々あります。あるいはそれ以前のレベルで、「わざわざ文章にするのは面倒くさいな」と文書にすることもなく終わることもあるでしょう。
不満を文書として紙にしてもらう段階を挟むことで、本当に意味のある声だけが本部に上がってきます。文書にするまでもない批判や不満を全部を受け止めていては、本来の業務に支障が出ますので、オーナーに「文書にして提出してもらう」ということをお願いしましょう。その際には、「本部でも一度内容を整理したいので」と、こちらが聞く姿勢を持っていることを示しましょう。
実際に文書をもらったら、「貴重なご意見、ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えることも忘れずに。この一言で、相手の不満は「意見」に変わります。不満を持っていたオーナーも、「自分は不満がある」という気持ちではなく、「ちゃんと意見を伝えた」という前向きな気持ちになれます。
役職で呼び合う
最近は役職のある立場の人に対しても、親しみを込めて「さん付け」で呼ぶ会社も増えてきました。
実は私たちも最初はさん付けで呼んでいましたが、フランチャイズ本部を運営するようになってから、役職で呼び合うように変えました。「○○オーナー」「○○工場長」「○○主任」「○○社長」といった具合です。さん付けも悪くないとは思うのですが、それぞれの立場や責任を明確にしておきたかったからです。
フランチャイズ本部と加盟店は、ピラミッド構造ではなく輪の構造です。輪の構造では、互いがパートナー関係にあり、対等な立場であることが尊重される一方、ともすれば立場や責任があいまいになりがちです。パートナー関係を友人のような関係と勘違いしてしまう人もいるので、立場や責任があいまいになることを避けたいのであれば役職で呼び合うようにしましょう。
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