(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

フランチャイズ
(画像=PIXTA)

フランチャイズとは
「ビジネスの仕組みを売るビジネス」

本書は私の経験したフランチャイズ本部運営のノウハウをまとめたものであり、経営の学術書ではありません。とはいえ、最低限の言葉の定義をしておかないと、フワッとした印象を持ったまま話が進んでしまうので、まずは「フランチャイズとは何なのか」という話から始めたいと思います。

ただし、私は「フランチャイジー」や「フランチャイザー」という言葉も最近知った身であるので、あくまで「経営者としての定義」であるということにご注意ください。「フランチャイズ」という言葉を『MBA経営辞書』(グロービス)で調べてみると、「フランチャイズ方式」として次のように説明されています。

「製品開発や販売などのノウハウを持った企業が、それらを使ったビジネスの特定地域における排他的営業権(フランチャイズ権)を、一定のロイヤルティ(royalty、実施料)に基づき認める仕組み」

実際に経営していた私の感覚でも、この説明で何も間違っていないと思います。ただ、少し回りくどいようにも感じるので、私は一言で、次のように定義したいと思います。

「フランチャイズとは、『ビジネスの仕組み』を売るビジネスのこと」

フランチャイズ本部運営は、モノやサービスを売るのではありません。ビジネスの仕組みを、事業を始めたい人や企業に売るのです。そうすることで事業がコピペされていき、事業の拡大が進んでいきます。

本書で定義しておくことはこのくらいです。それだけ重要なことでもあります。フランチャイズ本部を運営するということは、モノやサービスではなく、ビジネスの仕組みを売るということを常に心がけておく必要があります。これが絶対の正解というわけではありませんが、そのほうが、事業拡大は早く進むでしょう。

ちなみに本書では「フランチャイザー」「フランチャイジー」という言葉は、それぞれ「フランチャイズ本部(または本部)」「加盟店オーナー」と呼ぶことにします。

事業拡大する方法は3つだけ

フランチャイズ本部を運営することで、事業のコピペが可能になり、事業が拡大していく。事業拡大の方法は、実は一つではありません。

とはいえ、選択肢は限られます。事業を拡大する方法は、基本的には次の3つだけです。

①営業努力
②M&A(合併、買収)、業務提携
③フランチャイズ本部運営

私は本書の中で、③のフランチャイズ本部運営を推奨しています。①の営業努力や②のM&Aが悪いというからではありません。その2つの事業拡大方法は、ハードルが極めて高く、できる人が限られているのです。

まず①の営業努力による事業拡大は、「ものすごく大変」です。運も必要です。

1店舗の経営がうまくいったとします。そこから2、3店舗増やすくらいなら、「頑張れば何とかなる」という人も多いでしょう。しかし、5店舗から先に伸ばせるかどうかは、人との出会いやタイミングなど、運も必要になってきます。仮に営業努力と幸運で10店舗まで伸ばせたとしましょう。今度は10店舗の経営を維持するのが大変になります。10店舗もあると、経営者一人で全店舗を見ることは不可能です。細かいところに目が行き届かなくなるだけでなく、経営コストが膨らんでリスクも大きくなります。

営業努力で事業拡大を成し遂げる人がいないわけではありませんが、それは特別な才能と運を併せ持った稀なケースのため、多くの人が再現することは非常に難しいと思ったほうがいいでしょう。

②のM&A(合併、買収)は、多額の資金が必要な場合がほとんどです。自前でそれを用意できればまだいいでしょうが、借り入れをして資金をまかなった場合は、M&A後の事業がうまくいかなければ負債だけが残ってしまいます。

実際に私自身、M&Aにより事業拡大をおこなったこともありますが、資金の準備やノウハウ、人脈なども必要なため、起業してから年数の浅い経営者にはハードルが高いと感じました。すぐに始められるフランチャイズ本部運営と違って時間がかかるので、多くの人におすすめできる方法ではありません。

業務提携についても同様に、ノウハウや人脈などが必要なため、おすすめはできません。

③のフランチャイズ本部運営は、特別な才能、誰も真似できないようなとてつもない努力、多額の資金は必要ありません。ビジネスの仕組みを最初にしっかりつくることができれば、「持たざる者」にもチャンスが与えられます。3つの方法の中では、最も多くの人が対象となる方法といえるでしょう。

フランチャイズ本部と加盟店オーナーは対立するもの?

フランチャイズ本部に対して、皆さんはいろいろなイメージをお持ちかと思います。

しかし、世間の人たちに誤解されていることもたくさんあります。

たとえば、「フランチャイズ本部は大企業でなければできないだろう」という誤解です。すでに述べているように、資金の少ない中小企業や個人事業主でもフランチャイズ本部はつくれます。一人でも可能です。

「豊富な知識やノウハウがなければできない」というのも誤解です。難しい経済本、経営本を読まなくても、やるべきことを一つひとつ積み重ねていけば、フランチャイズ本部は完成します。

最近は次のようなイメージを持つ人も増えているかもしれません。

「本部と加盟店オーナーは対立構造になっている。本部は加盟店オーナーたちの利益を搾取し、加盟店オーナーたちは本部に対して訴訟を起こしたりSNSで本部の悪口を言ったりしている」

こういった負のイメージは、報道の偏りによって生まれている側面もあると思いますが、フランチャイズ本部運営で実際に起こりうることです。

フランチャイズ本部と加盟店オーナーの本来あるべき関係は、上下関係ではなく、パートナーとしての関係です。本書の序盤である今の段階ではまだきれいごとに聞こえるかもしれませんが、本部と加盟店オーナーがパートナーとして事業を進めることで、双方にとってメリットのある経営となります。逆に言うと、本部と加盟店オーナーがパートナーであるという共通の意識を持てなければ、対立の意識がいつ芽生えてもおかしくありません。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます