(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

商品
(画像=PIXTA)

【フランチャイズ化しやすい事業の条件1】
個人の能力やキャラで成り立っていないか

商品が売れるための要素は5つ。商品力、タイミング(時代背景、季節性、流行)、価格、利便性(場所、通販)、そして「人」です。

このうちどれが欠けても商売は成り立ちませんが、それぞれの割合は均等ではなく、ビジネスによって異なります。

たとえばコンビニエンスストアの場合、利便性が50、価格20 、商品力20、タイミング5、人5、といったところでしょうか。立地で勝負が決まるコンビニエンスストアは、利便性の割合が高くなるでしょう。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
(画像=元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術)

同じ業種でも、割合が異なる場合もあります。喫茶店がいい例です。

私はよく、打ち合わせで駅前の喫茶店を利用しています。特にそこの店のメニューが好きだからというわけではありません。理由は一つ、「駅前で便利だから」です。味や接客サービスに関しては、ほとんど気にしていません。

これも先ほどのコンビニと同様、「利便性」を売りにしたビジネスです。実際、都心の駅前では、喫茶チェーンの看板を見かけることがよくあります。

これが有名バリスタのいる喫茶店の場合、それぞれの割合は、人70、商品力10、価格10、タイミング5、場所5といった具合に、「人」の割合が高くなるでしょう。店が多少駅から離れていようが、お客さまは店がわざわざ足を運ぶ価値があると思っているので、立地条件はあまり関係ないのです。

フランチャイズ本部運営に向いているかどうかという観点でいえば、この5つの要素の中で、「人」の割合が低ければ低いほど向いています。誰が売っても同じ商品、同じサービスを提供できることが重要だからです。

あの大将が握った寿司が食べたい。あの美容師さんにカットしてもらいたい。あの大工さんに家具をつくってもらいたい。そういった「人」にお客さんが付く商売では、事業のコピペが難しいため、フランチャイズ化はとても困難です。

もちろん、どんな仕事も個々の能力差がありますが、作業を平準化していき、「人」に頼る部分を減らしていく必要があります。

飲食店であれば、店員の調理技術の差が出ないように、調理センターのような場所を設けてそこで一括して調理をおこない、店舗では加温のみで提供できるようにする。コーヒーはスタッフが淹れるのではなく、コーヒーサーバーのような機械を導入して、ボタン一つで誰でもおいしいコーヒーを提供できるようにする。そういったことで作業の平準化が可能となります。

個人の能力差は、フランチャイズ本部からはコントロールが難しく、作業が平準化されていないと、その能力差によって提供される商品、サービスにも差が出てしまいます。

皆さんがこれから始めようとしているビジネス、あるいはすでに始めているビジネスについても、それぞれの要素がどのくらいの割合になるか、考えてみてください。「人」の割合が高いようであれば、それを下げることが可能かどうかを検討し、場合によってはフランチャイズ化についても見直したほうがいいかもしれません。

【フランチャイズ化しやすい事業の条件2】
世間に周知された商品、サービスであるか

起業段階でフランチャイズ本部運営を視野に入れているのであれば、取り扱う商品やサービスは、すでに消費者に広く知られているものを選ぶべきです。

既成概念を破るような革新的な商品、サービスは、たしかに魅力的です。成功すれば話題にもなるでしょう。起業家として、世の中に新しい価値を提供するというやりがいもあるはずです。

そのようなチャレンジ精神を否定するわけではありませんが、「フランチャイズ本部運営に向いているかどうか」ということでいえば、世の中の多くの人が「知らない」という商品やサービスは、向いていないのです。

たとえば、これからラーメン屋さんを始めるとします。

「とんこつラーメンのお店を始めました!」

と宣伝すれば、とんこつラーメンが好きな人は集まるでしょう。それはとんこつラーメンがどんなものか、多くの人が知っているからです。

しかし、あまり一般的ではないもの、たとえばフルーティーなラーメン、チョコレート味のラーメンを始めたとしても、一般消費者にはそれがどんなものなのか想像もつきません。

1店舗だけならうまくいくこともあるかもしれませんが、多店舗展開となると、新しい店を出すたびにそのエリアで新しいラーメンを認知させることから始めなければいけません。広告を出す、自社のSNSで発信する、といったPR活動を精力的におこなえば認知してもらえるかもしれませんが、それが通用するのはそのようなPR情報に触れる機会のあった人にだけです。

とんこつラーメンであれば、店を開いたことだけ告知すれば、「今日はとんこつラーメンが食べたいな」というお客さまを呼び込むことが可能です。「●●ラーメンってどんなラーメンなの?」と最初から疑問を持たれるラーメンとは、スタート地点が違います。

新しい場所に次々に進出していくフランチャイズ本部運営で成功したいのであれば、「すでに知られている商品、サービスであること」は必須要件なのです。

【フランチャイズ化しやすい事業の条件3】
大手企業と差別化できる商品、サービスであるか

商品やサービスが大手企業と差別化されているということ。これもフランチャイズ本部運営を成功させるための必須条件といえます。同等の商品、サービスであれば、消費者は価格が安く、信頼もできる大手のものを選ぶからです。中小企業や個人事業主は、大手企業と同じ土俵で戦うべきではないでしょう。

たとえば学習塾をつくるのであれば、テレビCMを打って全国模試を実施しているような大企業と同じような立地、コンセプトで塾を開いても選ばれません。大手が進出していない地域で塾を開く、個別指導を充実させるなど、大手と差別化を図っていく必要があります。

私が経営していた豆吉郎の場合は、比較対象が近所のスーパーでした。スーパーには、100円以下で販売されている豆腐もたくさん並んでいます。価格競争では到底勝てないので、私はまずおいしさで差別化を図りました。おいしさにこだわるといっても私が豆腐をつくるわけではなく、原料の大豆ににこだわったおいしい豆腐をつくる業者から仕入れて、移動販売で玄関前まで届けるサービスを提供したのです。

しかしこのように、大手と差別化できる商品、サービスばかりではありません。

たとえば今から家電販売店を始めて、フランチャイズ展開していこうというのは難しいでしょう。家電販売市場は、量販店やネット販売が主流の時代です。町の電器屋さんはほとんど姿を消していますし、残っているお店も、売っている商品は基本的に量販店と同じものなので、価格では勝負になりません。

アフターサービスなどで差別化を図ることはできますが、多くの消費者にとって、それが商品価格の安さ以上の魅力になっているとは思えません。大手量販店にはないような海外メーカーの輸入家電を豊富に揃えるなど、一定数の消費者が興味を持ちそうなコンセプトのお店なら差別化も可能かもしれませんが、日本で認知されている海外メーカーは限られるので、1店舗展開は可能でも、多店舗展開は難しいといえそうです。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

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