(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

資金調達,クラウドファンディング
(画像=(写真=Prostock-studio/Shutterstock.com))

「事業のコピペ」は4つ目の資金調達手段

これから起業をする人や、事業を拡大したいという経営者は、「どこからどのように資金を調達するか」ということを考えないといけません。その資金で事業に必要な機材や車両を買ったり、事務所の賃料を払ったりするわけですが、一般的には次の4つが資金調達方法として挙げられます。

①個人資金
②借り入れ(親族または金融機関から)
③出資を受ける(投資家などから)
④フランチャイズ本部をつくり、加盟店を増やす

①個人資金が潤沢なら、経営者の悩みはそれほど深くないでしょう。ただし「個人資金はあるが手元の資金は減らしたくない」というのであれば、②借り入れや、③投資家などから出資を受けることで資金調達するという方法もあります。

ただし、借り入れには審査や返済義務があります。また、出資の場合、返済義務はありませんが、出資者からの声も聞かなくてはいけなくなるので、これまで自由にやってきた経営者にとっては少し息苦しい感じがするかもしれません。

自分の手持ち資金を減らさず、返済義務もなく、自分の納得できるルールをつくって、時間もかからない。その4つ目の手段が、事業をコピペするということ。つまり、④フランチャイズ本部をつくり、加盟店を増やすということです。

なぜ、フランチャイズ本部運営が資金調達手段の一つといえるのか。

一般的に、直営店を増やす時には、新しい機材、賃料、従業員への賃金など、会社の負担が増えます。しかし加盟店を増やす際には、契約次第でそれらを加盟店オーナーに負担してもらうことも可能だからです。それは実質的に、フランチャイズ本部が加盟店オーナーから資金調達をしているのと同じです。

ただし忘れてはならないのは、他人のお金を預かっているのだということ。自分のお金ではないので、ビジネスを成功させなければならない責任が発生します。

本部の設立自体はゼロ円でも可能

フランチャイズ本部というと、大きなビルのどこかのフロアに、人がたくさんいるようなイメージを思い浮かべる人もいるかもしれません。しかしフランチャイズ本部そのものは会社組織ではないので、事務所や登記が必要なわけではありません。

問い合わせ先だけ用意して「ここが本部です」と言えば、そこが今日からフランチャイズ本部です。必ずしも、目に見える形として、どこかに置いておく必要はないのです。

フランチャイズ本部の運営について、大きな資金を持っている大企業でなくてもできる、中小企業や個人事業主でもできる、ということを述べましたが、それはお金のかかるところがあまりないからです。

お金をかけたほうがいいものを一つ挙げるとすれば、本部とオーナーとの間で交わされるフランチャイズ契約書の作成費用くらいです。自分でつくってしまえばお金はかかりませんが、ここはとても重要な部分なので、プロに任せたほうがいいでしょう。弁護士に頼んでも、10万円前後で済むと思います。

契約書の作成を依頼した弁護士の先生は、その後も長くお付き合いしていくことをおすすめします。あなたが始めたビジネスのことをよく理解したうえで契約書を作成しているので、加盟店とのトラブルが発生した場合にも、親身になって相談に乗ってくれるでしょう。

経験の浅い起業家でも本部を運営できる

フランチャイズ本部の運営に、「経験やノウハウがないとできないのではないか」と心配される人もいるかもしれませんが、なくても問題はありません。

運営をしながら経験やノウハウを蓄積していくことはもちろん大切ですが、スタート時点では有無を問いません。ですので、まだ起業したばかりという人や、これから起業するという人でも、フランチャイズ本部の運営を選択肢の一つとして考えてみる価値はあると思います。

実際、私自身もフランチャイズ本部の運営をゼロから始めて事業を拡大しました。それが「未経験でも大丈夫」と言っている根拠の一つでもありますが、やはりそれなりに失敗もたくさん経験してきました。

とりわけ、加盟店オーナーが大量離脱した時は、精神的にはつらかったものです。しかし、フランチャイズ本部としてのダメージは限定的なものでした。先ほども触れたように、撤退による金銭的な負担増がなかったからです。

これがもし、社員の大量退職だったら大変なことになります。

いなくなった人員を補充するまでには時間もかかります。店舗は一時休業を余儀なくされるかもしれませんが、その間も賃料などのランニングコストはかかりますし、お客さんも離れてしまうかもしれません。加盟店であれば、最初の契約で維持費用を加盟店負担とすることもできますが、直営店の維持費用は会社が支払わないといけません。撤退する場合も、借りていた物件の原状回復が必要な場合は費用がかかりますし、辞めずに働き続けている社員の配置転換なども必要になります。

フランチャイズ本部運営であれば、直営店以外の閉店は、加盟店オーナーとの契約が終了することを意味します。それ以上でもそれ以下でもありません。本部として、オーナーとの解約手続き以外に「必ずこれをやらなければいけない」ということもありません。

このような理由から、加盟店オーナーに大量離脱されても、致命的なダメージはなりにくいということはいえますが、それまでの売り上げに戻していくのは大変なことです。またオーナー探しを始めないといけませんし、離脱されないようにこれまでのルールや会社のあり方を考え直す必要もあります。

リーダーシップ、マネジメントスキルは必要ない

フランチャイズ本部をつくることで、これまで以上に多くの人たちと関わるようになります。「オーナーが増えれば増えるほど、リーダーシップやマネジメントスキルが必要なのでは?」と考える人も多いでしょう。

そんな不安を抱える方に安心してもらえる(?)材料が一つあります。それは、フランチャイズ本部を運営してきた私自身が、起業するまでリーダーやマネージャー経験のない人間だったということです。

豆吉郎のフランチャイズ本部設立に至るまでの私は、会社組織で働いた経験はほぼありません。高校を中退しているので、最終学歴は中卒。一時期のMBAブームとも無縁で、自分で本を読む以外に、マネジメント論などをどこかで学んだということはありません。

フランチャイズ本部と加盟店を合わせた会社全体の構図は、ピラミッド型ではなく、輪の形となっています。もしピラミッド型であれば、本社と支社、上司と部下といった縦の関係が重視されるところですが、パートナー同士のフランチャイズ本部と加盟店は横の関係なので、リーダーシップやマネジメントスキルを発揮しなくても運営は可能なのです。

フランチャイズ本部に求められる役割は、加盟店オーナーに稼いでいただくためのサポートをすることです。「本部が上で、加盟店が下」という認識でいると、フランチャイズ本部運営は間違いなく失敗してしまいます。

「といっても、多くの人を束ねるのだから、学級委員長や部活の部長、サークルのリーダーみたいなことをやったことのある人のほうが向いているのでは?」

そう思われるかもしれませんが、そのような経験や適性も必要ありません。

大事なのは、よき相談相手となること。統率力とは無縁の非リーダータイプの人でも、オーナーとの一対一の対話で意思疎通ができていれば、事業を拡大していくことは可能です。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

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