(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

禁止事項
(画像=PIXTA)

本部と加盟店のフランチャイズ契約書をつくる

フランチャイズ本部として最初におこなう作業は、加盟店オーナーとの間で交わされるフランチャイズ契約書づくりです。くり返しになる部分もありますが、重要なステップなので改めて掘り下げましょう。

契約書は、自分たちがフランチャイズ本部であることを示す、数少ない物証の一つです。これしかないという場合もあります。この契約書にもとづいて、本部、加盟店がそれぞれ運営されることから、契約書はフランチャイズ本部運営そのものといっても過言ではありません。

契約書をつくる最大の目的は、「トラブルを起こさないようにするため」です。たとえば加盟店オーナーから急に「明日やめます」と言われたら、本部としては困ります。そうならないように、「契約の解除は半年以上前に通告しなければならない」などの解約条件や違約金を明記しておくのです。逆にフランチャイズ本部が急に明日、本部を閉鎖するとなれば、加盟店は困ってしまいます。契約書はお互いにビジネスのトラブルにならないように、守るべき内容を明記しておきます。

契約書は自分でつくることもできます。インターネット上にはフランチャイズ契約書のテンプレートがたくさんあるので、自分と同業種のテンプレートを見つけ、それをもとに自分なりにアレンジを加えればいいのです。ただ、契約期間や解約に関する取り決めについては、加盟店オーナーとのトラブルが起こりやすいので注意してください。契約書作成は弁護士に任せたほうがいいですが、自分でつくる場合も最終的には弁護士に確認してもらいましょう。

弁護士の先生とは今後長く付き合うことになるので、契約書作成の段階からお世話になっておいたほうが、その後もさまざまな場面でやり取りがスムーズです。特にオーナーとのトラブルや訴訟が発生した時には、法律の専門家の力が必要となります。その時になって慌てて弁護士を探しても、すぐに見つかるとは限りません。仮に見つかったとしても、こちらのビジネスをしっかり理解してくれるまでには時間がかかるでしょう。では、どのような弁護士に依頼すべきでしょうか。

費用を気にされる方もいると思いますが、弁護士に契約書の作成を依頼しても、金額は10万円程度です。また、3万円程度から顧問として入ってもらうことも可能です。このビジネスの根幹をなす部分をお任せしていると考えれば、決して高い金額ではありません。

弁護士選びで重視すべきポイントは、金額とは別にあります。私がこだわるべきと考えているのは、次の2つです。

①自分のビジネスへの理解を深めようとしてくれるかどうか
②話しやすいかどうか

まず、①について。

契約書は、経営者であるあなたと弁護士が、二人三脚でつくっていくものです。弁護士が経営者の考え方やビジネスモデルを理解していないと、その会社に合った契約書はつくれません。ネットで検索すれば、フランチャイズ本部運営に詳しい弁護士はいくらでも見つかります。そのような弁護士に依頼すれば、必要な情報をこちらから引き出してくれるでしょう。

②の話しやすいかどうかというのは、顧問になってもらった時に、相談しやすい方を選びましょう。

ちなみに、「裁判に強い弁護士かどうか」ということはあまり関係ありません。そもそも、どの弁護士が強いかどうかまでこちらで判断するのは難しいことですし、強い弁護士に頼んだからといって他の弁護士よりもいい契約書をつくってくれるとは限りません。自分や自分の会社に合う弁護士であることのほうが重要です。

ロイヤリティはどのように設定すべきか

フランチャイズ本部運営における「ロイヤリティ」とは、本部が加盟店からいただくお金のことをいいますが、「何に対するお金なのか」という定義があいまいなことも多々あります。定義があいまいだと、ロイヤリティの設定の根拠もあいまいになり、加盟店オーナーに「何のために払っているお金なんだ?」と思われかねません。ですからまず、それが何のためのお金であるかということを考えておきましょう。

一般的には、ブランドの看板を使う権利として、あるいはノウハウを提供する対価として、ロイヤリティをいただくことが多いと思います。看板やノウハウはフランチャイズ本部の商品ともいえるので、それに料金をつけてお金をいただくこと自体は問題ありません。実際に多くのフランチャイズ本部が、加盟店からロイヤリティをもらって運営しています。

ただ、私個人の考えとしては、ロイヤリティはいただかないほうがいいと思います。それは先ほどもお話しした通り、定義があいまいになりやすいからです。「看板代でこれだけかかります」と説明しても、多くの加盟店オーナーには分かりにくいでしょう。大手フランチャイズチェーンのように誰もが知っているブランドならまだしも、知名度の低いブランドで「看板代としていただきます」と説明しても、加盟店オーナーには納得してもらいにくいのです。

私のケースでは、ロイヤリティに相当するお金を、「事務手数料」としていただいていました。フランチャイズ本部は加盟店の経理業務なども請け負っているため、加盟店オーナーにも必要経費として納得していただける金額をいただいていたのです。私としてはここで利益を出そうという意思はありませんでした。その代わりに、加盟店が店舗で販売する商品をフランチャイズ本部から仕入れてもらい、フランチャイズ本部運営をビジネスとして成立させていました。

ロイヤリティをいただく場合は、その支払い方法についてもいくつか方法があります。大きく分けると、売り上げや粗利益の一定割合をいただく歩合制、そして毎月一定の料金をいただく定額制があります。

どちらにもメリット、デメリットはありますが、私の推奨は定額制です。歩合制だと、フランチャイズ本部が売り上げや利益の管理をしなければならないからです。フランチャイズ本部の機能をなるべくシンプルにするためにも、可能であれば定額制がいいと思います。

先ほどの「商品を仕入れてもらう」というやり方は、未来の売り上げを仕入れ量に応じていただくようなものなので、見方によっては歩合制に相当するものです。つまり私のやり方だと、定額制と歩合制をミックスさせることになります。少し複雑に思えるかもしれませんが、さまざまなものをひとまとめにしてロイヤリティとしていただくよりも、いただくお金を細分化して「何に対するお金なのか」ということを明確にしたかったのです。

「自分で事務処理をやってもこれだけの必要経費がかかるから納得できる」
「本部のサポートを考えれば、この割合の歩合制は妥当だ」

加盟店オーナーがそのように納得することが大事です。業種によって、「どこからいただくか」「どのようにいただくか」のベストの答えは異なりますが、加盟店オーナーの納得感を第一に考えるようにしましょう。

マニュアルは「禁止事項」を先に浸透させる

マニュアルの中身は、業種によって中身がまるで異なりますが、どの業種にも共通して次の2つのことが書かれています。

①「こうしてください」と指示するもの
②「これはやってはいけない」と禁止するもの

事業がまだ始まったばかりの頃は、②の禁止事項だけ決めておいたほうが、加盟店オーナーの皆さんはその制限以外の部分でのびのびとやってくれます。加盟店オーナーの長所を活かすという意味では有効です。ある程度規模が大きくなってきたところで、フランチャイズ本部から指示をする内容を追加していきましょう。

また、マニュアルは加盟店オーナーに渡しただけではなかなか浸透しません。その内容をフランチャイズ本部が言い続けて、初めて加盟店に定着していきます。重点項目については店舗の壁に貼ってもらうなどしましょう。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

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