(本記事は、宮嵜 太郎氏の著書『元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術――フランチャイズ本部のつくり方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

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(画像=PIXTA)

「黒字ビジネスモデル」であることを念頭に置く

フランチャイズ本部運営を考えている起業家が最初に目標とすべきは、事業のコピー元(マスター)となる店舗(営業所)を自分で経営して、黒字化することです。それも、ただ黒字化するだけでは足りません。将来的にそのビジネスの仕組みをパッケージ化して売れるように、統一されたノウハウやマニュアル、ロゴ、ユニホームなどをつくっておく必要があります。

黒字にすることはとても大切です。赤字では事業を続けていけないので、最低条件ともいえるでしょう。

しかし改めてここで大事なのは、フランチャイズ本部が売るものは、モノやサービスではなく、ビジネスの仕組みであるということです。このことを常に念頭に置いておかないと、黒字事業の創出に成功しても、その先の拡大で行き詰まってしまいます。

入金は1日でも早く、支払いは1日でも遅く

黒字事業をつくることは、フランチャイズ本部運営をするうえでの最初の目標となりますが、そこには落とし穴もあります。在庫の話でも触れた、「黒字倒産」です。

東京商工リサーチによると、2018年の倒産企業のうち、同社に3期連続で財務データのあった463社(個人企業を含む)中、黒字で倒産した会社は約48%もありました。黒字倒産は決して珍しくないということを表したデータといえます。

まだ起業されていない方の中には、「黒字を続けていれば会社は安泰のはずだ」と思う方もいるかもしれません。しかしそれは、正しい認識ではありません。会社は赤字になった時に倒産するのではなく、お金が回らなくなった時に倒産するのです。

「でも黒字を続けていれば、お金がなくなることはないのでは?」

と思われるかもしれませんが、入金と出金のタイミングによっては、黒字でも口座の残高が足りなくなってしまいます。

たとえば、商品を売った代金の振り込みが、2カ月後にあるとします。しかし今月中に仕入れの支払いが必要となると、口座にその分のお金が入っていないといけません。2カ月後にお金が入ってくる見込みがあっても、支払いのタイミングでお金がなければ、まさに黒字倒産となってしまいます。お金を借りたり、支払いを待ってもらったりすれば一時的にしのげるかもしれませんが、それができなければ信用を失い、倒産につながるおそれがあります。

黒字倒産を防ぐには、取引先に対して入金は1日でも早くしてもらい、支払いを1日でも遅くしてもらうことです。

入金を1日でも早く、というのは、相手先に「早めに入金してください」とお願いすることではありません。契約の段階で、なるべく早く入金してもらえる取り決めにしてもらうのです。支払いについても同様、なるべく遅い支払い期日にしてもらいましょう。

従業員の給与などについても、法律で決められた範囲の中で、なるべく遅い日にしたほうが会社のリスクを下げられます。会社によって、当月払い、翌月払いなど、決めていると思いますが、私も豆吉郎経営当時は月末締めの翌月25日払いにしていました。あとで給与の支払いを遅くするというのは通用しないので、最初に決めておきましょう。

予算は達成率より実績との差を追求することが大事

実際に事業を始めたら、必ず予算表をつくるようにしましょう。

当たり前のことを言っているようですが、実のところ「予算表をつくっていない」という経営者の方が少なくないのです。

「自分は予算表をつくらなくても大丈夫だ」と自信のある方もいるかもしれません。しかし、私が「予算表は必ずつくるべき」と考えるのは、メリットがあるからです。

そのメリットとは、経営者である自分のやみくもな行動を減らせる、ということです。

起業をしたら、多くの人はがむしゃらに働きます。それ自体はいいことですが、「がむしゃら」と「やみくも」は違います。ある程度の計画を立てておくことで、やみくもな行動を防ぐ効果があります。

予算表をつくるといっても、本格的な会計知識を駆使する必要はありません。エクセルのシートで、簡単につくったもので十分です。項目は、「売上」「粗利」「経費」「営業利益」の4つあればおおよその状況をつかめます。

予算を決めたら、今度はその目標に向かって動きます。目標達成のために、四苦八苦する方もいるでしょう。ただ、この目標は、達成できなくてもさほど大きな問題ではありません。

大事なのは、予算と実績の差を縮めていくことです。

たとえば予算が100万円の時に、150万円の実績が出たとします。「よかった」と手放しで喜んではいけません。それは目標設定を低く見誤っていたということになるからです。予算と実績が大きく離れていたのであれば、なぜ売り上げが多かったのか、少なかったのか、といったことを考えないといけません。

予算というものは、ただ達成すればいいのではありません。予算を見誤ったまま経営を続けていると、中期計画、長期計画にも影響します。

出てくる実績に近い予算を設定するためには、常に予算のことを意識しておく必要があります。といっても、それはなかなか難しいことなので、意識せざるを得ない状況を自分でつくり出す工夫をしてみるといいでしょう。

私の場合、予算表をいつでも持ち歩いていました。一枚の紙にまとめたものだから、スケジュール帳などに挟んでおけばいいのです。スマートフォンの壁紙にしたり、トイレの壁に貼ったりするのでもいいでしょう。ポイントは、その情報が無意識のうちに入ってくるようにすること。ここまでやっておくと、自分の行動すべてが予算に向かって進むようになります。

予算表の作成は、加盟店オーナーにも実践してもらってください。

予算表がないと、極端な話、

「最近、全然売れないんですよ」
「じゃあもっと頑張りましょう」

といった、ふわっとした抽象的な会話で終わってしまう恐れがあります。

共通フォーマットの予算表があれば、互いに数字を見ながら、具体的な会話ができるようになります。

元手10万円で100億円の売上をつくった事業のコピペ術
宮嵜 太郎(みやざき たろう)
V&Mパートナーズ株式会社代表。株式会社豆吉郎(現・西日本新聞社グループ)の創業者。1980年福岡県生まれ。2005年食品の移動販売会社「豆吉郎」を創業。西日本を中心に、フランチャイズモデルにて25営業所、移動販売車両125台を展開。全国最大の移動販売組織を構築、運営。2017年西日本新聞社に全株式を売却。2018年東京都内のベンチャーキャピタルに参画。2019年V&Mパートナーズ株式会社設立。次代の経営者育成に取り組む。

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