「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスの最新決算の数字が、非常に厳しいものとなっている。営業利益は前年同期比で98.2%減となり、同社は「いきなり!ステーキ」の大量閉店に舵を切った。その元凶は何か。

通期見通しを下方修正、25億円の赤字へ

いきなりステーキ,閉店
(画像=StreetVJ/Shutterstock.com)

冒頭紹介した営業利益の98.2%減という数字は、ペッパーフードサービスの2019年12月期の第3四半期連結業績(2019年1〜9月)におけるものだ。売上高は前年同期比で15.2%増の518億5,700万円と伸びたものの、営業利益は23億9,400万円から4,400万円まで縮小している。

これにより、四半期純利益も前年同期の11億5,600万円の黒字から19億2,200万円の赤字に転落した。通期の連結業績予測も下方修正し、当初の約15億円の黒字の見通しから一転、25億円の赤字を計上する見通しとなっている。

1995年8月に設立され、2006年9月に東証マザーズに上場、2017年8月には東証一部に上場したペッパーフードサービス。破竹の勢いでその勢力を伸ばしてきた同社にいま何が起きているのだろうか。

自社ブランド同士が競合状態に

決算資料を深読みしていこう。まず、ペッパーフードサービスの同期の売上高518億5,700万円のうち「いきなり!ステーキ」事業は442億2,200万円で、全体の85.2%を占める。つまり「いきなり!ステーキ」事業の成果が同社の決算に大きな影響を与えるということはおわかりいただけるだろう。

その「いきなり!ステーキ」事業で大きな失策があった。それが新規出店を進める中で自社ブランド同士の競合状態が生まれ、既存店の売上高が大幅に落ち込む事態が発生してしまったことだ。ペッパーフードサービスは新規出店計画を210店から115店に変更したものの、その状況が劇的に変わることはなかったという。

こうした事態を受け、同社は第3四半期の決算の発表とともに44店舗を閉店することを発表。同日時点で同ブランドの店舗数は484店舗で、約1割弱の店舗を閉店させることになった形だ。「近くのあの店舗も?」と閉店する店舗情報をネットで検索した人も少なくないだろう。

「いきなり!ステーキ」事業のセグメント利益は前年同期比51.9%減の17億5,800万円となり、閉店に伴う特別損失の計上によって前述の「98.2%減」という数字に至った。

復活の鍵は既存店の売上高の改善

「いきなり!ステーキ」事業の復活はあるのか。鍵となるのが、競合状態が解消された既存店の売上高が今後どれだけ改善していくかどうかだ。ペッパーフードサービスは昨年12月の新たな資金調達に関連するプレスリリースの中で、こうした点について触れている。

プレスリリース内での説明によれば、「いきなり!ステーキ」事業の10月度の既存店の売上高は前年実績比で58.6%だったが11月度は67.2%に改善しており、大量閉店を前にすでに売上が回復基調にあることを強調している。競合状態の解消がさらなる売上高の改善につながれば、業績の好転は決して夢物語ではない。

そのほか、店舗のリノベーションなどによる「魅力作り」やテレビCMなどを中心として広告戦略の強化、同事業で展開する「肉マイレージカード」のアプリ改修も進める予定のようだ。

消費者は節約志向、致命傷になりかねない戦略ミス

外食業界では個人の節約志向が顕著で、ペッパーフードサービス以外でも厳しい状況に置かれている企業が少なくない。そのような中では特に事業戦略の策定ミスが致命傷になりかねない。ペッパーランチサービスが事業戦略の方向転換によりどこまで業績を改善させるか注目だ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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