南米のベネズエラというと日本から距離的にも文化的にも遠い国のため、どんな国なのかイメージが湧きづらいかもしれません。学生時代に地理の授業で「世界有数の産油国」と習ったことを覚えている人も中にはいるのではないでしょうか。
そのベネズエラで1990年代から長らくハイパーインフレが続いています。単なるインフレではなくハイパーインフレという異常事態によってベネズエラの経済は疲弊し、国民生活にも重大な悪影響が生じているのです。
本記事では「ハイパーインフレのベネズエラでいったい何が起きているのか」「ハイパーインフレになるとどんな社会になってしまうのか」といった点を解説します。さらに資産家の人たちが大切な資産を防衛するための基本についても紹介します。
2019年1月の物価上昇率が年率約268万%というベネズエラの異常事態
インフレとはインフレーションの略で、貨幣価値が下がることで相対的に物の価格が高くなる現象です。その反対語はデフレ(デフレーション)で貨幣価値が高くなることで物の価格が下がります。日本は長らくデフレに苦しんできました。
一方ベネズエラのハイパーインフレは2019年1月に物価上昇率が年率約268万8,670%といった天文学的なレベルに達しています。
仮に1,000%のインフレになっただけでも現金の価値は10分の1です。現金の額面金額は変わりませんが1年で物価が10倍になるということです。これまで100円で買えたものが1,000円になるというイメージです。
それがベネズエラでは約268万%のインフレです。そのため銀行預金や現金が無価値になり、つい最近まで同じ値段で買えていたものがどんどん買えなくなっていきます。
当然ながら治安は悪化し首都のカラカスでは10万人あたりの殺人事件発生率が2016年92件、2017年89件、2018年81.4件と減少傾向となっているものの依然として世界最悪レベルです。
埋蔵量世界最大といわれる原油大国でなぜハイパーインフレが起きているのか
なぜベネズエラでこのようなハイパーインフレが起きてしまったのでしょうか。ベネズエラは原油の埋蔵量が世界最大であるといわれるほどの資源大国です。潤沢なオイルマネーが豊かさをもたらすことは、中東の産油国を見ていてもイメージしやすいでしょう。
しかしベネズエラではこの石油依存が逆にマイナスに働いてしまい精製技術すら他国に依存していることが経済成長を阻んでしまいました。過度に原油に依存した経済構造のため、リーマンショックなどによる原油価格の乱高下による影響がベネズエラ経済を幾度となく直撃しました。
ベネズエラの通貨であるボリバルは信用力を失ってしまった結果、為替市場で暴落が続きハイパーインフレの引き金を引くこととなったのです。それでも原油が産出されているうちは産業が存在します。
しかしアメリカ発の「シェール革命」がさらなる原油価格の下落を招き、これがベネズエラ経済にとどめのような打撃を与えてしまったといわれているのです。
ベネズエラの現状から資産家が学ぶべきこと
ベネズエラで起きている惨状は日本から見れば「遠い国の出来事」かもしれません。しかしこれまでの経緯から資産家の人たちが学ぶべきポイントがいくつかあります。
ベネズエラ経済は原油という単一の資源、産業に依存し過ぎたことがリスク要因となり、そのリスクが原油価格の下落という形で顕在化しました。特定の資産への集中投資、保有はリスクが高く推奨されていません。ベネズエラは国家レベルでその危険性を証明してしまったといえるでしょう。
投資対象を分散することでリスクを分散することは、基本中の基本です。ベネズエラにも資産家は当然いるわけですが、彼らが保有していたボリバルの現金資産は紙くず同然になってしまいました。
インフレ局面では自国通貨以外の資産価値が高くなるため、不動産や金、外貨などでヘッジをしておけば資産減少を防ぐことができます。分散投資は投資リスクの分散だけでなくインフレなど大きな経済の変動に対する資産防衛術としても有効なのです。(提供:YANUSY)
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