日本のお家芸「ものづくり」のルーツともいえる特別展「江戸ものづくり列伝 -ニッポンの美は職人の技と心に宿る-」が2020年2月8日~4月5日まで江戸東京博物館で開催されています。豊かな遊び心と繊細な美意識が宿る日本のものづくりに生きた5人の職人をピックアップ。特別展では、この5人の名工にスポットを当てて江戸の美を追求しています。

文化交流の中で培われた、江戸人の粋と遊び心に満ちた蒔絵作品

江戸のものづくり
(画像=ys531/Shutterstock.com)

日本の伝統美術は、人々の四季の暮らしと共にありました。生活で使われる建具や調度品は、人々に彩りを与えたのです。開国後に日本を訪れた西洋人は、こうした工芸品に秘める日本人の美意識に驚きました。その日本の美を生み出してきたのが、ものづくりに生きる職人たちです。まず近年世界的に注目されている2人の蒔絵師を紹介します。

原羊游斎(はらようゆうさい)

蒔絵とは、漆で模様を描き漆が乾かないうちに金粉をまいて漆に装着させる技法です。「金をまく」ことから蒔絵と呼ばれています。原羊游斎(はらようゆうさい)は、現代でいうファッションブランドのように、その名が知られていた人気蒔絵師でした。江戸琳派の創始者・酒井抱一(さかいほういつ)の下絵を元に制作した共同作品が多数残されており芸術家同士の交流をうかがい知ることができます。

展示の『蔓梅擬目白蒔絵軸盆』は、酒井抱一との共同作品で巻物を置くためのお盆です。巻物を置くためだけに作られたお盆であるはずなのに、巻物とお盆のどちらが主役かわからなくなりそうなほど存在感を放っています。人気者同士ということでその数々の作品はさらに人気が出ました。

柴田是真(しばたぜしん)

柴田是真(しばたぜしん)は、蒔絵だけでなく漆絵・絵画などにわたり独創性や技術力を発揮。幕末明治にかけて国際的な人気を博しました。各種生活調度品や刀装具、櫛など、あらゆる分野で一流品を作り続け、1890年には帝室技芸員にも任命されました。『漆絵 花瓶梅図』は木制の額縁に見えますが、実は紙と漆でできているいわゆるだまし絵です。どう見ても木に見えるというテクニックは一見の価値あり。

幕末から昭和初期まで続いた彫金師と軍艦の建造も手がけた鬼才

府川一則

府川一則(ふかわ かずのり)は、幕末から昭和初期まで三代続いた彫金師です。初代和則は葛飾北斎の晩年の弟子で絵師から金工師に転身しました。幕府・諸侯や皇族の注文を受けて主に刀装具を手がけました。展覧会では、初公開されるという府川一則の知られざる生涯とその作品に注目です。

三浦乾也

三浦乾也(みうらかんや)は、若くして陶芸家の道を歩む一方で絵や蒔絵、彫刻にも才能を発揮し、さらには軍艦の建造も手掛けた鬼才の持ち主です。

その後、江戸向島で窯を築き根付、印籠、帯留めなどの創作に励みました。三浦乾也の章では隅田川流域で栄えた焼き物と陶工の軌跡にもスポットを当てています。

玩具の域を超えた「ミニチュア工芸」

小林礫斎

日本人は、小さなものへの思い入れが強かったようで時代ごとにさまざまなミニチュアが作られてきました。小林礫斎(こばやしれいさい)はそんな超細密工芸いわゆるミニチュア工芸を極めた江戸の職人気質を受け継いだ大正~昭和に活躍した名工です。礫斎は、「素材にこだわり実物を忠実に極限まで小さくする」「随所に隠された驚くべき仕掛け」が特徴。

そんな礫斎の作品は、ミニチュア玩具の域を超え独自のジャンルの美術工芸品として位置づけられます。礫斎の生み出した「細密であるのにスケールの大きな世界観」を江戸東京博物館が所蔵する作品で堪能できます。作品の随所に存在する仕掛けとは何でしょうか。拡大ルーペを持参して目を凝らして鑑賞してみましょう。(提供:JPRIME


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