消費者との接点を増やし、潜在的ニーズをつかむ

ピップ,松浦由治
(画像=THE21オンライン)

――広報宣伝にも力を入れると聞いています。

松浦 広報宣伝を担当していた課を部に昇格させたのが、組織再編の2点目です。当社の商品、また会社自体を、より多くの人に深く知っていただくためです。

――エレキバンなどは、すでにかなり知名度が高いと思いますが……

松浦 昨年6月1日に外部からCMO(グループの持株会社であるフジモトHD〔株〕の久保田達之助CMO)を招いたのですが、彼が最初に言ったのが、「せっかく知名度が高いのに、広報活動に力を入れていないのはもったいない」ということでした。

エレキバンは、確かに名前を知っていただいている方は非常に多いのですが、若い方には使ったことがない方が多いんです。10年先、20年先を考えると、若い新規ユーザーを獲得することが必要です。

そこで、昨年は、赤ちゃんを産んだお母さんをターゲットにしたプロモーションを行ないました。育児で疲れるのですが、授乳をするため薬を飲むことができず、赤ちゃんを抱くので、臭いがする湿布も貼れない。そこで、エレキバンを使っていただこうと考えたのです。

パッケージのデザインを変えたり、商品自体の色を黒から目立ちにくいグレーに変えたり、子供がむやみに開けられないパッケージにしたりして、ドラッグストアなどのベビー用品売り場に置いていただいたところ、非常に好評でした。赤ちゃん本舗でも、10店舗でのテスト販売から始めたのですが、反響がよく、全店展開していただけることになりました。

今放送しているエレキバンのテレビCMも、若い女性をターゲットにしていて、良い反響をいただいています。

――CMOを外部から招いた理由を教えてください。

松浦 2年前から、会長(藤本久士氏/フジモトHD社長)が「消費者起点のマーケティングカンパニーになろう」と言っていたのですが、社内にはマーケティングを専門的にやってきた者がいなかったので、社外で探していたのです。

当社では、通常、中途採用は2~3カ月かけて選考を行なうのですが、今回のCMOの採用は異例の2週間で行ないました。化粧品会社でマーケティングをしていた経験はもちろん、発想力も素晴らしいし、考え方も私たちと合っていたからです。会長とも、すぐに意気投合しました。

――消費者起点のマーケティングとは、どのようなものなのでしょうか?

松浦 まず、消費者の潜在的なニーズをつかむ。そして、消費者に一番喜んでいただける形で、商品に具現化する。さらに、そんな商品があることを知っていただくための情報発信をする、ということです。

CMOには、社員に向けて「マーケティングとは何か」についてオリエンテーションもしてもらい、1年ほどかけて、社内にマーケティングの土台ができたのではないかと思います。

――潜在的なニーズをつかむというのは、なかなか難しいことだと思います。どのようにしてつかもうとしているのでしょうか?

松浦 CMOは早稲田大学や明治大学でも教えているので、若い方たちの感性に触れています。これも、従来は当社が持っていなかった消費者との接点の一つです。

また、ドラッグストアの主催で、様々なメーカーや卸売業者がブースを構え、来場者に商品の説明や販売をするイベントが各地で行なわれているのですが、そこに当社のマーケティング担当者も参加して、消費者と直接接点を持つようにしたいと考えています。これまでは営業担当者しか参加していませんでした。

その他、アンケート調査や実際に商品を使っていただいてのグループインタビュー、お客様相談室に届いた声の共有など、これまでしてきたことにも、さらに積極的に取り組んでいきます。

――情報発信については、どうでしょうか?

松浦 中学校や高校をまわって、部活をしている生徒たちにサポーターの使い方やテーピングの仕方を教える講習会を始めました。昨年度は7校を訪ねて、308名に教えました。

テーピングの講習会は、東京、大阪、名古屋ウィメンズの国内3大マラソン大会のエキスポでも開いています。1回の出展で約1,000人の方に参加していただいています。

これらは、規模は小さい活動かもしれませんが、ファンを作るために重要な活動だと考えています。他の商品でも同様の活動をしたいと思っていますし、これはまだ先の話になるかもしれませんが、一つでいいので、実店舗を持ちたいとも思っています。売上げを立てるためではなく、消費者との接点としての店舗です。