訪日外国人観光客の増加で民泊事業のチャンスと考える不動産オーナーも多いのではないでしょうか。しかし実施するには年間180日までという営業日数の規定があります。もし規定の180日を超えて営業したらどうなるのでしょうか。今回は民泊をとりまく状況と民泊新法の180日ルール、そしてこれらに関連してカプセルホテルのメリットについても解説します。
外国人観光客の増加で民泊事業に追い風
はじめに訪日外国人観光客の現状を確認しておきましょう。日本政府観光局が発表したデータによると2019年1~11月までの訪日観光客数は累計で2,935万5,700人と前年比2.8%の増加です。日韓関係の悪化で韓国からの旅行者が大幅に減っている中での数字だけに、価値があります。年内には3,000万人突破は確実で訪日観光客数は順調に拡大しているといってよいでしょう。
このように民泊事業にとっては追い風が吹いていますが、営業する場合は2018年6月15日に施行された民泊新法に規定されている「営業日数」について把握しておくことが必要です。
民泊新法の180日ルールとは
民泊新法の正式名称は「住宅宿泊事業法」です。民泊新法には営業日数について住宅宿泊事業法第2条2項の3で「人を宿泊させる日数として1年間で180日を超えてはいけない」という180日ルールが規定されています。
この場合の1日のカウント方法は「正午を起点として1日目の正午から2日目の正午まで宿泊した場合」が1日となるため注意が必要です。このため実際の宿泊時間が24時間であっても、「14時にチェックインして翌日の14時にチェックアウトした場合」は正午を過ぎているため、2泊として計算しなければならないので注意しましょう。
民泊を180日を超えて営業したらどうなる?
民泊の1年間の営業日数は「毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までの期間中における180日間」ということになります。
オーナーが気になるのは、180日を超えて営業してしまった場合どうなるか?ではないでしょうか。2017年12月に厚生労働省および国土交通省で策定された「住宅宿泊事業法施行要綱(ガイドライン)」によると、180日を超えて営業した場合は、「住宅宿泊事業」に該当せず「旅館業」に該当するという見解です。
180日を超過した日数には旅館業法第10条第1項が適用され、「第三条第一項の規定に違反して同条同項の規定による許可を受けないで旅館業を経営した者」に該当することになります。刑罰は6ヵ月以下の懲役または3万円以下の罰金です。つまり民泊としてはじめたとしても180日を超えて営業した時点で旅館業を営んだと判断され、旅館業法において罰則(無許可営業)を受けることになります。
カプセルホテルの特徴とメリット
外国人観光旅行客にとっては、民泊の補完的役割を果たす施設としてカプセルホテルも有力な選択肢になります。カプセルホテルの最大のメリットは、宿泊費が格段に安いことです。同じ東京・新宿の立地でビジネスホテルが4,000円台中心なのに対し、カプセルホテルは2,000~3,000円台で宿泊することができます。
アクセスが良い立地にあることも観光客にとって魅力でしょう。カプセルホテルは終電を逃がしたビジネスマンが客層の中心のため、駅前や駅チカに立地している施設が多い傾向です。深夜でもチェックインできるため、いざというときの保険と覚えておくと便利でしょう。何より「観光にお金を使うため宿泊費を抑えたい」という人にはコスパの良い施設といえるでしょう。ただし、体格の良い外国人にとっては「スペースが狭い」「一般ホテルのような静けさがない」という点は気になるかもしれません。
カプセルホテルは、ホテル業を目指すオーナーにとっては開業しやすい点はメリットです。カプセルホテルの初期投資の大半は内外装費であり一般ホテルのような備品費は極めて少額で済みます。運営費用が一般ホテルに比べて少ないことから比較的短期間で黒字化できる見込みがあることも、オーナーにとっては魅力です。
「手軽な民泊の経営を選ぶか」「カプセルホテルの開業を目指すか」は、オーナーの事業方針や予算によって異なります。東京五輪・パラリンピックを中心とした千載一遇のチャンスをぜひ生かしたいものです。(提供:ビルオーナーズアイ)