年の功を活かして上司とチームの橋渡し役になる
もちろん正攻法で成果をあげることも大切ですが、それでもダメなら搦手から攻めるのもありです。上司がゴマをする部下ばかりを重用するのであれば、ゴマをすればいいのです。それによって、やりたい仕事ができ働きがいを感じられるなら、なんてことはありません。キャリアを重ねたミドルならその程度の老獪さはあってしかるべきでしょう。
部下に理不尽な要求をしてくる上司に対しても、「上司も上に無理を言われて苦労しているのだろう」と理解するスタンスで接すれば、年の功を活かし、上司とチームとの間に立って相談に乗る役割を担うことができるかもしれません。上司(顧客)を研究すればするほど、作戦の数は増えていきます。
そして、どんなに気に入らない上司であろうが、自分に対する評価の言葉は謙虚に受け止め、自分を振り返る材料にすること。これも顧客からのクレームと考えればいいのです。理不尽に思えるクレームにも一抹の真理はあるものです。すべては、自分に対するありがたいフィードバックです。素直に耳を傾け、自分自身の改善に活かしたほうが、どう考えてもプラスです。
また、逆に捉えれば、どんなに批判的な評価であろうと数あるクレームの一つと考えれば気が楽になります。たかだか一つのクレームに人の全人格や全存在を否定する力はありません。「そういう見方もあるのか。参考にしよう」と客観的に冷静に受け止めればいいのです。
実際に独立・起業すれば、難しいタイプの顧客との関係構築に苦労する局面も必ず訪れます。自律型人材を目指すあなたにとって、合わない上司がいることは、さらに自分を磨くためのチャンスとも言えるのです。
前川孝雄(まえかわ・たかお)
〔株〕FeelWorks 代表取締役/青山学院大学兼任講師
1966 年、兵庫県明石市生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒。〔株〕リクルートで『リクナビ』『就職ジャーナル』などの編集長を務めたのち、2008 年に〔株〕FeelWorks 設立。「上司力研修」「50 代からの働き方研修」などで400 社以上を支援。2017 年に〔株〕働きがい創造研究所設立。〔一社〕企業研究会研究協力委員、ウーマンエンパワー賛同企業審査員なども兼職。独立直後には、「700 通の挨拶状を送るも反応ゼロ」「仕事の依頼がなく近所の公園で途方に暮れる」といった挫折を味わう。そこから立ち直った経験から、近年はミドルの転職・独立・定年後のキャリアの悩み相談に乗る機会も多い。著書は、『上司の9割は部下の成長に無関心―「人が育つ現場」を取り戻す処方箋』(PHPビジネス新書)、『「働きがいあふれる」 チームのつくり方』(ベスト新書)、『「仕事を続けられる人」と「仕事を失う人」の習慣』(明日香出版社)、『もう転職はさせない! 一生働きたい職場のつくり方』(実業之日本社)など多数。(『THE21オンライン』2019年12月17日 公開)
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