(本記事は、細入 徹氏の著書『将来の年金不安を解消したいなら今すぐiDeCo・つみたてNISAをはじめなさい』自由国民社の中から一部を抜粋・編集しています)

ハイリスクからローリスクまでさまざま!

■ 債券って、こんなに安定していたんだ!

それぞれのグラフから、変動の激しい株式だけが投資ではないこと、そして中長期的な実績で言えば、例えば日本債券なら、どの月から積立投資を始めた場合でもほとんど約2%の利回りを示していました。このように、投資が即ハイリスクと決めつけるものではないことが確認いただけたでしょうか。

それにしても積立投資を中長期的に見る限り、過去の日本債券市場は定期預金よりも、はるかに安定的に利回りを確保できていたことが見て取れます。銀行も皆さんから預かった預金の多くを債券で運用しています。銀行という膨大なコストがかかる中間業者を介在させることで元本を保証してもらう代わりに極めて低い金利で我慢するか、それとも自分で直接、債券の投資信託を買って遠い将来に備えるかは皆さんの考え方次第です。短期に必要とするお金か、長期で準備していくためのお金かによっても対応が違ってくるでしょうね。

■ 短期の利回りは無視してください

最初に一つお断りしておきますが、比較的短期の利回りデータ(グラフの右端に近い部分)は計算上、ちょっとの変動で上下に激しくブレて表現されるので無視してください。あくまで中長期的にどうなっているのかという視点で捉えてくださいね。

その一例として、前ページ図表2-5の日本債券の積立の場合のグラフ(下段の左のグラフ)を見てください。2年ほど前以内から積立を始めたケースでは、ちょっとした市場の値動きの結果、2017年の9月末までの利回りを年率で換算したグラフ(丸で囲ってある部分)はとんでもない利回りになっています。

一方、図表2-6は2017年2月末までのグラフですが、この時点までの利回り(丸で囲ってある部分)は逆にマイナスになっています。

このように、短期のデータはその時々の状態で激しく上下しますが、でもどちらのグラフでも中長期の利回りはほとんど同じ傾向になっています。

■ 内外の株式と債券、それぞれのグラフを説明します

(1)内外の株式市場

38頁の図表2-2は外国株式市場の推移です。中段のスポット投資の図は、例えば1995年1月に投資していたら、現在9.6%の年利回りで資産が増えていることを示しています。

つまり横軸が投資をはじめた時期、縦軸はいまどれぐらいの利回りになっているかを示しています。価格が上がったり下がったりしていますから、当たり前な話ですが、投資した時期によって利回りが大きく違ってくる様子がわかります。

下段の積立投資の図は、例えば1995年1月から積立投資を始めていたら直近で8.1%の利回りになっていることを示しています。積立投資の場合は、毎月買い付けているので上下のぶれが少なくなだらかになっています。

さて、これらの図は今の時点でどんな利回りになっているのかを月単位で示していますが、相場は毎日変動します。来月は急騰しているかもしれないし暴落しているかもしれません。それに伴って利回りのグラフも全体的に上下に大きく変動します。右側の図に示すようにリーマンショック後のどん底だったら、多くの期間でかなりのマイナス状態に陥っています。

このように、株式は騰落が激しいので大きな利回りが期待される反面、大きな変動(リスク)をあわせ持っていることがわかります。いわゆるハイリスク・ハイリターンですね。

図表2-3は、日本の株式市場を示しています。37頁の図表2-1と見比べてみると、目盛りの関係で、外国株式市場の方がずっと変動が激しいように見えますが、実は日本株式市場の方が毎月の変動がやや激しいのです。日本株式市場はバブルの崩壊以降、長い期間右下がりを続けてきましたのでリーマンショックの直後に解約しなければならなかった人や、確定拠出年金で言えば受給開始に近い人、受給中の人は悲惨でしたね。積立の場合も目を覆いたくなるような惨状ですが、実は、将来のために今積み立てている最中の人には、リーマンショックのような状態は人生でもう二度と味わえないくらい美味しい時期だったと言ったら信じられますか?このことは第3章でお話しします。

(2)内外の債券市場

40頁の図表2-4は、外国債券市場(米国を中心とした、主に先進国の国債の市場)です。特に積立投資の場合はかなり安定的だった様子が見てとれます。外国市場に投資する際は円を外貨に換えたのちに買い付けることになります。外国債券はドルで実績をみると、かなり安定的に右上がりに推移していたのですが、円に戻して価格を評価するので為替の円高、円安の影響で上下にブレてしまいます。リーマンショックのあとは、他国が金融緩和するなかで現状維持の日本が円高で取り残された結果、外国債券価格が大幅に下落している様子が見て取れます。

41頁の図表2-5は日本債券です。下段の積立投資に着目してください。過去30年、360ケ月以上、どの月から積立を始め出したケースでもほとんど2%前後を固く維持しています。リーマンショックまででも、安倍政権スタート前後まででも、毎年どこでチェックしてもほとんど同じ結果です。

2016年の前半にかけて、マイナス金利政策で債券価格が異常に急騰(ここでは詳しい説明は省きますが、金利と債券価格は逆に動くので、ゼロ金利政策下で金利が下がったため債券価格は高騰)した時期は、過去からの利回りが2%から全体的に2.5%に跳ね上がりましたが、現在の市場は落ち着きを取り戻しています。

■ 過去の実績はあくまで参考資料、私たちが投資する先は未来

私たちは将来に向かって堅実に資産づくりをしていく訳ですから過去はあくまで参考にしかなりません。「日本債券は今までいくら安定的だったとは言え、一つの分野に全部の資産を預けるのはリスキーだ。やっぱり性格の違う商品を組み合わせたい」と考える人もいるでしょう。「日本債券が安定的だったことは良くわかる。でも、ライフプランを立てたら2%ぐらいでは老後が作れない。リスクをとってももう少し高い利回りを期待しないと……」という人もいるでしょう。人それぞれの考え方や事情で、これらの商品をどう選択しどう組み合わせていくか、これが本書のこれから目指す最大のテーマです。

以上、本項では株式だけが投資ではないこと、そしてハイリスクだけが投資ではないことをお伝えしたかったのですが、ご理解いただけたでしょうか。

将来の年金不安を解消したいなら今すぐiDeCo・つみたてNISAをはじめなさい
細入 徹
1級DCプランナー、中小企業診断士。一般社団法人確定拠出年金アドバイザリー協会代表理事、細入事務所代表。大学卒業後エレクトロニクス、出版を経てFP業界で大手中堅生保各社を対象にソフト開発に従事。平成10年に事務所開設。平成29年11月に社労士、公認会計士等と一般社団法人を設立し、中小企業向けの確定拠出年金の普及と確定拠出年金加入者の8割・9割が堅実に運用を始め出すライフプラン・投資教育の普及、及び退職金・企業年金制度の総合サポートに注力中。広く講演活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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