「昨年までの当たり前が今年は通用しない」ほどの市場の激しい変化は、一企業の努力だけではどうにもならない。今後AIや5Gなどの新技術が飛躍的に発展すれば、インプットからアウトプットまでの速度をどれだけ改善したとしても、それ以上のスピードでマーケットにイノベーションが起こるだろう。
そうなれば、今までのやり方で競争優位性を維持することは難しくなる。「今までのやり方は、アップデートされることを前提とした最善策である」という認識がなければ、いつ、どこで、何が起こるかわからない市場の不確実性に対応することはできない。
この問題を解決する手段のひとつに、「合弁会社の設立」がある。複数の会社が経営資源を融合させることで生まれるシナジー効果は事業領域を拡大するだけでなく、市場の構造転換に対する適応力の向上につながる。この記事では、合弁会社のメリット・デメリットから設立方法までを詳しく解説していく。
目次
合弁会社(ジョイント・ベンチャー)とは?
合弁会社は、「ジョイント・ベンチャー」とも呼ばれる。日本の会社法には、「合弁会社(ジョイント・ベンチャー)」という概念は存在しない。その形態は、以下の2つに大別される。
①複数の企業がパートナーシップを結び、共同出資によって新しい会社を設立する。
②既存企業の株式を買収して、共同経営を行う。
合弁会社の設立は、資金だけでなく、技術やノウハウ、人材などの経営資源を共有することで新規市場の開拓を目指す合理的な経営戦略のひとつである。事業規模の拡大や経営の多角化を図る上でも、事業性質上相性の良いパートナーがいれば、大きな利益を生み出す可能性がある。
日本で合弁会社が設立されるようになった背景のひとつとして、外国企業単独での企業設立を禁止している国への進出が挙げられる。現地企業と共同出資して合弁会社を設立することで、そうした国への進出が可能になるのだ。現地企業と協力するメリットは海外進出だけではなく、国独自のルールや法律、習慣への対応もある。このように海外でのビジネスは「日本の常識」が通用しないことが多い。
かつては、日本も「外資法」という法律で外資の100%出資による会社設立を認めていなかった。その際、海外から日本に進出する企業もまた日本企業と共同出資して合弁会社を設立している(外資法は1980年に廃止)。
合弁会社の出資比率
合弁会社の出資比率は、各企業が出資する割合を意味する。例えば「各企業が共同出資により新しい会社を設立する」「既存企業の株式を買収して共同経営を行う」といった場合でも合弁会社を経営する際は、出資割合がイニシアティブを握る要素となる。そのため合弁会社の出資比率は大きな意味を持つことになるのだ。
株式会社であれば出資割合に応じて議決権が与えられるため、出資比率が高いほど共同経営を行う企業にとっては優位となる。出資比率を均等にするケースもあれば、出資比率が低い企業が経営に参加できるように拒否権付き株式などの種類株式を発行する方法などさまざまだ。会社が持分会社であれば出資者である社員は、誰でも業務執行権を持つ。
業務執行の意思決定も社員の頭数による過半数で行うため、表面上は、出資割合は大きな問題にならないかもしれない。しかし出資比率が異なれば心理的な優位性は何かしら発生するだろう。
他の法人形態との違い
会社法が定める会社とは、「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の4つを指す。合弁会社というものはない。合弁会社は共同出資により成り立つ会社であり、会社法で定める4つのうちのいずれか一つの形態を選択せざるを得ない。
株式会社は、原則出資割合に応じて議決権が与えられ利益配当が行われる。株主はすべて有限責任であり、出資した資金以上の責任を取ることもない。合名会社は、出資者である社員が全員無限責任を負うことになる。そのため会社が債務を弁済することができなければ、社員が個人の財産で債務を弁済しなければならない。合資会社は、無限責任を負う社員と有限責任社員の両者が存在する。また合同会社は、持分会社の性質として出資者が業務執行権を持ちながら株式会社のように出資者が有限責任となる性質を持つ。
合弁会社を設立する場合には、実務的に出資者が有限責任となる株式会社か合同会社を選ぶことが多いだろう。
合併や提携との違い
合弁会社の目的が共同経営と考えるとM&Aで見られる合併や業務提携と近い考え方もできる。実際に既存会社の株式を買収して共同経営を行うのは、M&Aと考えていいだろう。合弁会社のオーソドックスな設立方法は、複数の企業が出資し新会社を設立する方法だ。仮にA社とB社で50%ずつ出資して合弁会社のC社を設立したとするとA社、B社、C社の3つの法人が存在することになる。
合併の方法としては、合併する会社がすべて解散して新会社になる「新設合併」、合併する会社の一方がもう一方の会社を吸収する「吸収合併」の2つだ。いずれにしても合併には、会社の消滅が伴う点で出資をした企業が新しい会社とは別に存在し続ける合弁会社の仕組みとは異なる。提携には、資本関係が生じない企業相互が協力し合う「業務提携」と資本関係が生じる「資本提携」の2種類がある。
業務提携は、出資が伴わないことから明らかに合弁会社の仕組みとは異なる。資本提携は、資本の移動が伴うが一方の企業が他社に出資することであり、お互いに資本を出資して設立する合弁会社とは仕組みが異なるものだ。ただし合弁会社は、既存企業の株式を買収して共同経営を行うこともあるため、資本提携がジョイントベンチャーになるケースは十分考えられるだろう。
合弁会社のメリット
ここでは、合弁会社のメリットを3点に絞って紹介する。
1つ目は、新規事業に伴うさまざまなリスクを分散できることだ。会社の事業規模を拡大するためには、新規マーケットを創出する必要がある。しかしながら、新規事業には失敗がつきものだ。近年、市場の流動性は以下の「VUCA」で表現され、イノベーション・コストの費用対効果を算定することが極めて難しくなっている。
〈市場の流動性を表すVUCA〉
Volatility(変動性:つねに変化する)
Uncertainty(不確実性:いつ、どこで、何が起こるかわからない)
Complexity(複雑性:あらゆるものが関わり合っている)
Ambiguity(曖昧性:全体像がはっきりしない)
そこで、複数の企業が資金を負担して合弁会社を設立すれば、投資コストやリスクを分散できるので、新規事業に挑戦するハードルが下がる。
2つ目は、自社が持っていない経営資源を速やかに補完できることだ。企業が新規事業を立ち上げるために、資金や人材、技術、ノウハウなどのリソースをゼロから調達すると、それ相応のコストがかかる。しかし他社と連携すれば、不足している経営資源を短期間で補い合うことができるため、事業を迅速に開始することができる。
3つ目は、共同出資という性質上、パートナーシップの解消が起こりにくいことだ。双方で資金を持ち寄ってリスクを共有する以上、協力関係を破綻させるような意思決定はしにくい。合弁会社を経営する過程で生じるコミュニケーションの失敗は、事業を成功に導くために克服すべき「共通の課題」となる。
この前提がなければ、合弁会社が長期的に成功することは難しいだろう。一般的な業務連携と比較して、このような楔が打たれることが大きなメリットと言えるだろう。
合弁会社のデメリット
次に、合弁会社のデメリットとして以下の3点について言及しておきたい。
1つ目は、経営資源の流出が起こる可能性があることだ。合弁会社の設立に伴って、複数の会社と人材や技術、ノウハウを共有すれば、当然ながら知的財産などの流出・盗用のリスクが生まれる。これを防止するには、秘密保持契約などの法的なリスク・マネジメントや、連携体制における知的財産の安全管理体制の整備が不可欠だ。
2つ目は、パートナーが社会的信用を失うと、自社にも悪影響が及ぶことだ。最悪の場合は、株価が暴落することもあるだろう。協力関係にある以上、相手の行動によってネガティブな影響を受けることは避けられないことと考えるべきだ。合弁会社のパートナーを選定する際は、相手企業の実態調査を念入りに行い、信用が失墜する危険性はないか、しっかり確認しておかなければならない。
3つ目は、意思決定のスピードが遅くなるリスクがあることだ。複数の会社で事業を運営するということは、利害関係が複雑化することを意味する。
それぞれの会社には、経営上異なる優先順位がある。合弁会社の意思決定が自社の経営や業績にどのような影響を及ぼすのか、経営陣は吟味せざるを得ない。調整やコミュニケーションが増え、意思決定に手間と時間がかかることになる。
合弁会社の設立する4ステップ
合弁会社(ジョイント・ベンチャー)を設立するには、具体的にどのようなステップを踏めばいいのだろうか。ここでは、合弁会社(ジョイント・ベンチャー)の設立方法を4つのステップに分けて説明する。
【ステップ1】パートナーの選定
ステップ1は、パートナーの選定である。言うまでもなく、「どの会社と組んでビジネスを行うのか」は、合弁会社の成否を分かつ極めて重要なポイントになる。パートナーとなる企業が利益の独占や無責任な途中離脱などをした場合は、自社の経営に悪影響を及ぼすことになるので注意しなければならない。
【ステップ2】基本合意の締結
ステップ2は、基本合意の締結である。基本合意とは、合弁会社の設立および運営に関する基本方針を定めることをいう。簡単に言えば、「あなたの企業と合弁事業を行いますよ」という意思決定の確認だ。基本合意が締結されるまでは、外部情報の分析や担当者同士の打ち合わせが行われる。
【ステップ3】各種条件の協議
ステップ3は、各種条件の協議である。この段階では、合同事業の実施に向けて、権限や利益などに関する条件を設定するための打ち合わせを行う。ここでは、その項目について言及しておく。
①主体とその法人形態はどうするか?
まず、合弁事業を行う主体を決めなければならない。
〈主な選択肢〉
・新しく会社を設立する
・双方どちらかの株式の一部を譲渡して共同経営を行う
②出資比率はどうするか?
次に、合弁事業に対する出資比率を決める。これによって配当などの利益が変動するため、新規事業に対して許容できる負担額を考慮した、適切かつ公平な割合を設定する必要がある。
〈主な選択肢〉
・50:50
・50:50以外(自社の割合が多い場合)
・50:50以外(自社の割合が少ない場合)
出資比率は、「50:50」がベストとは限らない。「どちらがリーダーシップを取るべきか(=どちらが執行責任を持つべきか)」といった運営体制の在り方は事業計画に基づくものであり、それに応じたフェアな出資比率を設定することが重要だ。
③撤退条件はどうするか?
次に、合弁事業の徹底条件を決める。当然ながら新規事業には失敗の可能性があり、撤退のタイミングを逃して損失を膨らませれば、双方の業績を悪化させることになる。また、両社の対立が解消できない場合は、事業継続は困難として解散することもある。これを「デッドロック」と呼ぶ。その他、以下のような撤退条件が設定されるケースが多い。
・一定期間内に業績が上がらない場合
・一定金額以上の損失が発生した場合
・企業買収などによって経営権が移転した場合
・合弁契約に違反が生じた場合など
①から③以外にも、事業目的や役員体制、紛争処理方法など事前に協議すべき事柄があるため、これらに係る業務コストが大きくなることが多い。
【ステップ4】合弁契約の締結
ステップ4は、合弁契約の締結である。ステップ3の協議内容は「合弁契約(ジョイント・ベンチャー契約)」に反映されて、法的な拘束力を持つことになる。この段階で、合弁会社の設立が確定する。
合弁会社設立のポイント3つ
ここでは、合弁会社設立のポイントを3つに分けて確認する。
提携先企業のリサーチ
パートナーの選定は、合弁会社の成否を分かつ重要なポイントになる。合弁会社の設立は、自社とパートナー企業にメリットがあるからこそ行うものであり、お互いの経営に悪影響を及ぼすことになっては何も意味がない。パートナーとなる企業の目星がついたら以下のような情報を収集し分析することが重要だ。
・企業の業界の特性
・法制度
・業界シェア
・業界の位置や順位
・技術の評判
・ノウハウ
・経営理念やビジョンなど
もちろん自社の経営状況が悪化するようなことがあってはならない。自社の経営陣の意思統一や経営体制を強化することも必要だ。しかしパートナーの企業が自社にどのような影響を与えるのかも考えなければいけない。自社の風土との相性や適正、自社の業界を理解しているかも、押さえておきたい。
提携条件の明確化
合同事業の実施に向けて権限や利益などに関する条件を明確にすることが必要だ。ジョイントベンチャーの形態として新会社を設立するのか、双方どちらかの株式を譲渡するかによっても事業運営方法や方針が異なる。そのため意思決定の方法については明確にすべきだろう。対等合併であっても出身企業で派閥を作り反目し合う企業は多い。
ジョイントベンチャーとして共同経営を行うのであれば、双方信頼し合える関係になることを優先すべきである。パートナー企業においても共同経営の相手としてふさわしいかをリサーチしていることだろう。明確化された提携条件を提示することで相手方の負担を減らし疑問や不安を取り除くことが重要になってくる。
出資比率や撤退条件
出資比率についても話し合いを尽くす必要がある。運営体制のあり方は、事業計画に基づくものであり双方の役割や業務範囲を決めてフェアな出資比率を設定することが重要だ。例えば以下のような内容で役割や責任の範囲で自ずと出資割合も変わってくるだろう。
・出資比率を考える点で技術力や営業力は対等と言えるのか
・お互いどの部分が優れどの部分が劣っているのか
・共同事業としてメリット・デメリットを補えるものなのかなど
合弁事業の撤退条件を決めることも重要だ。新規事業に伴い想定されるリスクをできるだけ洗い出し会費・軽減ができる方法を検討しておかなければならない。リスクコントロールは、企業にとって必須となるため、リスクが顕在化した場合の対処方法を検討し撤退条件も設定しておこう。撤退のタイミングを逸してしまい損失が膨らんでいくのでは本末転倒である。
合弁会社の成功事例
合弁会社を設立することで成功した企業を2社紹介する。
ビックロ
合弁会社を設立して成功した有名企業に「ビックロ」がある。ビックカメラとユニクロが重なる顧客層をターゲットにして共同経営に乗り出した事業である。2012年9月に新宿東口にオープンしたビックロは、同じ建物内に店舗を出店し相乗効果を生む事業展開を図った。
ビックカメラ、ユニクロとも集客力が高い企業である。新宿東口駅前という好立地の店舗による資金負担を考え、共同出資によってコスト抑制や販売拡大を図った。両者の客層は重なるが家電量販店と衣料品販売店という商品がまったく異なる点やどちらも安くて高品質といった特性が成功の要因となっている。お互いの店舗で双方の商品をアピールする工夫もなされている。
連携する企業間のシナジー効果も生み、両店舗ともに外国人観光客にも人気があることも成功の要因と言えるだろう。
グリーンモンスター
2014年10月にLINEとサイバーエージェントが設立した合弁会社がグリーンモンスターである。業界としてライバルにもなりかねない企業であるが、お互いに共通の目的を持つことで成功した事例だ。LINEは、コミュニケーションツールとして日本で知らない人はいないだろう。LINEのサービスは、コミュニケーションツールにとどまらずキャッシュレス決済など多岐にわたる。
一方のサイバーエージェントは、インターネットメディア事業を幅広く展開しゲーム事業にも算入している。両社ともインターネットインフラを利用するサービスとしてお互いがライバルにもなりかねない関係だ。その両社がゲーム事業強化を目的に合弁会社を設立し成功している。同じインターネットを利用した事業でもそれぞれの得意分野やターゲット層は異なる。
お互いが強みを生かすことで成功した事例と言えるだろう。
会社間のシナジー効果を考える
合弁会社を成功させるためには、連携する企業間のシナジー効果を適切に評価しておく必要がある。弱みを補完して、強みを活かし合うことで、新規事業を創出しやすくなるからだ。
ただし、企業という複雑な組織が連携する以上、コミュニケーションの軋轢が生まれることを考慮しておかなければならない。一定のコストを負担して利害関係を共有したとしても、情報が適切に共有されなければ、ささいな問題から関係が悪化するおそれがある。マネジメント・コストが高い分、担当者の手腕が問われるだろう。
株主に対する説明責任も含めて、合弁会社の設立においては慎重な判断と大胆なアイデアが必要になる。事業規模の拡大と経営の多角化を図る上で、複数の企業が連携する合弁会社の仕組みは、うまく活用すれば大規模な事業を運営できるような魅力あるものになり得る。
双方で合弁事業の目的を明確にした上で、形式的な意見交換だけではなく社外交流も含めたフィードバックの機会を作ることが、日本社会の実態に即したコミュニケーションとして重要と言えるだろう。
合弁会社に関するQ&A
Q.合弁会社とはどんな形態?
A.合弁会社は、複数企業が共同出資して新会社を設立するか、既存企業を買収して買収した側とされた側が共同経営を行うかのいずれかの形をとる。ただし会社法に「合弁会社(ジョイント・ベンチャー)」という概念はない。そのため実際は、会社法で定められている「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」のうち、いずれかの形態を選ぶことになる。
各法人の形態によって責任の所在が異なるが、合弁会社を設立する際は株式会社か合同会社を選ぶことが多い。これらの形態は、出資者が有限責任を負う。合弁会社を設立する目的は、資金や技術、ノウハウ、人材などさまざまな経営資源を共有し市場の新規開拓を行うことにある。日本で合弁会社が設立されるようになった背景の一つに100%外資の企業進出を禁止している国への進出が挙げられる。
現地企業と共同出資で会社を設立することで、その国に進出が可能となった。
Q.合弁会社を設立するメリットは?
A.合弁会社設立の主なメリットは、以下の3つだ。
・新規事業に伴うリスクの分散
会社の事業拡大には、新規事業が不可欠だ。しかし近年の市場は、常に変化しており、今後何が起こるかは誰にもわからない。またあらゆるものが複雑に関わり合い、全体像がつかみにくいといわれている。このような状況下では「新しいチャレンジがどのような費用対効果をもたらすか」といった予想が困難だ。
1つの企業が単独で新規事業に挑むのはリスクが大きいため、複数企業が共同出資することで投資コストやリスクが分散を図っている。これにより新規事業にも挑戦しやすくなる。
・自社に不足する経営資源の補完
新規事業の立ち上げにおいて必要な資金・人材・技術などを1つの企業がゼロから調達することは、相当な時間と労力がかかるだろう。しかし複数企業で連携すれば互いに保有するものを短期間で補いあえる。
・強いパートナーシップ
合弁会社は、パートナー企業が互いに資金を持ち寄るため、一般的な業務提携よりもパートナーシップの解消が起こりにくい。経営の過程で意思疎通がうまくいかなくても安易に破たんすることはなく、互いに協力して克服できることが多い。
Q.合弁会社を設立するデメリットは?
A. 合弁会社を設立する主なデメリットは、以下の3つだ。
・経営資源が流出するリスク
複数の会社と経営資源を共有するため、技術やノウハウが盗用されるリスクがある。知的財産の安全管理体制整備や、秘密保持契約などのリスク・マネジメントが重要だ。
・パートナーのトラブルに巻き込まれるリスク
万が一パートナー企業が不祥事を起こすなどして社会的信用が失墜した場合、自社にも影響が及ぶ可能性がある。パートナー企業を選定する際は、実態調査を念入りに行うことが必要だ。
・意思決定のスピードが遅くなるリスク
合弁会社の運営には、複数企業が関わるため、経営陣は合弁会社の運営がそれぞれに自社の経営にどのような影響を及ぼすか考えを巡らせることになる。その分、企業間や自社内での調整に時間がかかり、意思決定が遅くなる可能性がある。
Q.合弁会社を設立する方法は?
A. 合弁会社を設立するには、一般的に以下の4つのステップを踏む。
①パートナーの選定
②基本合意締結
③条件協議
④合弁契約締結
特に気を付けなければならないのが条件協議だ。合弁事業の主体や出資比率、撤退条件、役員体制、紛争処理方法などを事前に協議しておく。合弁会社設立については「新会社を立ち上げるのか」「株式の一部を譲渡して既存企業を共同経営するのか」について決める。また出資比率については「リーダーシップをどの企業がとるのか」「等しく責任を持つのか」など事業計画に基づいて決定が必要だ。
失敗したときのことを考えて撤退条件についても決めておきたい。例えば「一定期間内に業績が上がらない」「一定金額以上の損失が発生した」といった場合など撤退のタイミングを決めておき、損失を必要以上に大きくしないようにしておくことも重要だ。
Q.合弁会社を設立する際の注意点は?
A.合弁会社を設立する際に、注意しておきたいのは以下の2つだ。
・パートナー企業選定のためのリサーチを怠らない
パートナー企業候補について業界シェアや経営理念、技術力、評判などの情報を取集しておくことが重要だ。そのうえで自社の企業風土との相性や互いのメリットについて分析する。
・提携条件は細部まで詰める
合弁会社設立のステップのなかでも条件協議は重要なポイントだ。合弁会社の設立形態や出資比率から合弁事業の撤退条件にいたるまで十分に議論を尽くしておきたい。細部を詰めておくことで、出資する企業相互の不安や疑問を取り除き、信頼関係を築くことが期待できる。
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