(本記事は、村井 庸介氏の著書『ずらし転職 - ムリなく結果を残せる新天地の探し方』ワニブックスの中から一部を抜粋・編集しています)

転職
(画像=PIXTA)

大手シンクタンク入社後10年で7回の転職を繰り返す

漠然と感じた不安が促したはじめての「転職」

私は新卒として働き始めて、10年間のうちに7回転職し、そのため8社に及ぶ会社での勤務を経験しました。

まずは、どのような順番で、どのような会社を経験したのか、ざっとその7回の転職をふり返ってみましょう。

大学を卒業後、新卒で入社したのが、大手シンクタンクの野村総合研究所です。

そこで3年働いたのちに求人広告などを手掛けるリクルートに転職し、その後ソーシャルゲームの開発・提供を行うDRECOM(ドリコム)、そしてベンチャー企業のGivery、ゲーム事業を行うGREEと職場を変えていきました。

それから日本IBM、メガネスーパーを経て、ベンチャー企業に入社し、その会社から実質、副業兼任で独立しました。

1度目の転職は、若いころによくある「このままで自分の将来は大丈夫なのだろうか」というような悩みをきっかけに決意しました。野村総研で働いており、職種がコンサルタントだったので、自分は正論を語るだけで、現場で通用するような仕事ができないのではないかと不安に思うことがあり、実際に自らが事業を生み出したいという想いからリクルートへと移ろうと考えたのです。リクルートは次々に新規事業を展開していて、会社として単純にかっこいいなという憧れもありました。

野村総研は給与水準の高い会社でしたし、会社の制度や一緒に働く同僚に不満があったわけではありません。人間関係や社内での評価、給与といったことが理由でなく、単純に自分自身の将来への不安が、転職の主な理由でした。

給与より経験をとるために転職を決意

給与水準の高い野村総研からの転職でしたから、転職した時点で給与レベルが下がることはわかっていました。転職を決意した当初から「給与」より「経験」をとりにいくつもりだったので、その点への迷いや後悔はあまりありませんでした。しかし、それまで野村総研の給与レベルにあわせた生活をしており、加えて若かりしころで、恥ずかしながら貯蓄もあまりしていないような状況でしたから金銭的につらくなってきました。そうして生活環境が変わったことに対するストレスが出てきてしまったのです。

また、仕事についても、コンサルタントから営業職に変わり、主に求人広告の営業をしていましたが、自分の能力があまりフィットしていないなと感じていました。

結果が出せず転職した理由もわからなくなり……

コンサルタントのときはそれなりに結果を残していて、社内の評価もよかったのですが、リクルートに移ってからは、最初は運よく営業で実績を上げられていたものの、だんだん思うような結果を出せなくなっていきました。〝数字〟が出せなくなり、上司からも「もっと積極的にお客様に提案しよう。数字も出せるようにしましょう」といわれるようにもなります。

数字を取らねばというプレッシャーを一人で感じてしまい、お客さまの雇用状況や経営環境を見ずに自分都合の提案が増え、上司のアドバイスすら理解できない……そういう具合で、どんどんよくない方向へ向かっていきました。

そうすると、「なんのために転職したんだっけ?」と思うようになります。このまま営業職を続けていくことがとてもつらく感じて、そのうち出社することもままならない状況になってしまいました。そうした日々を過ごすなかで、この状況はまずいと思い、2回目の転職活動をすることにしました。

漠然とした「不安」を感じた瞬間

若いとき、特に働き始めたばかりのときは、得てして将来に不安を感じるもの。とはいえ、個人個人でその不安も異なります。私はどのような点に不安を感じたのか、少し話をしておきましょう。

シンクタンクに入社して3年目のときに、あるメーカーの中期経営計画をつくるプロジェクトに、コンサルタントとして参加することになりました。

中期経営計画は、「売り上げを伸ばす」ことと「コストを減らす・在庫を減らす」ことの両方の側面での目標設定が必要となりますが、まだキャリアの浅い私は、そこで求められるすべてのパートを経験したことがありません。

そのため、周囲の協力を得ながら進めたのですが、クライアントの期待に応えられず、苦しい状況が続きました。そんななか、ある日クライアントの担当者の方が「言っている理想は確かにそうだが、何をどうやればよいのかまったく提案してくれない」とおっしゃいました。この言葉は、コンサルタントとして、ある程度結果を出せていると自負していた当時の私の心に深く突き刺さりました。

その言葉を投げかけられたあとも、プロジェクトメンバーの多くの協力を得つつ全力を尽くし、結果的に中期経営企画は完成させることができたのですが、それで安堵できたわけではありません。

いろいろ調べてファクトをもとに語ることはできても、実際に物事をどうやって動かしていけばよいのかというような細かい「ハウ(HOW)」について、「それはこういうことですよね」と答えることができない。このことは、今後自分自身が職業人として仕事をしていくうえで「弱みになる」のではないかと、不安が芽生えたのです。

ベンチャー企業で気をつけたい「組織構造」

コンサルタントと近い職務で充実した日々野村総研を経てリクルートに移り、次に25歳のときに移ったのが、ドリコムという会社です。

2006年に東京証券取引所マザーズに上場したいわゆる「上場企業」ですが、順風満帆というわけではなく、赤字経営が続いていました。私が転職する直前くらいにソーシャルゲームでヒット作を出し、黒字に転換しました。

その会社で、ゲーム開発を行う事業部のなかの経営企画という立ち位置で、事業部長の参謀として予算の策定や、事業部の戦略考案、新しい業務の見直しといったことを行っていました。

もともと行っていたコンサルティングと職務の内容が近いことや、一方で外部のコンサルタントではなく「会社の中の人」として細かい業務依頼を課していくという仕事内容がおもしろくて、日々がとても楽しく、モチベーション高く仕事に取り組んでいました。

また、カスタマーサポートセンターの人員が構造的に増えやすいので、その構造をどのように変えていくかといったプロジェクトを立ち上げから実行まで一貫して経験でき、とてもやりがいがありました。

ベンチャー企業特有の〝ポスト問題〟

この会社をやめようと思ったきっかけは、ベンチャー企業ではよくある話です。

伸び盛りのベンチャー企業には、他社で実績を残した、まさに〝脂の乗ってきた〟ような人たちが、事業部長や管理職として、自分よりはるかに高い年収で入社してきます。一方で自分はまだ若く、仕事は負けないくらいやっていると思っても、会社の評価制度的になかなか給与があがらない。「この人の実力、年収に近づくのにあと何年かかるんだ?」と考えたら、「ベンチャー企業なのに、あと5年……。いや10年はかかるだろう」という結論に至りました。

ベンチャー企業はどんどん出世していくことができるような印象をもちますが、それが可能なのは先頭を走っている人たちだけです。その後塵を拝する人たちは、上司が他の企業より若いゆえ、なかなかその席は空きません。

これは、意外と気づかない、ベンチャー企業特有の〝ポスト問題〟です。上司に追いつくのに、あと10年かかるとして、自分は25歳から35歳になりますが、35歳の事業部長は45歳になります。それこそ、さらに脂がのっている時期で円熟の域です。この事業部長が、そのポストを明け渡すことはほぼありません。

「会社の規模をさらに大きくして、新しいポジションをつくろう!」、あるいは、「上司にさらに出世してもらい、自分のポジションを上げていこう!」という視点が欠けていた当時の自分は、このままこの会社でがんばっていても、先が見えないのではないかと思ってしまいました。

会社の評価制度から生まれた停滞感

この、ポスト問題は〝ベンチャー企業あるある〟ですが、創業時から在籍していたり、比較的若い段階で部長などの役職に就いたりした人は、会社に居続ける傾向が強いです。これは途中から入ってくる人からすると、結構つらいことです。

ポジションが上がらないと給与の額も上がらないという会社では、やがて停滞を感じやすくなってしまいます。しかし、そう考えて滞留していてよいのかなと思うところがあり、急にどん詰まり感が出てきたのが当時の私の感覚です。

会社での自分自身の評価自体は悪くなくても、構造的に社員がステップアップしづらい設計になっているというのが見えてしまったので、それなら別の職場に移ろうと思って転職をしました。

大学時代の友人がベンチャー企業にヘッドハンティングされたとか、商社マンの同級生から脂がのりはじめて給料がよくなったというような話を聞くなかで、自分はせっかくベンチャー企業に行ったのに、「なぜ、こんなところにとどまっているのだろう」と考えるようになってしまったのです。

そうした停滞感が、自分のなかでずっしりとのしかかってきました。

ずらし転職 - ムリなく結果を残せる新天地の探し方
村井 庸介
大学卒業後は、株式会社野村総合研究所に入社し、通信業・製造業の新規事業、経営計画策定などの経営コンサルティングに携わる。その後、リクルート、グリー、日本アイ・ビー・エムなどで、法人営業・戦略企画・人事の仕事を歴任。2015年からはメガネスーパーの企業再生で新規事業立上や事業提携を通じて同社黒字化に貢献。

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