経費精算アプリをご存じだろうか。経費精算は手間と時間がかかるものだが、経費精算アプリを使えば作業効率を一気に向上させることができる。ただし、メリットも多いがデメリットもあるので、今後導入を検討している企業はこれらを押さえておく必要があるだろう。

そこで今回は、経費精算アプリとは何かを説明した上で、導入によるメリット・デメリットについて詳しく説明する。

経費精算アプリとは?

経費精算
(画像=PIXTA)

経費精算アプリとは、従業員が業務上支払った費用を精算する作業の精度や効率を高めるためのITツールの一種である。経費精算には、ルールの遵守と正確性が求められる。その計算や処理作業は、従業員にとって残業の原因にもなるほどの大きな負担になり得る。

経費精算アプリを導入すれば、使い慣れているスマートフォンを使って、場所や時間に関係なく瞬時に経費精算を行える。「この費用は会社の経費として認められるのか」「申請書が合っているのか」といった紙の領収書・申請書の場合に発生する確認作業も、経費精算アプリならまったく不要だ。

システムの導入も簡単で、従業員が専用アプリをスマートフォンにインストールし、操作方法を覚えればすぐに利用できる。ただし経費精算アプリは複数あり、機能も特徴も異なるので、各企業に合ったシステムを導入することが大切だ。

経理精算における問題点は?

経費精算の問題点の多くは、精算を手作業で行うことに起因する。特に、差し戻しが多くなる問題、請求書などの確認に手間がかかる、書類保管に費用がかかるといった問題がその典型例として挙げられる。

差し戻しが発生する問題

手作業で経費精算を行う場合、計算ミスやパソコンへの入力ミスなどが発生する。もし誤りがあれば、従業員に対してミスの箇所を指摘し、修正してもらうために精算書類の差し戻しを行う必要がある。一部にミスがあっただけで、作業をすべてやり直さなければならないこともあるので、経費精算作業は従業員にとって負担と言える。

請求書などの確認が手間になる

誤りが生じるリスクがある以上、経理担当者は提出された請求書をすべて確認する必要がある。特に大変なのは、日常的に発生する交通費申請の確認作業だ。従業員が数百人規模の企業の場合、経理部門で確認するの作業量は膨大なものとなる。

書類保管にかかる費用

経理部門に集められた領収書を紙で保管する場合、7年間の保管義務がある。7年分もの経費精算関連の書類を保管するためには、相当なスペースが必要になる。エクセルで作られた経費精算申請書も、印刷した上で保管することになるので、紙代とインク代がかかる。保管場所を別途用意するなら、そのための地代家賃や人件費なども発生するだろう。

経費精算アプリを使うメリット

経費精算アプリを導入することで得られるメリットは多い。ここからは、申請と承認の効率化やスキャンによる書類保存、人的ミスの軽減、作業の短時間化などのメリットについて詳しく解説する。

申請や承認の効率化が図れる

経費精算の申請や承認を手作業で行う場合、従業員は申請書を逐一印刷し、必要事項の承認依頼をしなければならない。そこでミスがあれば、印刷作業からやり直すことになる。

経費精算アプリを使えば、このような面倒なプロセスを一気に解消できる。たとえば交通費を申請するのであれば、出発駅と到着駅を記入するだけで自動的にミスなく費用を計算してくれる。ミスがあったとしても、該当箇所をスマホ上で書き換えるだけで済むので、手間がかからない。

申請を承認する際も、承認者はいつでもどこでも承認作業を行うことができる。申請があるとメールなどで通知されるので、いつ申請が来たかわからないということもない。

スキャンして書類を保存できる

2019年の電子帳簿保存法改正により、領収書はスマートフォンのカメラで撮影した写真があれば、原本保管の必要がなくなった。

経費精算アプリの中には、領収書を撮影するだけで精算用のデータとして取り込めるものもある。その場合、スマホで撮影するだけで経費の申請までを行えるので、紙の領収書は破棄できる。

さらに、日付などをいちいち入力しなくても撮影するだけでデータ化できるので、それまで必要だった金額の入力作業が不要になる。

人的ミスの軽減

紙の申請書を作る場合は、どうしても人為的なミスが発生してしまう。たとえば複数の領収書をまとめて計算する場合、人間が行うと計算ミスや入力ミスが起こる可能性がある。

経費精算アプリを使えば、人為的ミスを確実に防ぐことができる。領収書を撮影するだけでデータを自動的に取り込めるので、日付の書き忘れなどのミスがなくなる。

短時間で処理が終わる

領収書の画像を取り込むだけでデータを取り込むことができる経費精算アプリがあれば、書類作成の手間を一気に省ける。

スマートフォンにICカードリーダーが付いていれば、交通系ICカードに記録されたデータを読み取り、自動的に経費をデータ化できるアプリも利用できる。このシステムがあれば、都度交通費の計算をしなくても済むので、作業効率は格段に向上するだろう。

経費を申請する側だけでなく、申請書を受け取り、承認する経理部門の作業時間も大幅に短縮できるはずだ。

経費精算アプリのデメリット

ITツールである経費精算アプリにはメリットが多いが、デメリットもある。

セキュリティに難あり

経費精算アプリは、無料で使えるものも多い。しかし、そのようなシステムは構築方法が雑で、外部からの不正アクセスに対する対策が取られていないものもある。誤ってアプリを消去してしまった場合、バックアップデータがなく、データ復旧ができないアプリもある。

経費精算アプリを導入するなら、どのようなセキュリティ対策が取られているのか、事前にきちんと確認しておく必要がある。

読み取り精度が低いことも

領収書をスマートフォンで撮影するだけで経費精算ができることが、経費精算アプリの主なメリットの1つだ。

ところが、中には読み取り精度が低いアプリもある。そのようなアプリでは、撮影された領収書をデータとして登録できても、読み取り精度が低いため、結局原本である紙の領収書の保管が必要になる。特に無料アプリを利用する場合は、読み取り精度がどの程度なのかを事前に確かめておきたい。

経費精算アプリのおすすめ4選

現在、経費精算アプリを販売している企業は複数ある。各企業が利便性を高めるためにさまざまなサービスを提供しているので、導入にあたってはアプリの内容や特徴を把握しておくことが重要だ。

ここでは、「MFクラウド経費」「Dr.経費精算」「Concur Expense」「会計 freee」を紹介する。

MFクラウド経費

領収書の内容をスマートフォンで撮影された画像から自動的に取り込めるので、金額を打ち込む作業が一切不要。そのまま経費申請もできる。領収書データの取り込みから申請までの作業を一気に行えるのが「MFクラウド経費」の大きな魅力だ。さらにSuicaやPASMOなどの交通ICカードに記録されたデータも瞬時に取り込めるので、交通費精算も簡単に行える。

申請内容をチェックする機能や仕訳データの自動登録機能によって、経理部門の作業負担を大幅に軽減できる。他の会計ソフトと連動して使えるので、現在使用しているものに追加で導入してもいいだろう。

Dr.経費精算

領収書をスマートフォンで撮影すれば、担当オペレーターが入力・データ化の作業を従業員に代わって行ってくれる。オペレーターは入力業務専門のプロなので、入力ミスがほとんどない。また「駅すぱあと」と連携しているので、駅名を入力するだけで瞬時に交通費を確認できる。

さらに、クレジットカードや電子マネーの明細表をもとに、経費の情報を自動的に収集することもできる。セキュリティにも力を入れており、プライバシーマークの取得はもちろんのこと、暗号化や脆弱性診断のシステムは金融機関レベルだ。

Concur Expense

世界で約5,200万人に利用され、各国の言語、通貨に対応しているConcur Expense。国内での売上シェアが大きく、中小企業からグローバル企業まで多くの日本企業がすでに導入している。出張を手配するためのシステム「Concur Travel」や、請求書を管理するためのシステム「Concur Invoice」と連携させることで、経費全体の管理能力を高められる。

会計 freee

会計 freeeは、領収書をスマートフォンで撮影するだけで、経費申請、承認まで行えるアプリだ。
どこにいても承認できるので、経理担当者の負担を大幅に削減でき、経費精算のワークフローと会計機能を一本化することで、経費のムダを減らせる。またアプリを導入することで、より合理化された全社的業務フローを構築できる。

経費精算アプリを使用して業務効率化を図ろう

経費精算アプリには、経費精算の申請と承認の効率化、スキャンによる書類の保存、人的ミスの軽減、作業の短時間化など、様々なメリットがある。ただし、セキュリティ面やデータの読み取り精度に問題があるアプリもあるため、導入前に各アプリの内容をチェックしておくことが大切だ。すでに経費精算アプリは多くあるため、どのサービスが自社に適しているか、十分に吟味して使ってもらいたい。(提供:THE OWNER

文・THE OWNER編集部