学生や教師が同じキャンパス内で寝食をともにし、心身ともに人としての成長を支える。さらに高水準の教育を提供してくれる全寮制私立学校を「ボーディングスクール」と言います。日本ではまだその存在を知らない人も多いのですが、富裕層の家庭では子どもの進学先として検討している人も増えているとか。特に著名人の子息、子女が集まるというスイスのボーディングスクールについて、その教育内容や環境についてご紹介します。

スイスの名門ボーディングスクールとは?

ボーディングスクール
(画像=Matva/Shutterstock.com)

ボーディングスクールとは、基本的に全寮制の学校を指します。小説「ハリーポッター」のハリーが在籍した寄宿学校といえばイメージがつきやすいと思います。

世界には数多くのボーディングスクールが存在しますが、名門ボーディングスクールの多くはスイスに集まっています。なかでもスイス最古のボーティングスクールである「Le Rosey(ル・ロゼ)」は、世界で活躍する多くの著名人が在籍していたことでも知られています。これまでにモナコ公国大公レーニエ3世やベルギー国王、イギリス王室やデンマーク王室関係者などが在籍しており、「王の学校」とも呼ばれています。またジョン・レノンの息子ショーン、ダイアナ・ロスやエリザベス・テイラーの子どもたち、日本人では建築家の丹下憲孝やファッションデザイナーの芦田多恵も在籍していました。

レマン湖畔に位置するル・ロゼには通常の校舎の他に冬用の校舎もあり、ウインタースポーツが楽しめるなど、豊かな自然に囲まれた恵まれた環境で学校生活を送ることができます。

どのような仕組み? 教育プログラムとは?

スイスは世界共通の大学入試資格と、それにつながる教育プログラムである「国際バカロレア(資格)」の発祥の地であり、グローバル教育の先駆的な国です。なかでもボーディングスクールは世界トップレベルの教育水準の高さで知られています。その理由として、日本と同様に天然資源に恵まれないスイスは、人としての成長に重きを置く「全人教育」を掲げ、人材の教育に力を注いできた、という歴史があげられます。

カリキュラムは、世界125カ国以上の大学が入学資格として認めている国際バカロレア式、アメリカ式あるいはイギリス式から選択可能で、高校卒業資格を取得できます。受け入れ年数はスクールによって異なりますが、スイス・ラーニングに加盟するボーディングスクール(ル・ロゼなど11校)は、小学生から高校生までを受け入れています(表1参照)。使用言語はスイスの公用語であるドイツ語、フランス語、イタリア語およびロマンシュ語の4カ国語に加え、ネーティブスピーカーによる英語での授業も受けられます。そのうえで、フランス語、ドイツ語などを第2外国語としてマスターすることもできます。

スイスのボーディングスクールは、生徒の国籍が偏らないように一つの国の生徒数を制限するポリシーがあります。国籍数は学校によって異なりますが、生徒は55カ国以上の国々から来ているので国際色は豊か。そのため日本人だからといってマイノリティとして肩身の狭い思いをすることなく、学校生活に溶け込むことができます。

スイスの学校教育 

THE OWNER編集部
カリキュラムはアメリカ式とイギリス式、そして世界125か国以上の大学が入学資格として認めている国際バカロレア式から選択可能。
出典:外務省諸外国・地域の学校情報から編集部作成(画像=THE OWNER編集部)

日本から留学する場合は?

日本人留学生の多くは、以前は中学卒業後に3年間行くケースが多くありましたが、現在は低年齢化が進み、小学校高学年からの留学も増えています。学校によって試験内容の違いはありますが、幼少期であればあるほど英語力が問われないため、入学しやすくなります。学校によって試験内容の違いはありますが、上記のル・ロゼの場合は、書類審査、筆記試験、面接などが行われます。

ボーディングスクールへの入学を決める前におすすめしたいのは、一度学校に訪れてみることです。教育内容や施設についての情報は知っていても、その様子は実際に見なければわからないことも多くあります。また、お子様との相性もありますので、夏休みを利用して短期間のサマーコースなどを一度試してみるのもよいでしょう。

高校卒業後の進路については、ほとんどの学生が海外の大学に進学しますが、高校卒業後に日本に戻りたい場合には、帰国子女枠で日本の大学を受験することができます。帰国子女は本来、親の仕事により、海外に在住していた生徒を受け入れる制度として設けられましたが、最近では単身で留学した生徒も対象とする大学が増加しています。スイス留学者は日本ではまだ希少な存在で、多様な国籍や文化のなかでさまざまな体験をしていることが評価されることが多いようです。

ボーディングスクールに行くメリットとは?

ボーディングスクールに在籍するメリットは主に3点あげられます。第一に、海外の富裕層の子弟とのネットワークを築くことができます。スイスの名門ボーディングスクールは海外のさまざまな国からやって来た富裕層の子弟が多く在籍しています。王室の家族、将来の政治家や経営者と友達になる可能性が高くなります。子ども同士で同じ体験をすることで生涯の友人ができ、つながりができることで将来的なビジネスにも生かされる可能性もあります。

第2のメリットは、多様性の理解が促進されることです。スイスはヨーロッパの中心に位置しているため、さまざまな文化や言語を学ぶのに理想的な場所です。国籍が55カ国以上という学校もあり、あらゆるバックグラウンドの学生を歓迎して養育しています。そのため、子どもたちは母国語以外の言語で話す方法や新しい文化について学び、多様性を受容することで世界的な問題について新しい視点を得ることができます。

最後に第3のメリットとしてあげられるのは、高度な教育水準であることです。元々グローバル教育が盛んなIB(国際バカロレア)発祥のスイスにおいて、ボーディングスクールではさらに高度な教育水準のカリキュラムを受けることができます。IBディプロマプログラムなどの高水準のカリキュラムを使用するとことで、学生は国際的な教養を兼ね備えた高度な学力を身に着けることができるのです。

ボーディングスクールの魅力

子どもたちは多感な時期をボーディングスクールで過ごすことにより、高水準の学力、グローバルな視点とともに、時間管理、学業と部活動のバランス、健康維持などのライフスキルも身につけることができます。

スイスのボーディングスクールの年間の学費は1000万円前後(寮生)と高額ですが、多くのメリットを考えると、行かせる価値があるのではないでしょうか。日本の学校教育が合わない、グローバルな感性を身に付けさせたいなど、さまざまな理由で海外の学校に通わせる家庭も多い中、ボーディングスクールという選択肢にも注目度が高まっています。

寮生は、日中の学校の生徒よりもスポーツ、音楽、読書などの活動に2~3時間多く費やしています。(提供:THE OWNER