営業職やマーケティング職も、同様に…
よって、コンサルティング業務がAIに代替されるのもそう遠くない近未来のことであり、従来型の「本来的な」コンサルタント職ニーズは10年内にはほぼ消滅するでしょう。
消滅後に残るものは、コンサルティングというよりは基礎教育や研修のような類だと思われます。これまでコンサルタントに支払ってきたような高額な報酬は成り立ちようがありません。実際のところ現時点で既に、大手トップクラスの戦略ファームと言っても、実態は実務実行部分の「アウトソーシング」ニーズに答える比率が非常に高まっているのが現実です。
これは営業職やマーケティング職についても同様に言えそうです。
「営業マンは足が命」を笑う、タクシーの車内で流れるサイネージ広告ように、営業もフィールドセールスからインサイドセールスヘ。戦略的マーケティングはデジタル主体でマーケティングオートメーションの導入・運用へと主軸が移行しています。
戦略的なことはAIが行い、人がやるのはそこで出された指令のうち、デジタルには乗らないライブ、生身の人が動かざるを得ない部分の実行、というような役割分担がすぐ目の前に迫っているのかもしれません。
「DXデバイド社会」「DX格差社会」がやって来る
これからもしコンサルタント職や営業職、マーケティング職が生き残るとしたら、まさに「物理的に動く必要がある部分でのアウトソーシング」と「取引先顧客にコミュニケーションの気持ちよさや楽しさを与えるエンタテインメント」を提供できる人(&企業)に限られていきそうです。
果たしてこれを、いまコンサルティング業界に属している人たちやこれからファームを目指している人たちが「コンサルタント」「コンサルティング会社」と呼ぶでしょうか?
何れにしても、コンサルタント職というものが次の10年、生き残るとしたら、中身はこれまでとは全く違う人種の集団となることは間違いありません。
営業職やマーケティング職についても同じく、これまでの職務定義や業務内容で捉えていると、これからの職種ニーズにはミスマッチな人材となってしまうでしょう。
私はエグゼクティブサーチ(幹部採用)や経営幹部育成・配置のコンサルティングという立場からこの“既に起こりつつある未来”に日々触れており、早晩、<DX(デジタルトランスフォーメーション)デバイド><DX格差>による大量の人材再配置が起こると見ています。
当社では来るべき、いざという時のために、個人の皆さんにはキャリア・トランスフォーメーション支援を、クライアント企業各社には次世代型組織・人事対応に出遅れないような体制構築支援を進めています。これから10年、求められ続ける人材であるために、皆さんとより詳細なお話、議論を各処で交わしていければと思います。
井上和幸(いのうえ・かずゆき)
〔株〕経営者JP代表取締役社長・CEO
1966年、群馬県生まれ。早稲田大学卒業後、〔株〕リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、〔株〕リクルート・エックス(現・〔株〕リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に〔株〕経営者JP( https://www.keieisha.jp/ )を設立。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供。著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。(『THE21オンライン』2020年02月04日 公開)
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