要旨

● 2月の日本の対中輸入は前年比▲47.1%の急減。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国の生産活動がストップしたことで、日本の対中輸入も急激な減少となった。

● 一方で、対中輸出は前年比▲0.4%の減少にとどまった。世界全体向けの輸出でみても同▲1.0%に踏みとどまっている。

● 品目別の対中輸出のデータを用い、平均・標準偏差を用いて極端な動きをとった品目を抽出し、その動向をみたところ、不織布マスクを含む「繊維製品のその他の製品」が前年比1218.4%の増加(=約13倍)。そのほか、消毒剤を含む項目は前年比+2447.9%(=約25倍)。集積回路も前年比+3649.2%(=約37倍)に増加。中国の生産活動停滞に伴い、感染防止のための製品や不足する工場部品などを日本からの調達でまかなう動きが強まったものと推定される。

● 3月上旬の貿易統計では、輸出が前年比▲8.9%の減少、輸入は同+7.6%の増加となっている。足元、中国が生産活動を再開する一方、国内では、欧米等の需要減に端を発する自動車工場の生産停止の動きが生じている。コロナショックは、2月は「中国の供給ショック」だったが、3月以降はグローバルレベルの需要側のショックへ変質する可能性が高まっている。

ウイルス対策
(画像=PIXTA)

なぜ、日本の2月輸出はほとんど減らなかったのか?

本日、2月貿易統計の確報値が公表。2月の対中輸入は前年比▲47.1%の急減。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、中国の生産活動がストップしたことで、日本の対中輸入も急激な減少となった。一方で、対中輸出は前年比▲0.4%の減少にとどまった。世界全体向けの輸出でみても同▲1.0%に踏みとどまっている。

マスクや消毒剤、機械製品の対中部品輸出が急増

当初は、中国の生産活動停滞に伴い、サプライチェーンの寸断などから日本の輸出も悪化するのではないか、との懸念が強まっていたが、むしろ2月の日本の輸出は底堅かった。この原因を探るため、本日公表された品目、輸出先別のデータを用い、対中輸出の分析を行った。

行ったことは、2月の対中輸出について、①通常とは異なる増え方、減り方をした品目を抽出、②その品目の輸出額の前年差が大きい順にデータの抽出を行った。①は前年同月差の平均から3標準偏差以上乖離した品目とした。平均・標準偏差の算出には2015~2019年の各品目に関する前年同月差の月次データを用いている。結果は以下である。

新型コロナ下の対中貿易の動向
新型コロナ下の対中貿易の動向
(画像=第一生命経済研究所)

マスクや消毒剤、機械製品の対中部品輸出が急増

増加品目の動向をみると、「繊維製品のその他の製品」が前年比1218.4%の増加(=約13倍)。これは不織布マスクが含まれる項目だ。そのほか、「殺虫剤、殺鼠剤・・・」は消毒剤を含む項目であり、前年比+2447.9%(=約25倍)。集積回路も前年比+3649.2%(=約37倍)に増加。中国の生産活動停滞に伴い、感染防止のための製品や不足する工場部品などを日本からの調達でまかなう動きが強まったものと推定される。

2月は中国の供給ショック。今後はグローバルな需要ショックへシフトか

このように、2月の対中輸出は中国の生産減を日本からの調達でまかなう動きが生じたことで、その減少は軽微にとどまった模様だ。

しかし、本日公表された3月上旬の貿易統計では、輸出が前年比▲8.9%の減少、輸入は同+7.6%の増加となった。足元では、中国が生産活動を再開する一方、国内では、欧米等の需要減に端を発する自動車工場の生産停止の動きが出てきている。コロナショックは、2月は「中国の供給ショック」だったが、3月以降はグローバルレベルの需要側のショックへその性質が変化する可能性が高くなっている。(提供:第一生命経済研究所

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部
副主任エコノミスト 星野 卓也