平均労働時間は約4%減少。3月は一層の減少が見込まれる
要旨
● 2月の労働力調査では、就業者数や失業率の悪化はみられず。しかし、労働時間は2月に約4%の急減となっている。労働時間は正規・非正規問わず減少しており、職種別にみると専門的・技術的職業従事者、販売従事者、事務従事者の減少率が大きかった。
● 3月に入って以降、経済活動全般において自粛の動きは強まっており、労働時間の減少は一層進むことになりそうだ。これらが所得減に直結する短時間労働者やフリーランスなどを中心に、十分な休業補償を用意することが喫緊の課題であろう。4月にも公表見込みの経済対策ではより大胆な施策が望まれる。
雇用への波及はみられないが、労働時間は急減
総務省の2月労働力調査によれば、就業者数は6,743万人で前月から3万人の増、完全失業者数は166万人の増加で、失業率は1月と同率だった(いずれも季節調整値)。
一連のコロナショックが雇用に悪影響を及ぼしている様子は確認できないが、大きな影響が確認できたのが「労働時間」である。同調査で公表されている平均月間労働時間(当社において季節調整)をみると、2020年1月の155.3時間/月から、2020年2月には149.0時間/月へ急減している(前月比▲4.1%の低下)。
正規・非正規問わず減少
雇用形態別にみてみると、正規・非正規問わず労働時間が減少している。筆者作成の季節調整値でみると、「正規の職員・従業員」が前月比▲2.5%、「パート」が同▲1.7%、「アルバイト」が同▲2.2%、「契約社員」が同▲2.9%となっている。
次に職業別にみていくと、低下率が大きいのが専門的・技術的職業従事者(同▲3.4%)、販売従事者(同▲3.1%)や事務従事者(同▲3.0%)などだ。低下が小幅にとどまっているのは、建設・採掘従事者(同▲0.2%)、管理的職業従事者(同▲0.2%)、保安職業従事者(同▲0.5%)などであった。
休業補償をはじめとした政府支援が不可欠に
このように、2月の労働時間が急減したことが統計から確認できた。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、営業時間を短縮する企業が出てきたことに加え、テレワークや時差通勤を促す動きに伴って、ホワイトカラー職種でも業務整理などが進んだ可能性が指摘できる。
3月に入って以降、経済活動全般において自粛の動きは強まっており、労働時間の減少は一層進むことになりそうだ。これらが所得減に直結する短時間労働者やフリーランスなどを中心に、所得補償を充実させることが喫緊の課題であろう。4月にも公表される見込みの経済対策では、休業補償や企業への資金繰り支援において、大胆な施策が望まれる。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 副主任エコノミスト 星野 卓也