(本記事は、のらえもん氏の著書『絶対に満足するマンション購入術 不動産のプロ達は大事なことを隠している!』廣済堂出版の中から一部を抜粋・編集しています)
Q.中古マンションのメリット・デメリットを教えてください
新築マンションは今販売している物件からの選択となりますが、中古はもう少し制限が緩く、地域とマンションを待ち続ければそのうち売り物件が出てきます。中古物件は、新築マンションに比べ、次のように、よりさまざまな選び方のスタイルが可能となります。
・住みたい場所を選ぶ
・気に入ったマンションを選ぶ
・今の学区内から選ぶ
・予算の範囲で実現可能な街を選ぶ
・掘り出し物をじっくり選ぶ
エスカレーター式で、なんでもお任せで進められる新築マンションに比べ、選択肢がかなり広いだけに、少しだけ玄人好みといえるでしょう。
一般的にいわれるメリットは以下のとおりです。
・初期費用が安く抑えられる
間違いなく最大のメリットです。新築マンションに比べて価格が安いため、費用を抑えられます。ただし、仲介手数料がかかります。それでも新築マンションとくらべて「時価」で買えるため、平均的な値下がり幅は少ないと言えます。浮いた費用を水回りや自分好みの間取りのリフォームに回しても、新築より安く済ませることが可能です。
・隣近所が最初から確定した状態で入居できる
新築マンションの最大のリスクは隣近所の住人。常識がない人、騒音源となる人が上や隣に越してくることです。このようなリスクはどんなマンションにも可能性がありますが、中古物件では、新築物件よりも避けることが簡単です。ただし、そのためには実際に住んでいる売主に入念なヒアリングが必要になります。
・物件の状態を見て、買える
日当たりの状況や玄関から実際の周辺環境まで歩いて調べられるのもメリットです。新築マンションの青田買いでは実物を見ることは難しく、想像するしかありません。
・マンション全体の管理が見られる
後述しますが、快適なマンション生活のためには良好な管理が必要です。管理が行き届いているかどうか、実際に見ることができます。やる気になればマンションの財政状況もチェックできます。自分で確認できなくてもプロに判断してもらうことも可能です。
・コストダウンの影響が少ないマンションを選べる
現在(執筆時2020年2月)、新築マンションで建設そのものにコストがしっかりかかっていると思える物件はごく少数です。マンションというのは極めてローテクなものですが、ここ数年のマンションの構造は進化するどころか、退化している事例をよく見ます。退化している物件は、青田買いの段階で判断するのは難しいものです。ここ15年くらいに分譲された物件を俯瞰すると、リーマンショックの少し前や震災直後に企画された物件が、築年数とマンションの作りにバランスが取れているように感じます。
一方、デメリットとしては、次のことが挙げられます。
・間取りや設備に古い面がある
やはり新築マンションを見たあとだと、設備面や間取りが古いと感じてしまうかもしれません。マンションは壁と床の空間を買うもので、間取りや設備は入居後に変更できますが、玄関ドアや窓サッシ、インターホンなどは、マンション全体の共有部分となるため変更できません。
・コミュニティが固まっている場合がある
新築マンションは一斉入居で、全員同期。コミュニティがそこで培われます。しかし中古マンションの場合は既に周辺でコミュニティが固まっているため、自分から積極的にならないと、マンションによっては溶け込むまで時間がかかる場合があります。
・1981年6月以前の物件は耐震性に不安がある
今の耐震基準は1981年から始まっています。阪神・淡路大震災では新耐震基準のマンションには被害が少なく、旧耐震基準の物件に被害が多く発生しました。生命リスクは秤にかけられないので、私なら旧耐震基準マンションは買いません。
一方で、東日本大震災のときには新耐震・旧耐震で被害に統計的な誤差が出なかったというデータもあります。
Q.仲介業者との正しい付き合い方はありますか
第36回すばる文学賞を受賞した新庄耕著『狭小邸宅』は、不動産仲介業者が舞台で、住宅を売ることができない営業担当者が主人公の話です。
話の前半分は、家を売ることができない営業担当者が上司から責められ、追い込まれていく描写となっています。彼は、とある上司からの教えによって売れる営業担当者に変身するのですが、この小説は私たちが中古マンションを探す際に、目の前の営業担当者の思考がどうなのかを類推することができる良い教科書です。
不動産仲介業は手数料商売です。あなたが物件を購入するか売却するかまでは、いくら時間をかけても1円も入ってきません。毎日が接客と売上ノルマ達成に追われる立場なのです。そのため、表面上は親切でもまったく見込みのない客、購入時期が確定していない希望者とみなされると、時間の無駄と敬遠されてしまいます。それでも歓迎してくれる人がいるなら、それは現状売上が達成できず困っている、力のない業者や担当者でしょう。
以上のことを踏まえて質問に答えますと、中古マンションの購入プロセスは大きく2つに分類され、購入イメージが具体的かどうかで行動すべきパターンが異なります。
(1)めぼしいマンション、購入条件が決まっている場合
すでに購入検討地域に住んでいて、希望物件や条件が固まっている人なら、SUUMOやYahoo!不動産など不動産ポータルサイトなどから具体的な物件を見つけて業者に電話したほうがいいでしょう。
不動産ポータルサイトに出している業者は、売主から媒介契約をもらったうえで掲載しています。囲い込みトラブルとは無縁です。
(2)まだ具体的なマンションや地域自体も決めかねている場合
この場合は、まずは住んでみたい街に行ってみて、地場の不動産仲介業者を訪ねましょう。対応が画一的な部分が強い大手仲介よりも、地場の中小業者のほうが親身になって物件案内や条件作成に応じてくれるはずです。
どちらの場合も、条件面どころか「購入時期が決まっていない」顧客は単なるお荷物です。
もし、あなたが嘘をつくことに後ろめたさを感じていないのなら、具体的なスケジュール、たとえば「来月末までには契約したい」とか「周辺の新築マンションを見てきたのだが、今購入できる中古マンションも比較検討して、良い物件があれば契約したい」と話すのもありだと思います。
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