後期高齢者の医療費負担割合を2022年度から所得に応じて1割から2割へと引き上げる方針が社会保障制度改革の中間報告に盛り込まれた。制度変更された場合に何が変わるのかを理解するためにも現状の公的医療保険制度についての正しい知識が必要だ。後期高齢者の窓口負担や保険料負担について整理する。

現状の医療費の自己負担割合は ?

大和ネクスト銀行
(画像=Shutterstock.com)

現状、病院やクリニックで受診した際の医療費の自己負担は、70歳未満が3割、74歳未満が原則2割、75歳以上が原則1割となっている (2019年12月末時点) 。団塊の世代が75歳以上になり医療費の急増が予測される2022年度に向けて、一定以上の所得がある75歳以上の医療費の自己負担割合を引き上げるというのが検討されている内容だ。

現状の制度でも70歳以上で一定の所得がある人は「現役並み所得者」に該当し、医療費の3割を負担することになっている。現役並み所得者の目安は、夫婦2人世帯で収入額520万円、1人世帯で収入額383万円だ。75歳以上で2割負担の対象となるのは、これよりも低い収入額の人となることが想定される。

後期高齢者医療制度とは ? 75歳以上になると保険料が変わる

現状の国民皆保険制度では、75歳未満であれば会社員なら健康保険 (社会保険) 、自営業者なら国民健康保険の公的医療保険に加入することになる。そして75歳以上になると後期高齢者医療制度へと移行する。

後期高齢者医療制度で納める後期高齢者医療保険料は、所得に応じた所得割と全員に一律に課される均等割に分かれる。保険料は各都道府県の後期高齢者医療広域連合によって異なる。市町村の窓口に電話をするか、ホームページの試算用シートを使えば、自分の保険料のおおよその金額を確認できるだろう。

東京都後期高齢者医療広域連合で公開されている計算例では、77歳で公的年金等の年間収入が203万円の場合、年間保険料は7万8,600円だ。

知っておきたい高額療養費制度の仕組みと上限額

医療費負担に関連する制度として知っておきたいのが「高額療養費制度」だ。1ヶ月間 (1日から月末) における医療機関や薬局の窓口負担額が一定額を超えた場合、超えた分の金額が戻ってくる制度のことをいう。高額療養費制度の上限額は年齢や所得によって異なる。

70歳未満の場合、1ヶ月の上限額は世帯ごとに以下のとおり定められている。(※2020年1月現在)

所得区分 自己負担限度額
年収約1,160万円超 25万2,600円+ (医療費-84万2,000円) ×1%
年収約1,160万円以下 16万7,400円+ (医療費-55万8,000円) ×1%
年収約770万円以下 8万100円+ (医療費-26万7,000円) ×1%
年収約370万円以下 5万7,600円
住民税非課税者 3万5,400円

一方、70歳以上で年収が約370万円以下、現役並み所得者に該当しない場合、外来のみの個人ごとの上限額1万8,000円が別途設けられる。

たとえば、年収約200万円で、外来での自己負担額が1ヶ月で3万円だった場合、1万2,000円が上限額を超えた分として支給される。なお、住民税非課税世帯においては、上限額は1ヶ月8,000円となる。

また、過去12ヶ月以内に3回以上に渡って上限額を超えた場合、4回目からは「多数回該当」となり、上限額が引き下げられ負担がさらに軽減される。多数回該当の場合の上限額は以下のとおりだ。なお70歳以上の場合、住民税非課税者には多数回該当の適用はない。

所得区分 自己負担限度額
年収約1,160万円超 14万100円
年収約1,160万円以下 9万3,000円
年収約770万円以下 4万4,400円
住民税非課税者 2万4,600円

高額療養費の支給申請をする場合、75歳未満であれば、健康保険組合や共済組合・協会けんぽなどに問い合わせることになる。75歳以上であれば、後期高齢者医療広域連合に連絡する必要がある。

高額療養費の支給を受けるには領収書の添付を求められることがある。高額療養費制度の対象になりそうなときは領収書を忘れず保管しておくことも大切だ。

退職後の生活をしっかりシミュレーションしよう !

退職すると年金の受け取りが始まるだけでなく保険料の負担額も変わってくる。今のうちに医療保険制度の概要を理解し、退職後の生活をしっかりシミュレーションしておきたい。また前半で紹介した後期高齢者の医療費負担割合の増加など制度変化も目まぐるしいため、最新情報をキャッチアップしてシミュレーションを定期的に見直す行動が求められる。(提供:大和ネクスト銀行


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