「自分」主語から「相手」主語に変えよう
では、会話で相手の時間をムダにしないためには、どのような点に注意するとよいのでしょうか。
「話が長いな」と思う要因には、時間によるストレスと、話の内容によるストレスがあります。そこで、この二つの観点から考えてみたいと思います。
まず、話の内容について。
仕事の場面では特に、話すべき内容を事前に準備しておくとよいでしょう。例えば、
「今日は〇〇さんに、この件に関するお考えをうかがいたいと思っています」
のように、単刀直入に本題に入り、雑談に頼らないようにします。
また、「私は……」と自分を主語にするのではなく、相手を主語にした内容を意識します。例えば、
「〇〇さん、お正月休みはイタリアに旅行されていましたね。美術館巡りはいかがでしたか?」
といった具合です。
相手を主語にするためには、相手の状況に思いを馳せてみるとよいでしょう。相手の仕事内容や、置かれている立場を想像してみるのです。オフィス以外の場所で会うなら、「今日はどちらから来てくださっているのだろう」とか、繁忙期なら「お忙しい時期にお時間を取ってくださったんだな」といったことも想像できます。相手に憑依するくらい相手のことを想像すれば、そんな相手と面会できたありがたみが倍増し、自然と相手を主語にした会話になります。
かといって、自分のことを話してはいけない、ということではありません。自分の意見を堂々と話すことも大切です。
その場合は、自分が話す時間を意識します。話し始めたら、頭の中でストップウォッチを押して秒数を測るのです。私の場合、仕事なら3~5秒で結論を伝えるようにしています。もし、相手が「もっと聞きたい」と興味を示したら、プラス10秒で説明します。そして、
「〇〇さんはどう思われますか?」
と相手に会話のバトンを戻します。15秒以上、一人で話し続けないことを目安にするとよいでしょう。
時間に関しては、もう一つ、自分と相手が話す比率も重要です。
仕事なら、自分が話すのは全体の1~2割で、残りの8~9割は相手に話してもらいましょう。プライベートでも、自分ばかりが話してしまうと、友人としての信頼や、「また会いたい」と思わせる魅力を確実に失ってしまいます。良好な関係を維持するには、「親しき中にも礼儀あり」と考えて、自分が4割で相手が6割くらいの比率がいいだろうと思います。
大切なことは、相手が何を求めているかに敏感になって、それ以外の話をしないことです。よかれと思って話したことも、それを相手が求めていなければ、疎まれてしまいます。
《取材・構成:前田はるみ》
《『THE21』2020年3月号より》
吉原珠央(よしはら・たまお)
イメージコンサルタント
プレゼンテーション、コミュニケーションをメインにしたコンサルティングを行なう他、「体感して学ぶ」というオリジナルのメソッドで企業向け研修や講演活動を全国で実施。また、「ストレスフリー」をコンセプトにした化粧品、ファッションアイテムなどを扱うブランド「PURA Tokyo」を立ち上げ、会社を経営。『「また会いたい」と思われる人の38のルール』(幻冬舎文庫)、『自分のことは話すな』(幻冬舎新書)など、著書多数。(『THE21オンライン』2020年03月11日 公開)
【関連記事THE21オンラインより】
・通販レジェンドの「伝わる」トーク術とは?
・楽しい会話は「気分」が9割! 会話と気分の意外な関係
・途切れない雑談のコツは「1問2答」にある!