新型コロナウイルスの影響で倒産した企業は、すでに「100件超」と報道されているが、実はこの「100件超」という数字は氷山の一角だ。調査会社の発表をベースにしており、負債1,000万円以上の倒産を調査対象にしているため、実はもっと経営破綻の件数は多い。

東京商工リサーチの調査結果

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(画像=PIXTA)

民間調査会社の東京商工リサーチの発表では、5月18日時点でコロナ関連による負債1,000万円以上の倒産件数は全国で156件確認されている。

2月に2件、3月に23件、4月に48件と件数が増え続け、5月はすでに18日時点で4月とほぼ同水準の47件の倒産が発生している。5月は大型連休を挟んだことも考慮すると、このままいけば5月だけで100件程度の倒産が見込まれているという。

ただ、東京商工リサーチが発表している数字は、前述の通り負債1,000万円以上の倒産を対象としているほか、担当弁護士や当事者から確認が取れた事例のみを集計しているという特徴がある。そのため、実際にはより多くの経営破綻が起きていると考えられる。

コロナの影響で倒産が多い業種は?

東京商工リサーチの調査結果から全体の倒産件数を把握するのは難しいが、倒産が多い業種や都道府県などの傾向を知るには大いに役に立つ。業種別にみると5月18日時点では「宿泊業」の企業の倒産が30件で最多となっており、「飲食業」が24件、「アパレル関係」が21件と続いた。

宿泊業:ファーストキャビンなどが経営破綻

宿泊業では「ファーストキャビン」や「WBFホテル&リゾーツ」などの倒産が大きく注目された。ファーストキャビンは、高級感があるカプセルホテルの運営で話題となり、運営受託やフランチャイズのスキームでカプセルホテルを全国で25軒まで拡大していた。

新型コロナウイルスの感染拡大前から経営状況が厳しく、インバウンド客の激減や外出自粛などによって客室稼働率が大幅に落ち込んだことが追い打ちとなった形だ。負債総額は2019年3月期決算時点で11億3,082万円となっている。

ホテル・リゾートの運営受託などを手掛けるWBFホテル&リゾーツの経営破綻も、新型コロナ関連の大型倒産として注目を集めた。コロナ拡大前に入っていたインバウンド客の予約キャンセルが経営に大ダメージを与えた格好だ。

宿泊業界では、個人事業主として民泊ビジネスを展開している人も苦しい状況に陥っている。民泊業界ではアパートやマンションの一室を借りてゲストの受け入れをしている人が多いが、売上がほぼゼロになったものの家賃は毎月発生しており、赤字状態に歯止めが掛からない状況だ。

すでに民泊事業者を対象にした撤退サービスも複数登場している。

飲食業:非デリバリー型の飲食店が大きなダメージ

外出自粛などで売上が激減した業界といえば飲食業界だ。特に店舗を構えて客席で料理を提供する非デリバリー型の飲食店へのダメージは大きく、ファミリーレストランや居酒屋などでの倒産が目立っている。

最近では、焼肉レストラン「牛角」のフランチャイズ店を経営する静岡のウィンウィン社の倒産が明らかになった。コロナ前にも経営状況が厳しく、新型コロナウイルスの影響で資金繰りがさらに悪化したものとみられる。

創作居酒屋を経営していた北海道札幌市のTeam.h社も、経営破綻した。宴会客などのキャンセルが2月末以降に相次いだことが主な理由のようだ。

アパレル関連:一部上場企業であるレナウンが倒産

アパレル関連では、東京証券取引所(東証)の一部上場企業であるレナウンが5月15日に事実上の経営破綻となったことが分かった。上場企業のコロナ倒産としては初の事例で、アパレル業界の厳しい状況が改めて浮き彫りになった形だ。

レナウンは1902年に創業した老舗のアパレル企業だ。かつては「レナウン娘」というCMソングでも知られ人気アパレルに成長したが、最近は海外ブランドとの競争に苦しみ、コロナウイルスの影響での売上減が経営破綻の決定打となった。

コロナの影響で倒産が多い都道府県は?

東京商工リサーチによれば、新型コロナの影響で倒産が多い都道府県は5月18日時点で、1位が東京都(34件)、2位は北海道(15件)、3位が大阪府(13件)、4位が静岡県(9件)、5位が兵庫県(5件)となっている。

大都市を有する都道府県には元々企業が多いことも考慮して数字をみるべきだが、大都市は特にインバウンド消費の激減の影響を多大に受けており、特に宿泊業や飲食業を営む企業が苦しんでいる。

第三波、第四波の可能性も捨てきれず…

新型コロナウイルスの感染者数は現在、都市圏でも減少傾向にある。このまま終息に向かっていけば早めの経済の回復も期待できるが、第三波、第四波の可能性も捨てきれず、難しい舵取りを迫られている企業経営者は多い。

国の助成金・補助金制度や無金利融資などのスキームは最大限活かしつつ、何とかいまの苦境を乗り切るための戦略を策定・実行することが求められている。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)