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2019年8月7日配信記事より

CMSサイトを軸に、サイトの構築から運用・保守まで、トータルマーケティングサービスを展開する、株式会社インフォネット。2019年6月25日にマザーズ上場を果たした同社取締役CFO日下部拓也氏にお話を伺った。

キャリアのスタートは税理士法人。業種問わず担当し、知見を磨いた。

― まずは日下部さんがCFOになるまでのキャリアについて教えてください。

私のキャリアのスタートは税理士法人からでした。国内法人部に所属しており、特に専門領域はなく業種は問わずに担当していました。そのあとの監査法人も同じですね。スタッフという立場だったのもあるかと思いますが。

― 様々な業種を担当するなかで、それぞれ特色や違いはありましたか?

税務と監査では、論点が異なってきますが、一貫していえることは例えば、製造業は原価、小売業は棚卸、といったように、様々な業種が論点にすることや、その中身を知ることが出来たのは強みになりましたね。税務も監査も、普通に企業のなかで経理業務をするだけでは見ることができないものも見れますし。

また、税務と監査は、ある意味疑ってかかるのが仕事になるので、すべてにおいて裏付けが必要なのですが、その視点は現在においても自分の業務のベースになっていると思っています。

その後、事業会社に転職しましたが業務の一つ一つを税務・監査の双方の視点で検討できるようになれたことも良かったと思います。

― 事業会社では、税理士法人や監査法人での経験が活かされたことはありましたか?

入社した会社は、当時マザーズ上場直後で、東証一部への市場変更の準備中でした。監査が入っていたので、監査を受ける上での、勘所のアドバイスを的確に出来たのは良かったと思います。

― では、その事業会社では市場変更を主なミッションにされていたのですか?

そうでもないです(笑)

事業会社にいった経緯は、純粋に別のことがしたかったということがあります。事業会社ならどこでも良かったのですが、その会社が創業から3年半でマザーズに上場していて、しかも独立系だったので、純粋に興味がありました。加えて、当時のCFOが会計士だったこともあって、急成長ベンチャーで専門性を磨けるのではないかという点に魅力を感じて入社しました。ポジションは経理のいちプレーヤーとしての入社でした。

― 税務・監査の業界から、いきなり事業会社の経理実務に入る苦労はなかったのでしょうか?

仕訳を切るのもシステムに入力するのも初めてなので、多少不安はありました。でも、初めての業務であったとしても例えばその仕訳入力が、どういう資料になり何が必要とされるのかというゴールは見えているので、なんとかなりました。

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自分を売り物にしたくてもう一度会計業界に。そしてインフォネットとの出会い。

― 一度事業会社へキャリアチェンジしたら、そのまま事業会社でやっていくケースが多いように思いますが、日下部さんは会計事務所に戻っていますよね。どうしてでしょうか?

事業会社に入って仕事をしてみて、実際にお役に立てたと思いました。一方、自分自身が売り物ではないということに少し物足りなさやさみしさも感じたんです。売れる資格(会計士資格)を持っているので、それを売るということをもう1度やりたいと思いました。

そう思って転職した会計事務所は、デューデリジェンス(以下、DD)などを中心に行っていて、やったことのない分野だったので興味を持ちました。DDをやる理由も色々あって、M&Aと、金融支援を受けたいのとではやることが違います。

金融支援を受けたい場合のDDは、通知表で例えるとどこが1なのかを探すところから始まる。再生計画につながる起点を定めるところからですね。そのためには、数字という事実だけを見るのではなく、経営者と対話することが大事だと学びました。数字だけを見ていると、セオリーなんかも分かるので先入観を持ってしまうんです。でも、どうしてそうなったか、そこにどんな想いや考えが働いていたかを聞ければ、経営者がどうしていきたいかという方向性が分かります。

DDのあとは、経営者と一緒に立てた再生計画に沿った事業計画通りに進行しているかを見て行くことになりますので、この過程はおもしろく、性に合っていたと思います。

従業員を愛する経営者の哲学に感銘を受ける

― DDや再生計画の進捗管理の過程のどのあたりに面白さを感じたり、学びがあったのでしょう?

DDやバリュエーション、再生計画のモニタリング等の技術的な点はもちろん勉強になったのですが、1番勉強になったのは、色々な経営者の方とお話することで、その方々の哲学に触れられたことです。

印象深かったのは、震災による業績悪化で再生計画に入った会社で飲食店を数店舗営んでいる女性経営者です。割とご高齢の方なのですが、従業員からの人望がすごくある。驚いたのは、この方が毎日全店舗のすべての注文伝票とレシートを突合してたことです。

毎日すべてチェックするのは労力としてもすごいのですが、一方で従業員からしたら、疑われていると感じるのでは?と疑問になり、ある日意図を聞いてみたんです。そうしたら「従業員を疑っているから全部チェックする」とは真逆で、「疑いたくないから全部チェックする」とおっしゃっていました。

信じていたいから見る。そこでもし仮に何かあれば自分がしっかり見つけて、それ以上の間違いがないようにしてあげたい、と。従業員のことを愛しているのが伝わって、これが彼女の哲学なのだなと感銘を受けました。

―貴重な経験ですね。そうやって様々な経営者に触れるなかで、成功する方の共通点はありますか?

自分を信じている人が多いように思います。自分の哲学からブレない人。

考え方は柔軟に変えるものの、人から言われたことを鵜呑みにするのではなく、自分で考えて道を決める人が多かったですね。経営者に限らず大事なことだと思いますが。

―CFOとCEOは経営者として密接かと思いますが、ご自分と相性が良い方はどんな方でしょうか?

その質問には、私がインフォネットに来た経緯が当てはまると思うのですが、言いたいことが言い合える間柄かどうかが重要だと思います。私の場合は会計事務所の後に入った投資会社の投資先にここインフォネットがあったんです。私は、本当はその投資会社でエネルギー事業をやる予定だったのですが、インフォネットでDDをやる人がいないから、経験あるしやってきてと言われて来たのが最初でした。

来てみて代表の岸本と話してみると、彼は自分がこうしたいという明確なビジョンがある一方で、自分自身に足りない部分もしっかりと理解していました。CEOとCFOは、一緒に経営していくので、どちらかが圧倒的に上の立場になってしまうと、一緒にやっていても足し算にしかならないと思うんです。

その点、自分に足りないものを理解している彼とは、言いたいことも言い合えましたし、良い距離感も保てました。同い年というのもあって、話やすかったですね。一方の考え方が他方の意見によってブラッシュアップされたりブレイクスルーしていくような感覚です。

―すごく運命的な出会いですね。どのタイミングで御社に誘われたのですか?

当時在籍していた投資会社が、インフォネットに投資しますとなって、担当は誰にしようかとなったとき、DDやったんだから日下部やってこいと言われて担当になりました(笑)

そうして一緒に事業計画を策定するなかで、インフォネットに常駐するようになり、けっこう早々に来ないか?と誘ってもらいました。決めるまでに時間もあまりかからなかったです。当然、この先この会社がどうなるか、少なくともDDをやったときに描けていますし、計画をしっかり達成できるとも思っていました。であれば、自分が来てやってほうが早いと考えたんです。

もったいぶって3日くらい悩んだふりをしましたが、早い段階でお受けしました(笑)

―以前、会計事務所に戻った時には自分を売りものにしたかったとおっしゃっていました。それはインフォネットに来た時には叶っていたのでしょうか?

叶っていると思っています。

経理のプレーヤーだったときは、そこにある業務をこなしていました。それがCFOになると、上場のためには何が必要で、どんな資本政策が必要で、各関係先と適切な関係を築いて、と能動的に自分の判断でやることがフェーズによってたくさんあります。当然、各関係者からは私に質問がくるので、そこでは私が売り物になっていると感じますね。個としての存在意義というか。

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2年でマザーズ上場。大切なのは「覚悟」

―入社して2年という、短いスパンで上場を果たしました。なぜこの短い期間で実現出来たのでしょうか?

CEOが固い意志で「やる」と決めてくれたことです、CEOの理解がどれだけあるかがとても大事でした。この短い期間で上場できたのは、最短距離という意味で正直奇跡に近いと思っていますが、キーだったのはそこです。

上場までの統制・管理体制の整備局面では、なんでこんなことをするのか?と思うことも多くあります。ただ事業を回していくだけなら不要なことも多いんです。一方でCEOがそれをやるんだと決めていないと、組織全体を動かすことは出来ません。CEOの岸本にはその意志がしっかりあったからこそ全社が一丸となって取り組め実現出来たと思っています。

しかし、この2年間は、ハードワークでした(笑)

管理部門ゼロからのスタート

―上場までに1番大変だったことは何でしょうか?

上場までの2年のうち、特に最初の1年がすごく大変でした。

実は、私が入社した時は、管理部門がほぼなかったのです。インフォネットは東京に本社があって、福井と佐賀に支社があり、福井には総務管理者が2名いました。

でも東京は、私の入社前にアルバイトさんも含めて全員辞めてしまっていて0人に。月次決算も出来ていないくらいの感覚だったんです。ですので、最初はまず採用から取り掛かって、チームを作っていきました。

業績は自然成長で十分だと思っていましたが、管理が0だったので、この点は自分が力業でやらないといけなく、常に仕事をしていましたね。事業サイドは平常運転の中、私はめっちゃ働いているみたいな(笑)。心が折れる暇もなく、やっていましたね。

―かなりのハードワークですね。採用はうまくいったのですか?

これが、うまくいきました。運がよかったんです。最初に採用した人事労務の担当者は、今でも頑張ってくれています。かなり優秀で、1人で綺麗にまとめてくれました。

経理周りも、自分1人じゃ回らないので採用したかったのですが、なかなか良い巡り合わせがなく、やっと去年の6月に男性を2人採用出来ました。1人は税理士の勉強をして、税理士法人で10年働いた方。もう1人は20代の経理マンでした。経理マンの方は、IPO準備に関わっていた会社で計画が頓挫してしまって、目標を失って転職先を探しているところに巡り合いました。ちょうど良いねと(笑)

ただ、実際に上場を果たした今では、その彼(上場を目標にしていた経理マン)含めてメンバーのモチベーションコントロールが重要になって来てるなと感じています。上場した会社は、ある程度整っているからこそ、日常業務という意味ではやることが決まってしまって飽きる部分も少なからずあります。なので、メンバー1人1人と対話を繰り返して、いまはその彼には経営企画に行ってもらってステップアップを目指してもらっていたりします。

会社にはいろんなモデルがあって、稼ぐポイントやウイークポイントなど、業種や会社によって違います。そこが分かるような、広い視点を持ってもらいたいと思っています。常にその人にとってのチャレンジングな新しいミッションがあった方が楽しいと思うんですよ。

せっかく一緒に仕事をしてくれるメンバーなのであれば、自分のミッションに熱中できるという意味で楽しく過ごして欲しいです。自分自身も、楽しく仕事がしたいと思ってこれまでにキャリアの各々のミッションを熱中しながら歩んで来て、結果いまも楽しいと思えているので、押し付けるわけではなく、こういう選択肢もあるよということを知ってもらえればと思っています。 これからを楽しむ自信がある

―これからの、日下部さん自身の目標は何でしょうか?

まずは株価の安定、事業グロースを目指すなかで、より多くの個人投資家はもとより機関投資家にも株を持ってもらえればと思っています。

また、最近では海外投資家も日本のベンチャーに興味を持っていますので、海外投資家にも株を持ってもらえたらもっとおもしろいかなと思うので、チャレンジしていきたいですね。これからも、変わらず楽しむ自信はあるので、目標に向かって楽しんでいきたいと思います。

―柔軟にキャリアチェンジをしてきて、いまもこれからも楽しんでいらっしゃる日下部さん。社内での写真撮影の際には、同い年が多いという幹部陣との仲の良さもうかがえました。ありがとうございました。

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【プロフィール】
日下部 拓也(くさかべたくや)株式会社インフォネット 取締役

1981年東京都東村山市生まれ。公認会計士。公認会計士試験合格後、税理士法人トーマツ(現デロイトトーマツ税理士法人)入所し、主に法人税務を担当。その後、有限責任監査法人トーマツに出向し製造業、卸売業、金融業等の監査業務に従事。一般事業会社でのIPO業務、IR業務、財務経理業務等を経て、会計事務所にて企業再生、M&A等に係るデューデリジェンス業務等に従事。その後、投資事業会社を経て2017年6月に株式会社インフォネット取締役管理部長に就任。