ベンチャー企業と倉庫会社、それぞれの取り組み
有名ブランドが売れ残った在庫を大量に焼却処分していたことが報道され、消費者や環境団体などから非難を浴びたことで、一躍世界的に注目が高まったアパレルの廃棄問題。世界では年間228億着ものアパレルが廃棄されていると推計され、在庫を抱えすぎたために倒産するアパレル企業も後を絶たない。SDGsへの関心も高まる中、この問題を解決するにはどうすればいいのか? 2社の取り組みを取材した
ウィファブリック――メルカリ・ラクマで副業をする個人の仕入れ先に
今、メルカリやラクマでアパレルを販売する個人が増えている。中には、自宅にあるアパレルを販売するだけに留まらず、身につけたノウハウを活用して、副業にしようとする人もいる。ところが、個人が50着や100着といった単位で、安くアパレルを仕入れられる場はほとんどなかった。
そこで、そうした人たちと、売れ残った在庫を抱えたアパレル企業とをマッチングするプラットフォーム「SMASELL(スマセル)」を運営しているのが、2015年に創業した〔株〕ウィファブリックだ。2017年7月にローンチし、現在、サプライヤーは約900社、バイヤーは約10,300ユーザーになっている。
扱っている商品には、アパレルのA品(通常の流通に乗って販売されるもの)で売れ残ったものの他、B品(色合いなどが規格と微妙に違うため、アウトレットなどで販売されるもの)、アパレルレンタルなどで着用された古着、ブランドものの靴、タオルなどがある。
同社を創業した代表取締役の福屋剛氏は、大学卒業後、繊維商社に10年間勤め、繊維製品の企画・生産・販売に従事した。そのとき、アパレルやインテリア製品が廃棄されていくのを目の当たりにしていたことが、起業につながったという。
「調べてみると、世界中で廃棄されるアパレルの量はものすごくて、解決すべき深刻な問題だと思いました。また、商品を作っている人は、その商品に愛着を持っていますから、本当は廃棄したくないはずです。けれども、新品を扱う1次流通は、商品をどんどん作って在庫を積まないと利益を上げられない構造になっています。しかも、売れ残った在庫を2次流通に乗せるとブランドが毀損すると、1次流通のビジネスをしている人たちは考える傾向にあり、アパレル業界にはブランド価値を守るために廃棄処分せざるを得ないという考え方が存在しています」(福屋氏)
1次流通で売れ残った在庫を、どうすれば価値を下げずに商品化できるのか。福屋氏がまず考えたのは、素材として使って、新たな商品に仕立て直すことだった。しかし、新たな商品に付加価値をつけたつもりでも、もとの商品のブランド価値よりも低くなるうえ、廃棄するよりもコストが高くなってしまうという問題があった。寄付をすることも考えたが、それも廃棄より高コストだった。
そうした試行錯誤を経てたどり着いたのが、メルカリやラクマでアパレルを販売している個人に、そのままの形で売るという販路だったのだ。
「2次流通になるので、ブランド価値を下げることになると考えるアパレル企業は、やっぱりあります。しかし、SDGsへの関心が高まったことで、廃棄するほうが、もっとブランド価値を毀損すると考えるアパレル企業が増えてきました。特に上場企業は、フランスでアパレルの在庫の廃棄を禁止する法律ができたことにも敏感に反応しています。それに、費用をかけて廃棄するくらいなら、いくらか価格が下がっても、販売して売上げに変え、必要とする人に届けることができます」(福屋氏)
サプライヤーは、自社で「SMASELL」に出品し、注文が入れば自社の倉庫から出荷することもできる他、出品から出荷までをウィファブリックに委託することもできる。また、商品をウィファブリックに買い取ってもらうこともできる。
「一般的には、従来のショッピングモールや百貨店が委託販売を行なったあとには、サプライヤー側に返品が発生するのですが、SMASELLは廃棄をゼロにすることが目的ですから、一度委託で預かった商品は返品せずに、価格を相談のうえで、全量買い取りをしたいと考えています。ただ、サプライヤーとしては少しでも高く売りたいので、まずは委託販売から始めることがよくあります。当社としても、委託販売をしている間に、サプライヤー側と売れ行きを見ながら、適正な買い取り価格設定を相談して決めていきます」(福屋氏)