新型コロナウイルス感染の影響でビルオーナーへの「賃料の猶予・減額のプレッシャー」が強まっています。2020年3月31日に国土交通省は、不動産業界の主要7団体に対して「テナントの賃料支払いの猶予など柔軟な措置をしてほしい」との要請を出しました。このような状況下におけるビルオーナーの対応を考えます。

賃料の減額交渉にオーナーはどう対処するのが正しいのか?

ビルオーナー,賃料減額
(画像=Андрей Яланский/stock.adobe.com)

国土交通省による賃料支払いの猶予などの要請とともにコロナウイルス感染の影響が深刻化するなか「経営が厳しいテナントの賃料を猶予・減額すべき」との意見がちまたでも散見されるようになりました。しかし「オーナーが賃料の猶予・減額に応じなければならない」という法的根拠はありません。賃料の猶予・減額は「あくまでもオーナーの好意である」というのが前提です。

一方、テナント側から見ると賃料の減額交渉そのものは正当な権利です。(ただし定期借家契約で特約ありの場合を除く)そのためオーナーには減額交渉があった際、交渉の席につく姿勢が求められます。そのうえでテナントの状況や希望する内容をしっかり把握し、最終的なジャッジをするのが望ましいでしょう。

「話し合う気はない」といった態度は、長期滞納やテナントの経営破綻など後々トラブルに発展する可能性があるため避けるのが賢明かもしれません。

賃料の猶予・減額の要請に対するオーナーの3つの選択肢

テナントから猶予・減額の要請があったときのオーナーの主な選択肢は次の3つが考えられます。どれを選ぶとよいかは判断が分かれるところです。

選択1 猶予・減額の要請に応じない(債務不履行を追求する)

本来テナントの損失をビルオーナーが埋めなくてはならない法的根拠はどこにもありません。そのため「契約通りの賃料を払ってください。賃料を払わない場合、通常通り債務不履行を追求します」という選択もありえます。この選択をすることでオーナー自身は損失を負わなくて済むという点がメリットです。しかしその結果、退去が発生し長期空室になるリスクがある点はデメリットといえるでしょう。

特に長期的な不況になった場合、好立地物件でもテナントの入居がなかなか決まらない可能性もあります。

選択2 猶予・減額の要請に応じない(ただし債務不履行を追求しない)

同じ要請に応じない選択でも債務不履行を追求しない姿勢を見せるケースもあるでしょう。債務不履行を追求する場合は、「賃料を支払わなければ督促を行い、さらに退去要請をする」ということもありえます。逆に債務不履行を追求しない場合は「賃料を支払えなくても督促や退去要請をしない代わりに状況が好転したら支払ってください」というものです。

ただ後々トラブルにならないように、例えば「債務不履行の追求をどれくらいの期間しないか」「滞納分の家賃を分割で支払うときに遅延損害金をつけるかなど」細かい条件を決めて合意書を交わすのが賢明です。

選択3 猶予・減額の要請に応じる

要請に応じる際も「相手の要求を100%受け入れるか」「部分的に受け入れるか」でオーナーの負担は大きく変わってきます。また「どれくらいの期間、猶予・減額するか」といった判断もかなり難しいところです。いずれにせよ減額交渉に応じる際はその条件を明記にした合意書を残すことが必須です。本来免除を行った損失額は寄付金として計上しなくてはいけません。

しかし2020年4月9日に国土交通省の事務連絡で不動産オーナーがテナントの賃料を減免した場合「減免分の損失額は税務上の損金として計上できる」と変更されています。

第4の選択肢「公的な支援制度の利用を推進する」

新型コロナウイルス感染の制度が整備されるなか、第4の選択肢として出てきたのが「猶予・減額の要請に応じないものの公的な支援制度の情報を提供する」というものです。経営の厳しいテナントが使える新型コロナ支援制度に「持続化給付金」「日本政策金融公庫の融資」などがあります。これらを利用することで売上が大幅に減少しても賃料を支払いやすい環境をつくることが期待できるでしょう。

テナントから猶予・減額の要請があったときは、支援制度をどこまで利用しているかヒアリングし必要に応じて情報提供・申請サポートをしていくのも一案です。(提供:ビルオーナーズアイ


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