Manegy
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2020年5月20日配信記事より

2020年4月1日から改正健康増進法が全面施行され、これまでの喫煙マナーがルールとして定められました。今回の改正法では、特に受動喫煙に関する規制が厳格化され、公共の場所での喫煙に一定の基準が設けられました。今後は喫煙者のみならず、各種事業者も喫煙に関するルールを頭に入れておく必要があります。改正法によって喫煙ルールはどのように変わったのか、改正点を中心に一つずつ確認してみましょう。

改正健康増進法の概要

今回の法改正は、2018年7月に成立した「改正健康増進法」に関するもので、主に受動喫煙を防止することが目的です。2019年1月と7月から学校や病院などで段階的に実施され、今回全面施行されました。

喫煙の対象になるたばこは、一般的な紙巻たばこを含む「たばこ」と、燃焼を伴わない「加熱式たばこ」を含みます。法律の内容は難解な法律用語を含みますが、ここからはなるべく分かりやすい言葉にして説明することにします。

屋内での喫煙は原則禁止

改正法によると飲食店・公共交通機関・行政機関・学校・病院・児童施設など、多数の人が集まる場所の屋内では、原則的に喫煙は禁止されます。さらに行政機関・学校・病院・児童施設と、バス乗り場や空港では敷地内が全面的に禁煙となります。ただし、所定の要件を満たせば敷地内に喫煙室を設置することができます。

今までは建物や店舗の出入り口付近外部に、灰皿を置いて喫煙スペースにすることもできましたが、今後は事実上認められなくなります。たばこの種類による区別もないため、加熱式たばこも同様に規制の対象になります。

各種喫煙室の設置に関する規定

これまで簡易的な仕切りなどで行われていた分煙も、今後は完全に隔離された喫煙室が必要になります。設置可能な喫煙室は4種類に分類され、細かい設置基準が決められているので、種類ごとにまとめておきましょう。

①喫煙専用室

施設の一部に設置可能で、内部で喫煙はできますが飲食はできません。一般的な事業者と、行政機関・学校・病院・児童施設などに設置できます。

②加熱式たばこ専用喫煙室

施設の一部に設置可能で、内部で喫煙と飲食もできますが、たばこの種類は加熱式に限定されます。一般的な事業者と、行政機関・学校・病院・児童施設などに設置できます。

③喫煙目的室

施設の一部または全部に設置可能で、喫煙と飲食どちらも許可されます。喫煙をサービスの目的とする、シガーバー・たばこ販売店・公衆喫煙所などがこれに該当します。

④喫煙可能室

施設の一部または全部に設置可能で、喫煙と飲食どちらも許可されます。法改正の経過措置として認められており、小規模な既存の飲食店などが対象になります。

これら各種施設では外部にたばこの煙が流出しないことと、たばこの煙を充分に浄化した上で室外に排気する措置を講じる必要があります。

標識掲示義務と立入禁止エリアの設定

喫煙可能な設備を持った施設には、4種類の喫煙室を明示した標識の掲示が義務付けられました。各喫煙室には専用の標識が必要で、施設内にはそれぞれの種類に合わせて、喫煙室があることを示す標識も設置しなければなりません。

また喫煙エリアは、20歳未満の人に対しては立入禁止エリアとして規定されます。これは喫煙を目的としない場合でも同様で、事業所や飲食店などの従業員に対しても適用されます。

従業員に対する受動喫煙対策

今回の法改正では20歳未満の人以外でも、受動喫煙を望まない人は法律によって保護されます。例えば各事業所は望まない受動喫煙を防止するために、勤務シフト・勤務フロア・作業の動線などを工夫しなければなりません。

専用喫煙室などの清掃は室内に喫煙者がいない状態で、室内からたばこの煙を完全に排出した後に行わなければなりません。やむを得ず室内の煙濃度が高い時に清掃する場合は、呼吸用保護具を着用する必要もあります。

また経過措置の対象になる小規模飲食店などでは、受動喫煙を望まない人が喫煙可能室内での業務を回避できるよう配慮すると同時に、求人の際にも喫煙可能な施設であることを明記しなければなりません。

小規模飲食店の経過措置

今回の法改正に対して、すぐには対応が難しい、既存の小規模飲食店などについては、喫煙可能室の設置が認められます。簡単にいうと、店内で現状のまま飲食と同時に喫煙が許されるわけですが、以下の条件を満たす必要があります。

・2020年4月1日時点で、すでに営業中であること。
・中小企業基本法における定義で、資本金5,000万円以下であること。
・客席面積が100㎡以下であること。

事業者への財政・税制支援

事業者が法律に対応するため、新たに喫煙専用設備を準備するにあたっては、財政・税制上の制度も活用できます。それが以下に説明する2つの制度です。

①受動喫煙防止対策助成金

中小企業の事業主が受動喫煙防止対策を行う場合、必要な工費・設備費・備品費・機械装置費に対して助成を行う制度です。一般事業所は経費の2分の1、飲食店は3分の2が上限です。

②特別償却又は税額控除制度

2021年3月31日までに、商工会議所などの指導に基づき経営改善設備の取得をした場合、特別償却(30%)か税額控除(7%)が適用される制度です。

指導・命令・罰則の適用

今回の改正法により、違反した喫煙状態を発見した場合には、事業者に対して指導がなされます。それでも改善されない場合は命令がなされ、違反者には罰則と罰金が科されることがあります。

まとめ

今回施行された改正健康増進法の目的は、受動喫煙の防止が中心で、喫煙者数の抑制を狙ったものではありません。喫煙者が肩身の狭い思いをするような、社会的差別を助長するものでもありません。

しかし今までのように他人に対する配慮を欠いた喫煙は、今後社会のどのようなシーンでも許されなくなります。これからは喫煙する人もしない人も、適度に距離を置きながらお互いを尊重し合う時間を楽しみたいものです。