Manegy
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2020年5月18日配信記事より

2020年6月、ハラスメント防止対策が企業に義務付けられる法律、いわゆるパワハラ防止法は施行されます。近年、多くの企業で課題となっている各種ハラスメント問題。組織として大きなリスクであり、総務・人事部にとってはしっかりと対応しなければならない事案です。本記事では、このパワハラ防止法についてご説明しましょう。

「パワハラ防止法」とは?

いよいよ、パワーハラスメント(以下、パワハラ)の防止を企業に義務付ける法律が施行されます。「改正労働施策総合推進法」、通称“パワハラ防止法”は、大企業では今年(2020年)6月、中小企業では2022年4月から対象となります。

この改正法で、企業(事業主)はパワハラ防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが求められ、適切な措置をしていないと是正指導の対象になります。

なお、企業に求められている措置は主に以下の3つです(各項のⅠ~Ⅲは対策例)。

①事業主によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発

 Ⅰ.社内報・パンフレット・社内ホームページなどに、パワハラの内容や背景、パワハラがあってはならない旨の方針を記載して配布する。

 Ⅱ.周知・啓発のための研修・講習などを実施する。

 Ⅲ.就業規則などで懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発する。

②苦情などに対する相談体制の整備

 Ⅰ.相談窓口を設置する。

 Ⅱ.相談窓口の担当者による適切な相談対応を行う。

 Ⅲ.他のハラスメント(セクシャルハラスメントや妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント)と一体的に対応できる体制を整備する。

③被害を受けた労働者へのケアや再発防止 等

 I.事実関係の迅速・正確な確認を行う(相談窓口の担当者や人事部門などが、相談者と行為者の双方から事実関係を確認し、場合によっては第三者からも事実関係を聴取する)。

 Ⅱ.被害者を配慮した適正な対応と、行為者への適正な対応を行う(関係改善の援助や配置転換、処分など)。

 Ⅲ.改めて、職場のパワハラ再発防止に向けた対応を実施する。

さらに事業主は、上記①~③の取組みと併せて、以下の取組みも行うことが望ましいとされています。

 ●相談者や行為者などのプライバシーを保護するために対応する

 ●パワハラの相談や事実確認への協力を理由とした不利益取扱いの禁止や周知、啓発

なお、パワハラ防止法が適用されるのは会社内だけではありません。労働者が業務を行う場所全てが“職場”となるため、オフィス外であっても業務が行われていれば該当します。 また、正社員だけでなく、パート・契約社員・派遣社員(派遣先企業での措置)など、全労働者が対象となります。

ところで、違反した企業は処罰されるのでしょうか?

実は、施行される2020年6月時点で、違反した企業に対する罰則は定められていません。しかし、必要に応じて企業への助言・指導・勧告が行われることがあります。また、勧告に従わない悪質な場合は、社名が公表される可能性もあるので注意しましょう。

職場でのパワハラとは?

パワハラの線引きは難しいと言われています。部下への指導がパワハラ扱いされることは、珍しくありません。「後輩のミスを叱責したら、パワハラと言われた」「不本意な仕事を与えられたので、これはパワハラだ」など、不当なパワハラ扱いはよくあるのです。 では、“パワハラ”とはいったいどういう言動を指すのでしょうか?

厚生労働省は今年1月に、「職場におけるハラスメント関係指針」を告示しました。また、公式サイトでもパワハラの定義について示しています。

「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①~③までの要素を全てみたすもの。」

(厚生労働省 公式サイト「職場におけるパワーハラスメントとは」より引用)

上記の①~③を具体的にみていきましょう。

①優越的な関係を背景とした言動

<当てはまる主な例>

 ・職務上の地位が上位の者(上司や役員など)による言動
 ・同僚または部下でも、業務上必要な知識や経験を持ち、その人の協力がなければ業務を円滑に進められないもの
 ・同僚や部下からの集団による行為で、抵抗や拒絶をしにくいこと

 ポイント→“優越的な関係”とは、上司や役員だけでなく、同僚や部下の立場でもケースによっては該当します。 

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

<当てはまる主な例>

 ・業務上、明らかに必要性のない言動
 ・業務の目的を大きく逸脱した言動
 ・業務を遂行するための手段として不適切な言動
 ・その行為の回数や関係者の人数、手段などが社会通念から外れている言動

 ポイント→言動の内容だけでなく、回数・人数・手段なども含まれます。

③労働者の就業環境が害されるもの

<当てはまる主な例>

 ・暴力により傷害を負わせる行為
 ・著しい暴言で人格を否定する行為
 ・何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗に繰り返すなど、恐怖を感じさせる行為
 ・長期にわたる無視や、能力に見合わない仕事を与えるなど、就業意欲を低下させる行為

 ポイント→身体的・精神的な苦痛を与えるだけでなく、能力を無視した業務指示なども該当します。

(以上、厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」「パワーハラスメントの定義について」より要約)

パワハラの相談窓口担当者や人事担当者などは、社内でパワハラ問題が生じた際に、関係者への確認と適切な対応が必要です。そのためにも、どのような言動がパワハラに該当するかを把握しておきましょう。

企業が実施すべきパワハラ防止の7つの取組み

厚生労働省は「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」の中で、パワハラ防止の取組みを7つ紹介しています(以下、同マニュアルから要約)。

①トップのメッセージ

 組織のトップが、職場からパワハラをなくすべきであると明確に伝える。

②ルールを決める

 就業規則に規定を定めて、労働協約や労使協定などでルールを明確化する。

③実態を把握する

 社内アンケートやヒアリングを実施する。

④教育する

 可能な限り、労働者全員に研修を行う。

⑤周知する

 組織の方針、ルールや相談窓口などについて、積極的に周知する。

⑥相談や解決の場を提供する

 相談窓口を設置し、どのような対応をするかを明確化する。

⑦再発防止のための取組み

 行為者に対する再発防止研修などを行う。


教育や相談窓口での対応、再発防止のための取組みなどには、さまざまな方法があります。例えば、民間のメンタルヘルスケアサービスや内部通報窓口のアウトソースなどを利用するのもひとつの手でしょう。総務・人事担当者はぜひ、より多くの情報を入手して、自社に合ったパワハラ防止対策に生かしてみてはいかがでしょうか?

※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁にご確認ください。