東京株式市場は強弱感が対立する展開になっています。過剰流動性に支えられ、底固さを維持する一方、世界における新型コロナウイルスの感染拡大が再び加速しつつあり、投資家の警戒感が強まっています。しかし、個別には堅調な動きを続ける銘柄もあるようです。アンリツ(6754・図1)は6/24(水)、一時2,587円まで上昇し、2001年2月以来19年半ぶりの高値を付けました。チェンジ(3962・図2)の株価も上昇基調が続き、6/25(木)に高値更新となっています。
こうした個別銘柄の動きは、株式相場の先行きについて、何らかの示唆を与えているのかもしれません。本日の日本株投資戦略では、「スマート工場」を意識しつつ、それを実現する技術である「5G」や「AI」、「IoT」をキーワードに関連銘柄をご紹介してみました。これらの銘柄は、仮に株式相場全般が新型コロナウイルスの感染拡大で波乱となっても、好パフォーマンスを演じる可能性が大きいと「日本株投資戦略」では考えています。
「ウィズ・コロナ」でも主役期待のAI、IoT、5G関連銘柄を探る!?
東京株式市場は3月中旬以降6月上旬まで、戻り相場となっていましたが、その後は強弱感が対立する展開になっています。過剰流動性に支えられ、底固さを維持する一方、世界における新型コロナウイルスの感染拡大が再び加速しつつあり、投資家の警戒感が強まっています。
しかし、個別には堅調な動きを続ける銘柄もあるようです。通信用計測器大手のアンリツ(6754・図1)は6/24(水)、一時2,587円まで上昇し、2001年2月以来19年半ぶりの高値を付けました。次世代通信規格である5G投資が本格化する中、関連機器用半導体の計測機器の需要が高まっており、業績拡大への期待が高まったようです。また、インターネット関連コンサルティング企業のチェンジ(3962・図2)の株価も上昇基調が続き、6/25(木)に高値更新となっています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)等の最新技術を駆使して企業の経営改善を支援しており、業績拡大期待が強まっています。
こうした個別銘柄の動きは、株式相場の先行きについて、何らかの示唆を与えているのかもしれません。6月上旬まで株式相場全般が戻り歩調をたどる中、多くの銘柄は新型コロナウイルスの感染拡大が鎮静化し、徐々に景気回復期待が強まることが前提条件となって、買われていたと思われます。それらの銘柄は、仮に新型コロナウイルスの感染拡大が再び加速すると、値下がりリスクが大きくなるかもしれません。しかし、冒頭の2銘柄は、株式市場で新型コロナウイルスの感染拡大が再び警戒される中で高値更新の展開となりました。
通信速度に画期的な進歩をもたらすであろう5G、コンピュータを異次元の世界に持ち上げるであろうAI、これらはいずれも、新型コロナウイルスの感染が拡大する前から株式市場の有力な投資テーマでした。しかし、5GやAI、さらにIoTまでも含め、これらによってもたらせる新しい技術は、我々に「ウィズ・コロナ」の時代でも生き延びることができる力強い武器になると考えられます。
仮に、新型コロナウイルスの感染拡大が加速したり、長期化したりして工場等の稼働がストップした場合、製造業は再び大きな打撃を受けることが想定されます。また、今回の感染が鎮静化しても、再び未知のウイルスが感染拡大し、工場等を止めなければならない日が来るかもしれません。しかし、工場等が極力人手を省いたものになっていれば、その製造企業の被害は最小限に食い止められるかもしれません。その意味で、工場と顧客、本社を結び、効率的に運用するとともに、人手を大きく省いた「スマート工場」は、日本の製造業の将来のあるべき姿と言えるのではないでしょうか。
そうした中、本日の日本株投資戦略では、「スマート工場」を意識しつつ、それを実現する技術である「5G」や「AI」、「IoT」をキーワードに関連銘柄を抽出してみました。これらの銘柄は、仮に株式相場全般が新型コロナウイルスの感染拡大で波乱となっても、好パフォーマンスを演じる可能性が大きいと「日本株投資戦略」では考えています。
図1 アンリツ(6754・日足)
図2 チェンジ(3962・日足)
抽出銘柄の投資ポイントは?
前項で触れましたように、本日の日本株投資戦略では、「スマート工場」を意識しつつ、それを実現する技術である「5G」や「AI」、「IoT」をキーワードに関連銘柄を例示してみました。抽出条件は以下のようになっています。
(1)東証1部上場銘柄であること。
(2)各種報道等を参考に、「5G」、「AI」、「IoT」、「スマート工場」等の参考銘柄として紹介されている銘柄であること。
(3)過去1ヵ月に株価が上昇している銘柄であること。
(4)会社予想営業利益を公表し、黒字の業績予想となっている銘柄であること。
上記の全条件を満たす銘柄を株価上昇率の高い順に並べたものが表1となります。これらの銘柄は、仮に株式相場全般が新型コロナウイルスの感染拡大で波乱となっても、好パフォーマンスを演じる可能性が大きいと「日本株投資戦略」では考えています。
なお、(2)については関連するすべての銘柄を抽出できていない可能性があり、あくまでも関連銘柄の一部ということでご理解いただきたいと思います。また(3)の条件を付けたのは、この時期に日経平均株価は7.3%上昇しており、逆に下げているというのは、悪材料を内包している可能性があると考えたためです。さらに、(4)については、会社予想ベースの業績見通しを公表しない銘柄が多数派を占める中、業績予想を公表しているだけでも、先行きに一定の自信がある証であると「日本株投資戦略」では考えました。
個別銘柄では冒頭にあげたアンリツ(6754)やチェンジ(3962)の他、ダイフク(6383)、ネットワンシステムズ(7518)、NEC(6701)といった銘柄も6/25(木)に高値更新の動きになっており、まさに現在、投資家の注目を集めている銘柄といえるかもしれません。
この日、NECがNTT(9432)から第3者割当増資を受ける形で、同社と資本業務・提携を結ぶことを発表しましたが、5G通信網を海外通信機メーカーに依存せず、国内勢中心に共同開発することが主目的とみられます。米中貿易摩擦で、米国が中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)を排斥する動きをみせており、我が国も5G基地局では同社製品を採用する通信キャリアは今のところないようです。いずれにせよ「5G」分野における競争力強化は、我が国の「国策」になっているとみられ、同分野への市場の注目は当面、高い状態で維持されると考えられます。
表1 「ウィズ・コロナ」でも成長が期待されるAI、IoT(FA)、5G関連銘柄
コード / 銘柄 / 株価(6/25) / 上昇率(1ヵ月) / 予想営業増益率 / 投資のポイント
<3962> / チェンジ / 7,760 / 47.5% / 142.1% / AI関連技術等を駆使し、企業の経営革新を支援
<6754> / アンリツ / 2,554 / 21.1% / 0.5% / 5G投資の本格化で関連機器半導体用計測器に需要
<6383> / ダイフク / 9,440 / 12.8% / 1.2% / 売上の3分の2が海外。工場の自動化は追い風
<7518> / ネットワンシステムズ / 3,685 / 12.7% / 3.2% / 海外通信機器の導入・支援に5G投資増加は追い風
<6482> / ユーシン精機 / 715 / 8.7% / -50.2% / 一貫対応でロボットによる自動化を支援
<6981> / 村田製作所 / 6,387 / 7.7% / -17.1% / 高周波向け電子部品は当社等日本企業の「独断場」
<6701> / 日本電気 / 5,170 / 5.8% / 17.5% / 5G向け基地局。NTTと資本・業務提携。
<3105> / 日清紡ホールディングス / 788 / 5.1% / 116.0% / 「ローカル5G」導入を実現する通信装置
<6273> / SMC / 55,710 / 3.2% / -37.1% / 空気圧機器に国内外の自動化需要が追い風か
<6503> / 三菱電機 / 1,377 / 2.0% / -53.8% / AI、5G、スマート工場等に係る総合的な技術に強み
<3774> / インターネットイニシアティブ / 3,700 / 0.7% / 5.8% / 平田機工(6258)とスマート工場分野で協業
<9692> / シーイーシー / 1,782 / 0.3% / 2.8% / 「自動化・自律化」されたスマート工場実現を提案
※各社株価データ等をもとにSBI証券が作成。予想営業増益率は会社予想ベース。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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