新型コロナウイルス感染リスクの一つに「換気の悪い空間」があります。実際に換気の悪いレストランで患者の飛沫がエアコンの気流に乗って感染拡大につながったケースも話題となりました。これに伴い「空気の安全性」への関心が高まっています。本記事ではビルの換気に関連する法律や新型コロナウイルス感染の回避に必要な換気量、具体的な対策について解説します。
新型コロナ感染により、ビルの換気量に注目が集まるように
これまで中小ビルの空調の管理は「冷暖房はきちんと効くか」「不具合はないか」といった内容が主でしたが、新型コロナウイルス感染拡大によって新たに出てきたチェック項目が「換気量(外気導入量)は十分か」というものです。CBREのレポートによると海外では建物内の外気導入量を20~30%に設定して新鮮な空気を常に取り込むよう規制している国もあります。
日本で建物の換気量を規制する法律は「ビル管理法」です。これからのビル経営においては、ビル管理法が定めた換気量の基準をクリアし、さらに適切な取り組みをすることが重要なポイントになるでしょう。これにより入居企業へ安心感を与えることができ、長期入居を後押しする材料になります。具体的にビル管理法で決められている換気量とそれに合わせた対策を見ていきましょう。
新型コロナ感染のリスクを回避する換気量と対策
ビル管理法で定められている必要換気量は30立方メートル/毎時
換気の悪い空間リスクを回避するためにオーナーがはじめに実行すべきことは、所有するビルの空調能力がビル管理法の基準を満たしているかどうかのチェックです。もちろん法的基準を満たせば新型コロナウイルスの感染リスクがなくなるわけではありません。しかし厚生労働省は、基準達成によって「リスク要因の一つである換気の悪い空間には当てはまらないと考えられる」と見解を示しています。
ビル管理法では、その空間に在室する一人あたりの必要換気量を30立方メートル/毎時としています。この基準は、ビル管理法の中で「特定建築物に該当する商業施設等に適用されるもの」とされているのが特徴です。しかし厚生労働省は商業施設の管理権原者に向けて出した通知で、これに該当しない建物(中小ビルなど)でも30立方メートル/毎時が感染リスクを抑制する一つの目安としています。
そのため管理業者や空調業者にこの基準を満たしているかを確認してもらいましょう。
ビル管理法の基準を満たしているときのポイント
ビル管理法で定めている換気量の基準を満たしているといっても新型コロナウイルスの感染リスクがゼロになるわけではありません。ビル管理者や入居者が協力して窓を定期的に開閉したり、外気導入用ファン(次項で詳しく解説)を採用して換気量を増加させたりするなどの取り組みを行うとさらにリスクを回避しやすくなります。
ビル管理法の基準を満たしていない場合のポイント
まずは、必要換気量30立方メートル/毎時に達していない原因を探ることが大切です。その結果、清掃方法などを改善すれば基準に達する場合は、これを厳密に管理するためのマネジメントシステムの構築などが有効でしょう。現在の空調設備では必要な換気量の確保ができない場合、新たに外気導入用ファンを設置することも選択肢の一つです。
ビルの換気量は外気導入用ファンの能力に大きく左右されるため、改善できる可能性があります。ただ新たなファンの設置・増強はコストがかかるため、すぐに実行できないケースも多いでしょう。この場合は、以下のような対策で改善していく努力が必要です。
- ビルオーナー、管理者、入居者が協力してビルの窓を開閉する(厚生労働省の通知で推奨されている換気方法:30分に1回以上、数分間程度、窓を全開)
- 1部屋あたりの在室人数を減らす
ここで紹介したビル内の換気は、リスク回避法の一つでしかありません。この他ビルで実行できる対策例としては「ビル出入り口の消毒環境の充実」「非接触化の推進」「必要箇所へのパーテーション設置」などです。入居企業やテナントの従業員、その顧客などたくさんの人たちの健康を守るためにオーナーの危機管理力が試されています。(提供:ビルオーナーズアイ)
【オススメ記事 ビルオーナーズアイ】
・プロパティマネジメントとは?ビル経営でPM担当をつける7つのメリット
・小規模ビルの有望トレンド、医療ドミナントの成功例に学ぶこと
・収入印紙はいつ貼るもの?|収入印紙と印紙税をわかりやすく解説
・全国的に回復傾向!最新の地価調査から見えるものとは