新型コロナ禍の資産運用
いまだ猛威を振るう新型コロナウイルス。この影響で全世界的に経済が打撃を受けている。日本でも4月に異常事態宣言が出て以降、外出自粛などの影響で経済が一時的にストップ。20年度決算は多くの企業が減収減益に沈んだばかりか、21年度決算の業績見通しを発表できないなど、まさに異常事態だ。
幸い、政府は巨額の予算を組んで対応、金融機関も“異次元融資”ともいうべき積極融資を実施した結果、今のところ株価も安定しており、大規模な倒産も避けられている。しかし、第2波や第3波が襲来、事態収束が長引けば日本経済への影響も計り知れない。
そうした先行き不透明な時代、富裕層は資産運用についてどのように考えればいいだろうか。ZUU onlineでは、日本、米国、スイスのプライベートバンクに11年間在籍、現在は独立して富裕層の資産形成サービスを手掛ける「ウェルスパートナー」代表の世古口俊介氏をナビゲーターに、具体的なノウハウをご紹介する連載「富裕層の資産運用マル秘テクニック」をスタートする。第1回は総論としての「資産配分」について見ていこう。
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アセットアロケーションで運用の8割が決まる
読者の皆さんは、資産配分について真剣に考えたことはあるだろうか。資産配分を最適な形にすることを「アセットアロケーション」と呼ぶが、実はこれが「運用の8割を決める」といっても過言ではない。
だが、資産といっても、どの銘柄の株を買うべきか、どの不動産に投資すべきかといった話ではない。株式、債券、不動産、コモディティといった金融資産の種類を指し、その配分をしっかりと考えようという話なのだ。
ところが、多くの投資家が「トヨタ株、いや日産株ではないか」「今後の発展を考えれば、新宿よりも渋谷の不動産を「購入すべきなのではないか」といった“銘柄選び”に終始している。もちろんそれも重要なことだ。しかし、「銘柄選びは後回しにして、まず検討すべきはアセットアロケーション。検討する時間の8割もこれに割くべきだ。そうすれば、銘柄選びの方向性も見えてくる」と世古口氏は訴える。
保有資産の大きい人ほど分散が必要
下の円グラフを見ていただきたい。これは、世古口氏が資産形成のアドバイスを行う前(Before)と、アドバイス後(After)を比較したものだ。ちなみにBeforeは、世古口氏のもとを訪れる顧客に多いパターンだという。
これを見れば明らかなとおり、Beforeは日本国債で半分以上、それ以外に日本株式が3分の1程度、残りを円の現預金で保有している。一見、国債や株式で分散されているように見えるが、どの資産も日本の資産。日本に万が一のことが起きて国債がデフォルト、株価も大暴落したら全ての資産が棄損してしまう。「日本国債がデフォルトするようなことはないだろう」との意見もあるが、今回の新型コロナ禍で体験して分かったように、「あり得ない」ことはないと考えるべきだ。
では、どうすればいいのか。afterを見てほしい。これは世古口氏が推奨する分散投資のひとつのケースだ。後述するが、保有資産やその人の環境によってこの割合は変わるから、あくまで文字通り“ひとつのケース”といえるだろう。
例えば株式は、日本株式に加えて先進国株も少し多めに保有すべきだ。一方債券も同様に先進国債に新興国債も保有しておくことを勧めている。その他、ヘッジファンドや国内外の不動産も保有しておくとベターだ。
一部からは「こんなに資産を分散させないといけないのか」と言われそうだが、世古口氏は「間違いなくYESだ」とし、「富裕層であればあるほど分散させる必要がある」と断言する。
世古口氏は言う。「例えば保有資産が1000万円程度であれば、ここまで分散する必要はない。しかし、保有資産が1億円の人は分散した方がいいし、10憶円の人はもっとすべき。なぜなら、インフレになったときのインパクトが大きいから。1%インフレが進めば資産1000万円の人が失う資産は10万円だが、1億円の人は100万円、10億円の人は1000万円も失ってしまう」。だからこそ、富裕層になればなるほど資産は分散させるべきだというのだ。
8つの要素で検討を
では、最適な資産配分とはどのように導きだせばいいのだろうか。これは一概には言い切れない。というのも、富裕層が1000人いたら1000通りの資産配分があるからだ。その際に考慮すべき点について、世古口氏は「最低限、8つの要素を考えて資産配分すべきだ」とアドバイスする。具体的には、年齢、資産背景、経済条件、リスク許容度、ライフプラン、資産承継の有無、投資目的、そしてその結果としての目標リターンの以上8つだ。