資金が限られた中小企業では、コスト面の問題で事業承継を進められないケースがあります。そのような事業者にとって心強い制度となるのが、日本公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」です。本記事では、同制度の概要やメリットを分かりやすく解説します。

日本公庫の「事業承継・集約・活性化支援資金」とは?

事業承継
(画像=takasu/stock.adobe.com)

日本政策金融公庫(※以下、日本公庫)が実施する「事業承継・集約・活性化支援資金」は、事業承継に取り組む中小事業者の資金調達をサポートする制度です。まずは制度の概要をつかむために、法人に関する主な要件を紹介していきましょう。

○法人の主な要件(※以下のいずれかに該当する方)
【1】後継者とともに、中期的な事業承継計画を策定している現経営者
【2】安定的な経営権を確保した形で、事業の承継・集約を行う方
【3】事業の承継・集約をきっかけとして、事業転換などの新たな取り組みを図る方
【4】中小企業経営承継円滑化法に基づき、認定を受けた中小企業者の代表者
【5】経営者個人保証の免除等を申し入れたことをきっかけに、取引金融機関からの資金調達が困難となった方のうち、日本公庫が融資に際して個人保証を免除する方

上記の通り、同制度の要件は大きく5つに分けられており、適用する要件によって融資を受けられる資金の種類が変わってきます。

適用する要件融資を受けられる資金の種類
上記【1】事業承継計画の実施に必要な設備資金・長期運転資金
上記【2】もしくは【4】事業承継を行うために必要な設備資金・長期運転資金
上記【3】当該事業を行うために必要な設備資金・長期運転資金
上記【5】金融機関との取引状況の変化に伴い、必要になる長期運転資金

つまり、事業承継・集約・活性化支援資金は事業承継に関するさまざまな資金を調達できる融資制度なので、現経営者や後継者の負担を大きく抑えられるでしょう。

事業承継・集約・活性化支援資金を利用するメリット

事業承継・集約・活性化支援資金のメリットを理解するために、次は同制度の主な貸付条件を見ていきましょう。

主な貸付条件概要
融資限度額・国民生活事業…7,200万円
・中小企業事業…7億2,000万円
返済期間・設備資金…20年以内(据置期間2年以内)
・運転資金…7年以内(据置期間2年以内)
利率・国民生活事業…最大で2.4%
・中小企業事業…最大で3.0%
保証人・担保相談のうえ決定

同制度の主なメリットとしては、「返済期間が長い点」「上限金利が低めに設定されている点」などが挙げられます。また、相談内容によっては保証人・担保が不要になる可能性もあるので、返済財源に乏しい事業者にとっては心強い制度となるでしょう。

ちなみに、同制度は「国民生活事業・中小企業事業」の2タイプに分けられており、それぞれ以下のように主な対象者が異なります。

・国民生活事業…小規模事業者などを対象とした、無担保での小口融資が中心となるタイプ
・中小企業事業…資本金1,000万円以上の中小企業を対象とした、有担保での融資が中心となるタイプ

まずは国民生活事業で相談をする流れが一般的ですが、仮に中小企業事業が適用された場合には、「融資限度額の高さ」も大きなメリットになります。

「事業承継マッチング支援」をはじめ、日本公庫にはさまざまな事業承継サポートが

上記で紹介した融資制度以外にも、日本公庫はさまざまな形で企業の事業承継をサポートしています。他社に事業を譲り渡したい事業者と、事業を譲り受けたい創業者をつなぐ「事業承継マッチング支援」も、中小経営者が押さえておきたい制度のひとつです。

主な対象者は小規模事業者となりますが、着手金や成功報酬などの費用が発生しないため、コストを大きく抑えた形で事業承継のマッチング相手を探せます。マッチング後の困りごとに対応してもらえる点も、経営者にとっては心強いポイントでしょう。

日本公庫はほかにも、刊行物や支援動画などのさまざまな事業承継サポートを用意しているので、利用できるサポートは積極的に活用することを検討しましょう。

融資制度の申し込み前には、事前の問い合わせと準備を

事業承継に関するさまざまな資金を調達できる「事業承継・集約・活性化支援資金」は、中小経営者にとって心強い融資制度です。ただし、適用を受ける際には都道府県知事の認定が必要であり、自治体ごとに手続きの内容が多少異なるため、申し込みの前には事前に問い合わせることが大切です。

スムーズに融資を受けるためにも、段取りを意識しながら万全の準備を整えておきましょう。(提供:企業オーナーonline


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