◉アベノミクス後のシナリオ、破滅に向かうパターンとは?


2013年初頭はアベノミクス効果でマーケットは沸いていますが、アベノミクスのその後のシナリオを橘玲さんは下記のように分析されています。

①楽観シナリオ:アベノミクスが成功して高度経済成長が再び始まる
②悲観シナリオ:金融緩和は効果がなく、円高によるデフレ不況がこれからも続く
③破滅シナリオ:国債の暴落(金利の急騰)と高インフレで財政は破綻し、大規模な金融危機が起きて日本経済は大混乱に陥る

そして仮に③の「破滅シナリオ」が現実のものになった場合、ある日の朝起きたら急に日本が変わっていたということではありません。「高金利・円安・高インフレ」が次のようなプロセスで進行するでしょうというシナリオが描かれています。

第1ステージ:国債価格が下落して金利が上昇する
第2ステージ:円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる
最終ステージ:日本政府が国債のデフォルトを宣告しIMFの管理下に入る


◉国家の破産時、どう資産を守るのか?


本の中で「国家破産に対応するには?」という切り口で、金融商品は多岐に渡って紹介されています。

例えば、ローンは変動ではなく固定にすべき、外貨預金、国債ベアファンド、日本国債ベアETF、物価連動国債、FX、日経平均先物・オプション、株の信用売り、という様々な投資アイデアが提供されています。
また橘さんは国家が破産した場合、不動産市場では賃料の値上がりが起るけれども不動産価格は下がると考えているようです。そして国家破産やインフレで注目をされやすい金投資はお勧めされていません。

橘さんの考察で興味深い点は、①楽観シナリオ②悲観シナリオの全期間、そして③破滅シナリオ第1ステージでは、「普通預金が最強」と述べられていることです。
私は個人的には「普通預金が最強」とまでは思いませんが、③破滅シナリオを想定する場合には十分な流動性を用意しておくべきという観点は非常に重要であると考えています。

また、少々意外に思えるかもしれませんが、物価連動国債(編集注:元本が消費者物価指数に連動します)を選択肢に含めている点です。
本書においてデフォルトの可能性は無視して良いという見解のようですが、その可能性をどう解釈するかは読者の価値観によりましょう。確かに国債のデフォルト懸念がない段階での金利上昇局面では有効な選択肢かもしれません。
モーニングスターの朝倉社長も 同様の投資アイデア を提供されております。