(本記事は、⼤⻄益央氏の著書『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』光文社の中から一部を抜粋・編集しています)
人は「よろこびを分かち合う」ことをしあわせに感じる
一人でやって結果を出しても、一人でよろこぶのはさみしいものです。
しあわせを分かち合える相手がいたら、しあわせは何倍にもなります。
「人間は一人では生きていけない」とよく言われるのは、よろこびを分かち合ってしあわせを感じるためなのではないかと思います。
ぼくが人を雇うのは、自分の作業を手伝ってほしいからではありません。一緒によろこべる相手がほしいからです。よろこび合える相手がいて、ようやく幸福感が増すのです。ぼくにとって、チームはそのためにあります。
鶴麺は約3年間でボストンに「鶴麺ファミリー」をつくりたいと思っています。ぼくは一緒に働く人たちのことを「従業員」とも「スタッフ」とも呼びません。「メンバー」と呼びます。
メンバーは「ファミリー」だと思っています。よって、月に一度でも働いた人は「いつでも何度でもまかないを食べに来ていいよ」と話しています。すると行列ができていても、みんなわざわざ並んで食べに来てくれます。
そうやって食べに来てくれることが、ぼくはうれしくて大好きです。
メンバーのために1日10杯くらいつくっています。もちろん1杯提供するのに席と時間が必要になります。お金的にも、毎日200ドル、2万円くらい売り上げは下がります。
でもそんなことは気にしていません。ぼくのビジョンは「ボストンに鶴麺ファミリーをつくること」なので、来てくれるメンバーは多ければ多いほどいいのです。
お店はぼく以外にメンバーが2人いたら営業できるくらいの規模です。そこにメンバーが30人くらい所属しています。1つのシフトに4人も5人も希望しているので、選ばなければいけないほどです。
シフトに入っていない人でも、ラーメンを食べたいから並んで食べに来ます。食べに来たメンバーは、自主的に片づけを手伝ってくれます。自分で運んで、自分で洗いものをして帰る。だから、ファミリーなのです。
【POINT】 ともによろこべる仲間はいますか?
素敵な人が集まる「求人」の仕方
メンバーの集め方も工夫しています。
うちはお店の前に募集広告を出したり、インターネットに書き込んだりはしません。求人広告を出すこともありません。
それは、うちのラーメンを食べたことがないのに面接をするのは無駄だと思っているからです。うちのラーメンを食べたうえで「ここで働きたい」と思ってくれた人だけに来てほしいのです。
うちではレジの横に小さく「メンバー募集」と貼ってあるだけです。そうすることで、ぼくのつくるラーメンが大好きな人しか応募してこないのです。
うちでは「ラーメンを食べたいから働いている」人がほとんどです。もっと言えば「ラーメンを食べに来て、ついでに働いている」ような状態なのです。
メンバーは若い子ばかりです。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、タフツ大学が近いのでそこの学生もたくさんいます。
彼らにとって、ぼくははじめて直に接するボスだったりするでしょう。
その子たちがどんな社会人になるかは、学生時代に出会った人間で変わってきます。だからぼくは、つねに「理想の上司」「理想のリーダー」でありたいと思っています。そして、鶴麺が「理想の会社」でないといけないと思っています。うちの店は、そういう意味で教育機関だとも思っています。彼らには、お金を得るよりも、いろいろなことを学んでほしいなと思っています。
以前、マサチューセッツ工科大学の化学専攻を卒業したジョージというメンバーがいました。とても優秀な子で「夏に大学を卒業して、就職が4月なので100日くらい働きたい」と言って鶴麺に来たのです。
ぼくは、その期間だけでも理想の上司像、リーダー像を見せてあげたいと思いました。そうすることで、就職したときに今度は彼がチームのいいリーダーになれると思ったからです。そういうつもりで100日間、彼と接していました。
彼は一生懸命働いてくれました。そして、アルバイトの最終日に自分の親と大学の研究室の教授、友だちなど14人くらいでお店に食べに来てくれました。そして「ここがぼくの自慢の職場だよ。こういうところで働いていたんだよ」と伝えてくれました。そのことでぼくは「彼にとっての理想のリーダー像」に少しはなれたのかな、と感じました。
ジョージは今、糖尿病の研究をしています。研究所に入って、いいチームをつくっているはずです。いつかノーベル賞をとってくれたらいいな、と思っています。
うちはラーメン屋ですが、そうやって、上司像やリーダー像を見せるかたちで社会貢献ができると思っています。大げさに言うと「ラーメンでも世界を変えられる」くらいの気持ちでやっているのです。
【POINT】 あなたは誰かの「理想のリーダー」になっていますか?
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