(本記事は、⼤⻄益央氏の著書『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』光文社の中から一部を抜粋・編集しています)

「変化を楽しめる」人が最強

なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?
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うちのお店では、200日に一度、メニューを変えてしまいます。どんなに人気のラーメンであっても、200日経ったらメニューから外してしまうのです。「200日に一度、変化を繰り返し続ける」なんて、ふつうの経営論的に言えばとんでもない話でしょう。

ふつうは逆のことをします。つまり、看板メニューを生み出すためにがんばって、看板メニューが定着してきたら、いかにしてその看板メニューを維持するかを考える。

でも、それは最高に楽しいことでしょうか?

できたものを守り続けるのは楽ではありますが、楽しいことなのでしょうか?

ぼくはそうは思いません。なるべく変化をしないように維持することに、ワクワクは1ミリもないのです。

「変わり続ける」ことを楽しめるやつがいちばん強い。ぼくはそう考えます。特にこれほど変化の大きい時代には、自ら変われない人は危険とすら思います。恐竜が生き残れなかったのも、変われなかったからです。

人がみんな、なかなか「変われない」のはなぜでしょうか?

人間はそもそも、変わることを怖がるようにできています。変わらないほうがいいと思うようにできている。「変わることを楽しめ」というほうが難しいのかもしれません。頭ではわかっていても、実際には動けない人が多いのです。だからこそ「変わることを楽しむ」ことができたら、メチャクチャ強いのです。積極的に変化に飛び込むことができて、さらにワクワクできる人が最強なのです。

毎月同じ額の給料を淡々ともらい続けるのは楽です。

何も考えなくていいからです。

それを断ち切るのは、麻薬の常習者が急に麻薬をやめるようなものかもしれません。そりゃ不安にもなるでしょう。それが10年、20年と続いていれば、かなりの常習です。それはなかなか抜け出せません。

給料というお金だけではなく、「月に一度の安心」という脳への報酬も一緒にもらっている。それがなくなるのはとても怖いと思います。

でも、その状態こそが危険なのです。

ぼくは大学を卒業してから3年間、自分の親が経営する会社で働いていました。でも、あまり充実したものではありませんでした。親の会社だからか、遠慮のようなものを感じていた3年間でした。

「自分がぜんぜん成長していないし、マズいな」ということに気づいていました。ぼくは3年で親の会社を辞めることを決めました。あのときに決断せず、そこから10年い続けたら、やめるのが難しくなっていたかもしれません。

自分で商売をし始めたのは29歳のときです。

はじめて自分で店を持ちました。居酒屋を始めたのです。

そもそも「ラーメン屋をやろう」と思って、お店を始めたのですが、ラーメンづくりの修業経験がなかったのです。よって、最初はお酒とおつまみのメニューも出していて、さらにラーメンがあるという変な店でした。

そこからどんどん居酒屋メニューを減らしていき、最終的にラーメンだけにしたのが1年後のこと。「ラーメン専門店」として再オープンしたのは、31歳のときでした。

居酒屋は居酒屋でそこそこうまくいっていました。だから「ラーメン屋にする」と言い始めたときは、まわりから反対されました。

居酒屋としてやってきた期間はある意味無駄になってしまいますし、お店をリニューアルすれば、当然お客さんも変わります。みんなお酒を飲みに来ていたわけです。せっかくの「常連さん」も離れます。

「お店をリニューアルする」ということは、「お客さんもリニューアルする」ということ。結局また一からのスタートになるのです。

生ビールやお酒のアテになるメニューは出さないと決めました。生ビールのサーバーをはずして、ラーメン一本に絞るのです。生ビールで生計を立てていたのが、ラーメンで生計を立てていくことになる。

ふつうに考えれば、みんな反対するでしょう。でもぼくは変化することを選びました。居酒屋をやりたいと思って独立したわけではないからです。自分がよりワクワクするほう、より成長できるほうを選ぶ。

今になって考えれば、そのころから「変化を楽しむ強さ」があったのかもしれません。

「変化を楽しめる」能力は、これからの時代を生きるうえでとても強力な武器となります。変化を楽しめる人は本当に最強なのです。

【POINT】
変わらないと滅びる

自分なりの「成功」を定義せよ

ぼくのゴールは「最高に今を楽しむ」状態をつくることです。

それがぼくなりの成功の姿です。

みんな「ラーメン屋の成功」には固定観念があります。それは「ひとつの店が成功したら、次の店を出して、どんどん店を増やしていく」ということで、これが大成功のモデルケースだと思い込んでいます。

でもぼくは、それをゴールにするところから間違っていると考えます。それをゴールにすると「今」を犠牲にすることが多々あるからです。それでは本末転倒です。

より店を大きくする。より店を増やす。それによって楽しくない状態をつくり上げてしまう。それでは逆にぼくのゴールからは遠のいてしまいます。

ぼくのゴールは「最高だ!」と言える今をつくることです。そのことを強く世の中に伝えたいのです。

テレビ番組『情熱大陸』の撮影に臨んだときも、ぼくのマインドセットはそこにありました。

同業者の先輩も後輩も、みんな「一風堂さんや一蘭さんみたいなラーメン屋が成功だ。あれがゴールだ」と言いました。みんな「あそこを目指せ!」と。でも「違うよ。今の時代そうじゃないよ」とぼくは言いたいのです。

ビジネス的にも、規模が大きくなるのはリスクです

小さなチームで、大きな仕事をするそれが今のビジネスの勝ち方です

なのに、みんな規模を大きくして、100人、200人と雇う。そのリスクを楽しむことのできないぼくにとってそれは、もはやゴールでもないのです。

【POINT】
あなたにとっての「成功」は何?

なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?
⼤⻄益央(おおにし・ますお)
「Tsurumen」店主。1976年、⼤阪市⽣まれ。1999年、近畿⼤学商経学部経営学科卒。2007年、地元⼤阪市鶴⾒区でラーメン店「鶴麺」をオープンし、2010年に2号店「らぁ麺Cliff」(現「Tsurumen」)をオープン。2店舗を⼤阪屈指の⼈気店に育てた後、2018年4⽉にボストンで「Tsurumen Davis」を開店。最低気温マイナス10℃以下にもなる極寒のボストンで、1時間待ちの⾏列を作る超⼈気店となる。「いまボストンでもっとも熱いレストラン」第1位を3ヵ⽉連続獲得。ボストンNo.1のメジャーな新聞「Boston Globe」の1⾯を飾るなど、メディアからの注⽬も⾼い。営業時間2時間のみや、オープンから1000⽇しか営業をしないなど、飲⾷店らしからぬ独⾃の“仕事幸福論”も注⽬を集め、「情熱⼤陸」〈2019年2⽉放送〉に出演。「Boston Magazine」誌「Best of Boston 2019」受賞。

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