(本記事は、⼤⻄益央氏の著書『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』光文社の中から一部を抜粋・編集しています)

すごい人になりたければ、すごい人の近くにいろ

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(画像=ampcool/Shutterstock.com)

繁盛店の人たちと仲よくしていると、自分のお店も繁盛店になります。

だから、ぼくは自分のお店が繁盛店になる前から、繁盛店の人たちとお付き合いさせていただきました。

一方で、繁盛していない居酒屋の人たちは、自分の店が終わると同じように繁盛していないお店に行って、そこの店主とずっと飲んでいます。そして「なぜ居酒屋は今、こんなに流行らないか?」といったことばかりを話し合う。繁盛していない人どうしが、「繁盛していないこと」をアテに飲むわけです。

これは、ぼくが20代のときに感じていたことです。

飲食店で働いていたのですが、繁盛していないお店の人がやってきては「飲酒運転が厳しくなってからあかんよな」などと話をしながら飲んでいる光景を、ずっと見ていました。そこで、いつか自分でお店をやるときは「繁盛店の人たちとお付き合いしよう」と決めたのです。

うまくいっていない人たちは「なぜ、今この業界がダメなのか?」といった話しかしません。そして、人を論破できるくらいのものすごい説得力を身につけていきます。それを聞いていると「たしかに!」と言いたくなるのですが、そんな正論を並べたところで、そこにはなんの生産性もないのです。

できない人どうしで付き合うのはきっと楽でしょう。「うまくいってないのは自分だけじゃないんだ」と思えて、気が紛れるはずです。「今日も売り上げが2万しかなかった……」と落ち込んでいるときに「うちはもっと悪い」という話を聞けば安心するでしょう。ただ、そんなことをしたところで何もいいことはありません。一瞬、不安が和らぐ程度です。

繁盛店の人と仲よくなるには、まずその店に食べに行くことです。そして「実はぼくもラーメン屋をしているんです」と話すのです。あんまり強引に「教えてください」などと言うと煙たがられます。だから「ぼくもラーメン屋をしています」と言うだけにしていました。

そうするだけでも、向こうは食べにきてくれたことをよろこんでくれます。すると何度か通ううちに「もっとこうしたほうがいいんじゃない?」というアドバイスがもらえるようになるのです。

繁盛店の人たちは、同じく繁盛店へ食べに行きます。すると、そこでまた繁盛店の人たちと仲よくなって友だちになる。そうやって「繁盛店の輪」のなかに身を置いて、いろいろなことを学ぶようにしていました。

ぼくは繁盛店の人たちに手取り足取り教えてもらったことはありません。ただ一緒にいて、自ずと学び取っただけです。レシピや具体的な技術を教えてもらうわけではありません。それでも、勝手に学び取ることで成長することができたのです。「坐辺師友」という言葉があります。これは北大路魯山人の言葉で、優れたものや人に囲まれていると、おのずとそれを学び取ることができる、まわりにあるものが「師匠」であり「友」である、という意味です。

人間は、環境によって成長します。優れたものに囲まれていると、自分も優れていきます。囲まれているだけで勝手に学び取るのです。

【POINT】
居酒屋で愚痴を言い始めたら危険信号

楽しんでいると人が集まってくる

朝礼で毎日言っているのが「エンジョイ 1000デイズ」です。

ぼくらの目的は「楽しむこと」です。お金を稼ぐためでも、店舗展開をするためでもありません。

「日米10都市に行列のできるラーメン屋をつくる」というのも夢としてありますが、その夢のために今を犠牲にするようなことはしません。あくまで目的は「楽しむこと」です。お店がたくさんあったほうが楽しそうだからやるだけ。結果的に10店舗を達成できなくてもいいのです。

「楽しむこと」ではなく「10店舗つくること」が目的になってしまうと、10店舗つくるためにがんばってしまいます。するとだんだん疲弊していって、楽しくない日々を過ごすことになってしまいます。楽しくないと自分の持っているよさや潜在能力を引き出せません。結果的に楽しくないうえに、10店舗を実現することもできなくなるのです。

これだけ「楽しむ」ということにこだわるようになったのは、失敗のどん底を味わったからです。一生分くらいのしんどさを経験したからこそ、楽しくないことは百害あって一利なしだ、と気づいたのです。

ただ、ハワイとノースカロライナの大失敗は必要な失敗でした。

もしそんなに大きなチャレンジをしていなかったら、ぼくは日本でそれなりにやって、大切なことに気づかないまま一生を終えていたかもしれません。

それなりに流行って、だんだん流行らなくなって、「なぜだろう……」と思いつつも「昔は流行ったラーメンだし、この味は変えない」などと言いながら経営していたかもしれません。それでも、それなりに生きてはいけるでしょう。

もちろん「変えない」というポリシーでやっているお店を否定するわけではありません。昔からの常連さんが何十年も通ってくれる。ずっと来てくれるお客さんがいて、そのお子さんやお孫さんも連れてきてくれる。そのために味は変えないというお店も素敵です。

ただぼくは、それでは楽しめないのです。お客さんとしても、お店の人が楽しんでいるお店は魅力的なのではないかと思います。つねに流行っているお店は従業員どうし仲がいいし、働いている人が楽しんでいるのです。

人間は、楽しんでいる人にしかモチベートされません。楽しくなさそうに働いている会社やお店に人は集まらないものです。だからこそぼくらは「エンジョイトゥデイ! エンジョイ1000デイズ」を掲げ、自分たち自身が楽しむことを大切にしているのです。

同じ味を守ることが楽しいと思う人もいるので、その人はその人でいいと思います。楽しんでいればいいわけです。ただ、強くはないかもしれません。生き残るうえでいちばん強いのは、変わることを楽しめる人だからです。

生き残るために変わっていかないと、恐竜のように絶滅してしまいます。変わるときも、必要に応じてイヤイヤ変わるのではなく、変わることを楽しめたら最強でしょう。

【POINT】
変わることを楽しもう

なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?
⼤⻄益央(おおにし・ますお)
「Tsurumen」店主。1976年、⼤阪市⽣まれ。1999年、近畿⼤学商経学部経営学科卒。2007年、地元⼤阪市鶴⾒区でラーメン店「鶴麺」をオープンし、2010年に2号店「らぁ麺Cliff」(現「Tsurumen」)をオープン。2店舗を⼤阪屈指の⼈気店に育てた後、2018年4⽉にボストンで「Tsurumen Davis」を開店。最低気温マイナス10℃以下にもなる極寒のボストンで、1時間待ちの⾏列を作る超⼈気店となる。「いまボストンでもっとも熱いレストラン」第1位を3ヵ⽉連続獲得。ボストンNo.1のメジャーな新聞「Boston Globe」の1⾯を飾るなど、メディアからの注⽬も⾼い。営業時間2時間のみや、オープンから1000⽇しか営業をしないなど、飲⾷店らしからぬ独⾃の“仕事幸福論”も注⽬を集め、「情熱⼤陸」〈2019年2⽉放送〉に出演。「Boston Magazine」誌「Best of Boston 2019」受賞。

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