(本記事は、⼤⻄益央氏の著書『なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?』光文社の中から一部を抜粋・編集しています)

お金のことを考えているときほどお金に困る

貯める,増やす
(画像=RomarioIen/Shutterstock.com)

お金は大切です。

いくら「楽しもう」と言っても、お金がないと不安で楽しめません。

まさにハワイのときは、お金に困って苦労しました。体調も悪くなりました。今は利益が出ているので、お店を多めに閉めて日本にも来られるし、楽しく営業ができています。

ぼくは基本的に「赤字はダメ」という考えです。

赤字になると、それこそ八方ふさがりになってしまいます。成長できる環境もつくれないし、ビジネスとして1ドルでも黒字を出すことが大切です。

たまに「赤字でも思いが強い事業だからやりたいんだ」と言う経営者もいます。正直、美徳だけで突き進むのは手ぬるいのではないかと思うのです。どれだけ、自分たちにとって「最高だ」と思うことをしても、赤字になるということは世の中に必要とされていないのです。赤字にならないということが、社会に必要とされているという証拠です。だからぼくは「赤字はダメ」と考えているのです。

一方で、「赤字にならないのであれば、なんでもアリ」とも思っています。別に貯めれば貯めるほどいい、とは思いません。

お店が順調にいっていれば、貯めようと思えば貯めることはできます。

でも、必要だと思ったお金は使ったほうがいい。店を休んで毎月日本に帰ったり、自分たちが楽しいと思うイベントに出たり、グッズをつくったりもします。赤字にさえならなければ、楽しむことにフォーカスしまくる。そこに思い切って惜しまず使うのです。

赤字は絶対にダメだけれど、「儲ければ儲けるほどいい」「貯めればいい」というわけでもない。それが、今のぼくのお金に対するバランス感覚です。

たとえばぼくはビールが大好きなのですが、大好きなビールの醸造所とコラボイベントをやったりします。鶴麺デイビスでは、リカーライセンスを取ることができませんでした。ならば逆にビールの醸造所にこちらから話を持っていって「そちらでラーメンをつくらせてもらえないですか?」と持ちかけたのです。こういったイベントは正直利益なんて考えていません。儲かるからやるわけではなく、ぼくが楽しいからやるのです。

お金は大切にしつつも「楽しい」にフォーカスする

ただぼくらが楽しんでやっていると、その楽しさに人が寄ってきます。醸造所のイベントもきっと大行列になるはずです。だから、結果的には黒字になるのです。楽しむこと、遊び心でワイワイやること。それが「結果的に」お金になるのです。もしそこで変に「費用対効果」を考えてしまったら、楽しくなくなって魅力的なイベントにはならないでしょう。

実はお金のことばかり考えているときのほうが、お金に困ってしまいます。ハワイのときがまさにそうです。逆に、お金のことを考えないくらい楽しんで夢中になっていると、自然とお金は入ってくるものです。

【POINT】
楽しむとお金が入ってくる

借金はしない

借金もダメです。

借金をするのは、やっぱりつらい。

かつては「借金してでもやるほうが正解」と思っていた時期もありました。実際に大阪の鶴麺2号店は借金をしてオープンしました。でも、借金は全部が台無しになる可能性があります。逆に、借金せずにやれば好き放題やることができます。すると「楽しめる店をつくったからOK!」と割り切れるので、結果的に成功できるのです。

借金でお店をつくると、費用対効果や回収のことをものすごく考えなければいけません。結局、本来やりたいこととは違うところに労力を使いすぎてしまうのです。本当にフォーカスすべきところに頭を使えない。だから、失敗してしまうのです。

借金して始めるのであれば、きちっと儲ける計画を立てて、本当にビジネス的に成功しそうなお店にしないと無理です。「5年で回収するためには、こういう感じにして、じゃあ、席数はいくつがいいかな……」などと考えなければいけない。それでは結局なんのために仕事をしているのか、よくわからなくなってきます。そうではなく「楽しむため」にお店の内装から何から考えていくことが大切です。楽しむから結果的に成功するのです。

おかげさまで「投資したい」と言われることも多くあります。今なら、おそらくぼくがお金を使わなくても、他人のお金で店をオープンできるでしょう。

でも、他人のお金だとどうしても自分の好きなことはできません

「投資してもらう」というのは、いろいろな足かせがあるのです。投資家であれば、誰しも回収したいと思うでしょう。「回収しなくていい」「投資だけしたい」なんて話は信じられません。最初はそういう顔で近づいてくる人もいますが、うまくいき始めると途中で変わってしまう人がほとんどなのです。

【POINT】
借金は足かせになる

なぜ、2時間営業だけでうまくいくのか?
⼤⻄益央(おおにし・ますお)
「Tsurumen」店主。1976年、⼤阪市⽣まれ。1999年、近畿⼤学商経学部経営学科卒。2007年、地元⼤阪市鶴⾒区でラーメン店「鶴麺」をオープンし、2010年に2号店「らぁ麺Cliff」(現「Tsurumen」)をオープン。2店舗を⼤阪屈指の⼈気店に育てた後、2018年4⽉にボストンで「Tsurumen Davis」を開店。最低気温マイナス10℃以下にもなる極寒のボストンで、1時間待ちの⾏列を作る超⼈気店となる。「いまボストンでもっとも熱いレストラン」第1位を3ヵ⽉連続獲得。ボストンNo.1のメジャーな新聞「Boston Globe」の1⾯を飾るなど、メディアからの注⽬も⾼い。営業時間2時間のみや、オープンから1000⽇しか営業をしないなど、飲⾷店らしからぬ独⾃の“仕事幸福論”も注⽬を集め、「情熱⼤陸」〈2019年2⽉放送〉に出演。「Boston Magazine」誌「Best of Boston 2019」受賞。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)