2020年の最大のトピックである、新型コロナウイルス。第二波や第三波の到来が懸念される現在、世界経済への大きな打撃もいまだ収まってはいない。こうした経済的な打撃は、いまや個人の資産事情にも大きな影を落としている。そんな時代だからこそ、資産に関する新常識が必要となってくるのは必然といえよう。

そこで本連載では、これまで富裕層しか知り得なかった資産運用の知識に着目。3回にわたって、資産をめぐる新常識として、富裕層が行っている資産運用や投資との付き合い方を紹介してきた。

引き続き、富裕層の資産形成サービスを手掛ける「ウェルスパートナー」代表の世古口俊介氏をナビゲーターに、富裕層の資産運用のテクニックをお伝えしたい。

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なぜ富裕層は不動産投資を重視するのか

富裕層の資産運用マル秘テクニック#4
(画像=freeangle / pixta, ZUU online)

今回取り上げる不動産は、富裕層の投資対象としてかなりポピュラーな存在だ。保有資産が数億円以上の富裕層であれば、ほぼ不動産に投資している。では、なぜ富裕層は不動産に投資するのか。その答えを知るために、まずは「金融資産」と「実物資産」の違いから説明しよう。

「金融資産」とは株式や債券のようなもの、一方で不動産は「実物資産」の代表例だ。この二つはその資産性がかなり異なる。例えば取引コストについては、金融資産が極めて低いのに対して実物資産は高い。価格の透明性については、金融資産が高い一方で実物資産は低い。その他、流動性やボラティリティ(値動き)の激しさ、借入の可否、市場の歪みの有無、そして相続対策になるかなどの点においても大きな違いがある。それぞれの相違点をまとめたのが以下のマトリックスだ。

実物資産
出典:株式会社ウェルスパートナー作成

このような違いを把握した上で、富裕層にとって実物資産への投資が大きなメリットとなるのは、借入ができる点と相続対策になる点だ。ここでいう不動産とは海外不動産ではなく、国内不動産に関して話を進めていく。

不動産投資の前提となる条件とは

株式や債券といった金融資産への投資は、現金が基本である。一方で不動産投資は、銀行借入が前提だ。不動産投資は、他人資本(銀行借入)で投資し、他人支出(賃料収入)でその借入の返済を行い、最終的には全て自分の資産にしていくという投資方法だ。

富裕層が、不動産投資を行う理由の一つは、いい条件で銀行借入を行うことができるからだ。融資の審査を行うに当たって銀行が考えることは、貸した金が返ってくるかどうか。富裕層であれば取りっぱぐれることがほぼないので、いい金利条件で貸してくれるのだ。

今や金利は1〜2%の世界だが、借入期間が長いため利息はかなり大きな金額になる。例えば1億円を金利1%で35年間ローンを組んだ場合、総利息支払い金額は1800万円程度だ。金利が2%だと3600万円。この差を見ると、金利1%が投資結果に与える影響がいかに大きいかが分かる。「当社のお客様は富裕層の方が多いので、基本的に1%未満の金利で借入を行い国内の不動産に投資している」と世古口氏は語る。

投資対象の不動産の年利回りが5%で、借入金利が1%であれば、その差の4%がネットの投資利回りになる。この「ネット投資の利回りを高めるため、富裕層はより高い利回りの不動産や、より低い金利で貸してくれる銀行を探している」(世古口氏)のだ。

ただ、不正融資が問題となったスルガ銀行事件以来、銀行の融資姿勢は厳しくなっている。これまでは、投資対象の不動産を担保に入れることでフルローンを組むことができたが、現在は投資金額の20〜40%の頭金が必要になるケースが多いことを付け加えておく。

不利益な“大きい出費”にも不動産が不可欠

日本の相続税の最高税率は、55%と世界的に見ても高い。富裕層の場合、55%の相続税を払って相続人が資産承継しても、次の世代が承継するときに再び55%の相続税が課税されるため、基礎控除などの税制優遇を考慮しない単純計算では、三代目には一代目の資産のわずか20%(1×0.45×0.45=約0.2)しか残らないということになる。ひどい話だが、これが日本の税制なのだ。